第2話 サバイバル

 無人島になにか1つだけ持っていくとしたらなにを持っていくか?


 よくある質問だが、皆さんはなんと答えるだろう? 現実的に考えたらナイフとかだろうか。しかし無人島といっても、気候だとかで生息している生き物なんかは変わってくるだろうし、それこそ太平洋のど真ん中とかは漂流物もなさそうだ。無人島に行ったことがないので、詳しくは分からないが。


 無人島といえば、こんなメモがあった。


 □■□■


 ホワイト


 フク


 チェック


 ボーダー


 山が小さな孤島のようになる。


 バケツとプラスチックの板。


 原因不明の大洪水。海面上昇。


 ボーダーがプラスチックの板とバケツを使い助けを求める。


 □■□■


 多分、ホワイト、フク、チェック、ボーダーは人物名だろうな。チェック、ボーダーは服の柄だろうか。だとするとフクは服か。ホワイトはなんだろう。オイラのことだから白衣かなんかじゃないかな。


 つまり白衣、服を着た人、チェック柄の服を着た人、ボーダー柄の服を着た人が登場人物なのではないか。なんだ、服を着た人って。今どき服を着ない人なんているのか。もしくはそういう世界観の可能性もあるな。


 しかし、主人公は誰なのだ。やはりホワイトだろうか。フクの可能性もある。チェックとボーダーは違う気がする。メモには誰が主人公でどういう人物であるとか一切書いてない。わけが分からない。後で読み返して分からなければメモじゃないだろう。もしかしてこれで分かると思っていたのか、過去のオイラは。


 まぁしかし、ストーリーのほうは触れられているのでそちらに焦点を当ててみよう。


 □■□■


 恐らく、洪水によって海面上昇、命からがら山の頂上に身を寄せ合った4人のサバイバルを書きたかったのだろう。どうやらショートショート向きではないようだ。


 ボーダーがプラスチックの板とバケツを使い助けを求めるとあるが、これは他の人を探しにいくということだろうか。プラスチックの板とバケツで海を進めるのかはさておき、いったいどこに助けを求めようというのだろう。探索したはいいが、我々以外の人類は絶滅していましたというオチはあまりに弱すぎる。そう考えると、生き残った人物がいるはずだ。その人物との邂逅、交流部分まで書くとなるとやはり中編向きかな。広げようによっては長編にもなるアイデアだ。だとしたらあんまり惜しくはないな。オイラは長編をいくつも抱えているので、これ以上増やす気にはなれない。


 長編にするとなると、洪水が起きた原因の解明まで書きたいな。しかしそれを書く前にどうしても直面する問題がある。それは食べ物と飲み物だ。


 □■□■


 洪水、海面上昇とあるので周りは当然海な訳だ。飲み水の確保は容易ではないはずだ。そもそも山の頂上が孤島のようにと書かれているが、その孤島はどれほどの大きさなのだろう? それによってかなり変わってくる。食べ物と飲み物の確保は、サバイバル系の見せ場の1つだ。オイラはこういうのはかなり好きだ。わりとうるさいぞ。


 まずは飲み物。人は水を飲まなければ3日で死ぬらしいな。あれは本当なのだろうか。クジラは自分の脂肪を水分に変えるという話を聞いたことがあるが、細い人間と太い人間では、太い人間のほうが長く生きてたりしないだろうか。まぁ、実験してみるわけにもいかないよな。しかし飲み水の確保は重要かつ大変。ろ過とか煮沸とかしなくてはいけないから、清潔な水を手に入れるには時間がかかる。蒸発させて水蒸気を集める方法もあるな。逆にそれ以外方法を知らないかもしれない。これはまずい。朝、目覚めたら無人島だったということもありえる。後でググっておかなくては。


 次に食べ物。こちらは自信がある。魚がいれば、それを捕まえるのだ。身に毒がある魚はなかなかいない。シガテラ毒魚とか、一部のふぐとか、そういうやつは避ければいいのだ。ナイフがあればうろこを取り、エラを外し、腹を切り、内臓を取り出し、頭を落とし、背骨に沿って切る。これを適当に薄く切れば魚の刺身だ。しかし、魚に付着する腸炎ビブリオというやつをやっつけるには、淡水が必要なのだ。つまり飲み水。それで刺身を洗って食べる。抵抗感がありそうだが、生きるためなのだ。それが無理なら植物でもいい。パッチテストというやつをやると、食えるかどうか分かるらしい。確か、肌に当てたり舌に当てたりして刺激がないようなら大丈夫だ、的なやつだったと思う。昔の知識なのでわりとあやふや。気になる人は調べてみるといい。


 なんでオイラが無人島に行く話になっているのだろう。不思議だ。


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 食べ物、飲み物とクリアしていっても、精神的なストレスが待っている。これは生物として仕方のないこと。4人もいればいざこざの1つでも起きそうだな。オイラはそういうの苦手なのに、どうやって書くつもりだったのだろう。あ、いい案を思い付いた。チェックとボーダーがいなくなればいいのだ。明らかにモブだし、探索に出て帰らぬ人となったとか、適当な理由で退場させていく。2人になり、心細くなったホワイトとフクは次第に親密な関係になり……。


 なんで恋愛モノになろうとしているのだ。前代未聞の大災害中に恋愛をおっぱじめるやつの精神を描写するつもりだったのか、オイラは。


 いつの間にか片方が女性ということになってしまっている。だとしたら女性はホワイトのほうだろうな。フクは男性っぽい。しかし、メモに記述がないのが気になるな。いっそ、全員ロボットにしてみるか。なんでロボットがサバイバルなんかするのだ。一気にショートショート風になってきた。


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 オイラのメモは基本、ショートショート向けのやつが多いのだが、なぜかこれは中・長編向け。色んな方向に膨らませることができる。強大な敵に立ち向かう、世界の秘密を解明する、誰かと恋に落ちる、全てを元に戻す、エトセトラエトセトラ。考えればキリがない。だからこそ、これは最後どういう展開になるのだろう? とワクワクされることができるのだ。サバイバル系はわりと他のジャンル、つまりファンタジーやSFなんかとも合わせやすいので、コツさえ掴んでしまえばストーリーの組み立ても難しくない。実はテンプレもあるのだ。なのに展開は自由度が高い。初心者にも書きやすいジャンルなのではないかと思う。もちろん、調べれば書くのに必要な知識は得られるので、これから小説を書いてみようと思っている人にはぜひとも薦めたいジャンルである。

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