第7話 パニック
世界中の食材が化け物に変化。
化け物を倒すと元の食材に戻る。
人口100億人が1日で10億人に。
冷蔵庫から化け物が溢れ出る。
船に乗って陸を去る?
□■□■
突如現れたゾンビによって文明が崩壊し、生き残った人類がサバイバルをするというシチュエーション、実はかなり好きなのだ。金に物を言わせて贅沢三昧していたやつが落ちぶれていくのを見るのが面白いように、突然命掛けの生活を強いられた人々は見ていて面白い。誰もが明日を迎えるために、今日を必死に生きるのだ。その姿には生気が宿るし、なにより飢えた人を見ながら食べるお菓子はとてもおいしい。ちょっと意地が悪いかな。しかし、仕方ないのだ。そういう性分。それにそういうのはあくまで創作で済ませている。実際に貧困層を見ながら食べているわけではない。さすがにオイラもそこまではしないのだ。
さて、今回紹介するメモだが、食べ物が化け物になって人類に襲い掛かるというテーマのものだ。なんと、食べ物と化け物で韻が踏めているではないか。大切だぞ、こういうリズムは。このテーマは広く見ればゾンビパニックと同じジャンルのようだ。襲い掛かってくるのがゾンビか食べ物かの違いである。しかし、倒した化け物は元の食べ物に戻ると書いてある。その点はゾンビと違う。それに、食べ物が敵になるというのはなかなか恐ろしい。災害時用に備蓄をしている人ほど、大変なことになってしまう。生き延びても、食べ物がないから化け物に戦いを挑むしかないのだ。ゾンビ相手なら逃げていられるだろうが、食べ物を食べなくては人は死ぬ。つまりいつかは戦わなくてはならない。動機付けとしては優秀だが、かなり過酷な世界になりそうだぞ。
そもそも、なんでこんなアイデアが出たのだろうか? 分からぬ。と思ったが、なにやら思い出してきた。ドラクエだ。ドラクエの魔物はゴールドが変化したものだという話から思い付いたアイデアなのだ。お金が魔物になるなんて金持ちからしたらたまったものではないだろうな。ゾンビパニック系は安全な場所で農業を始めれば楽勝だろう、という思考から食べ物を化け物にするアイデアに変わったのだ。難易度はゾンビの非ではないが、そもそもどうして食べ物が化け物に変わるのだ? 理由が付けられない。ゾンビなら、ウイルスとか薬品だとか色々思い付く。が、食べ物が化け物になる理由となると頭を悩ませざるおえない。この辺りはもっと考えておいてほしかったのだが、まぁ仕方ない。別に悪いアイデアではないのだ。他との差別化もできるし、これ以上付け加えたら逆に悪くなりそうなくらい完成されていると言っていい。素晴らしいアイデア。ではなぜメモに埋もれていたのか。それは簡単である。これ、長編向きだもん。
オイラは長編を書かない。いや、書けないのだ。なぜなら、既に書きたい長編小説がありすぎるためである。どれもこれも書いていたら、一生掛かっても完結させられなくなる。それはまずい。なので素晴らしいアイデアでも、短編にならないようなら切り捨てるのである。確かにこのアイデアは素晴らしかったが、長編にするならもっと良くなければならない。オイラが長編として書くのはどれも群を抜いて素晴らしいものばかり。アイデアだけで芥川賞を取れなければ、長編として書くことはしないのである。もちろん、冗談である。今時、くどいくらい注意書きをしていないとすぐに炎上させられてしまう。さっきの、飢えた人を見ながら食べるお菓子はおいしいという発言なんて炎上コースまっしぐらである。今からでも消しといたほうがいいかな? 不安になってきた。しかし、誰も彼もが炎上を恐れ、そして炎上を楽しむ今の世は小さなパニック状態にあると言ってもいいのではないか?
パニックにも種類があるらしく、オイラも全て知っているわけではない。しかし、なにかに異常に怯えたりするのはパニックであるということくらいは知っている。オイラも普段の言動とか色々考えたりはしている。そもそもオイラの思考なんてなんの制限も掛けずに世に出したら大変なことになるようなものばかりなのだ。世界はオイラの理性と知性と品性に感謝したほうがいい。オイラ倫理観はあんまり自信ないからな。なので炎上には恐れる。炎上なんてしたら超有名ラノベ作家になる道のりが閉ざされてしまうではないか。それは困るのだ。あんまり余計なことは言わないほうがいいかもしれない。しかし、エッセイとなるとついつい余計なことを言ってしまうのである。
多分、オイラ以外にも炎上を恐れる人はいる。芸能人、YouTuber、Vライバー、プロゲーマー、ストリーマー、その他各種インフルエンサー、大きな会社の社長、政治家だってそうだ。ちょっとしたことで燃やされてしまう。それが悪いとは言わないが。時代の変化というやつだろう。適応せねば。オイラがツイッターで政治に触れないのはそのためであったりもする。政治関係のツイートなんて火炎瓶みたいなもんだろう。オイラはあんまり政治が分からないし、言わないほうがいいのだ。先ほど、小さなパニックとこの状況を例えたが間違いではなさそうだ。色んな人が過度に炎上を恐れているのだ。例外もあるだろうが、全ての炎上が法に触れているわけではないだろう。しかし、一度炎上してしまえば同一名義でのネット活動は難しくなってしまう。厳しいものだ。いったいいつから世間は完璧主義になってしまったのだろう。オイラは嘆くことしかできない。もしかしたら、これもいつか奇特な人に見つかって燃やされてしまうのだろうか。このエッセイ、投稿して大丈夫か?
話を戻そう。メモの最後には、船に乗って陸を去る? とある。これは、生きた魚は食べ物かどうかということを問うていると思う。生きた魚も食べられないことはないが、食べ物かどうかと言われると即答できない。食べ物である前に生き物なのだ。難しい。生死が問題なら、死んだ魚はもれなく化け物になるというのか。これはわりとありそうだ。フグは意外と、捌かれなきゃ化け物にならないとかありそうだな。死んでいても捌いていないフグを食べ物と認識する人は少ないだろう。結局、主観なのだ。もしかしたら、食べ物が化け物になるというのは人間の妄想だったというオチにしてもいいかもしれない。嘘だろ、なんでいい感じのオチが降りてくるんだよ。つまり、貧富の格差がなくなり食べ物が有り余るほどある世界で、ある日全ての人間が食べ物が化け物に変わってしまったという妄想に取り憑かれるのだ。精神的なものなら、悪の科学者の怪電波とかを原因にすればいい。主人公だけは最後にそれに気づくというのはどうだろう。いやぁ、中編に……なったな。なるよこれは。ストーリーの骨組みができてしまっている。わざわざ長編で書く必要はない。とても惜しいな。なんだか、このエッセイの2回に1回はこういう感じになってしまっている気がする。しかし、これでいいのだ。多分、このエッセイを見た人がさらにアイデアを付け加え、より良い小説にして書いてくれるはずなのだから。
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