原石リサイクルマート

ALT・オイラにソース・Aksya

第1話 悪魔

 タイトル:未定

 起:悪魔と悪魔が自分たちはどういった存在なのか話している。

 承:片方の悪魔が自分たちは元人間の可能性を示す。

 転:片方の悪魔が人間が人間に向けて「この悪魔!」と呼ぶことを引用して茶化す。

 結:悪魔は契約をすれば願いは叶えるが、人間は約束しても裏切ることがある。そう考えたら悪魔の方が親切であるという結論。


 集めた人間の魂は通貨として使われるが、納税されたりして最終的には魂を集める施設に集められる。その魂を働かせて宇宙を広げているのではという噂話。


 悪魔に「自分を悪魔にしてくれ」と好奇心で願った人間が記憶を失い悪魔になる。最初は悪魔は一人だった。


 人間の好奇心は悪魔より強い。


 悪魔は「人間が人間に向かって、この悪魔!と叫んでいるのを見たことがある。もしかしたら人間とは悪魔よりもよっぽど業の深い生き物なのかもしれない」


 業→カルマ、仏教用語。


 悪魔→同じような存在が多くの宗教にあるため差し支えはない?

 悪魔「我々悪魔は契約をすれば、三つ願いを叶えてやる。しかし人間は約束事をしても、必ず守るとは限らない。」


 オチが弱いかな。


 オチの案:「人間は我々を悪だと決めつけるが、本当の悪はどっちなのだろうな。」


 □■□■


 以上がメモの全文である。


 その5日後に、「悪魔の種類」と走り書きがしてある。これは別のメモなのか、同じメモなのか。


 なぜこれがボツになったのか、カクヨムに書き写してきて分からなくなった。起承転結までしっかり書かれている。このまま書いてしまえばいい感じになるのではないか。断っておくが普段のアイデアメモはだいたい単語である。ここまで構想を練ってあるメモは珍しい。


 恐らくだが、タイトルが決まってないのがいけないんじゃないかな。オイラという作家の特徴として、わりとタイトルに手間取るというのがある。スッと思い浮かぶときもあるが、そうでないときのほうが多い。多分、これもタイトルを考えてるうちに別のアイデアが思い浮かんで、そっちに取って代わられたってやつだろう。


 しかしそれだけが理由ではないはずだ。


 他にも理由は思い浮かぶ。


 まず、オイラは悪魔の知識がないのだ。そりゃあ星新一先生のショートショートは結構読み漁ったから、ショートショートに出てくる悪魔については詳しい。しかし実際の悪魔の知識はないのだ。


 そもそも悪魔とはなんなのだ。メモには仏教の文字が出てくるが、悪魔といえばキリスト教なのではないのか。名前は異なっていても、同じような存在はいるのだろうか。その辺も知識不足である。調べればいいのでは? と言われると返す言葉がない。調べようと思って、後回しにし、怠けるのは悪い癖である。


 □■□■


 そういえば、悪魔が魂を通貨として扱うやつは確か書いた。

 あれは自分でもわりとよくできたと思う。あれは気に入っている。


 しかし、このメモには集めた魂を宇宙の拡大に使用しているとの記述もある。いったいどんな思考をしていたら宇宙と結びつけられるのだ。死後も宇宙拡大のために休むことなく働かされことを想像したら、恐怖で体が震えてくる。オイラは怠ける作家なのだ。死後も怠けたいに決まっている。なんで死んでまで働かなくちゃあいけないのだ。これは死霊術とかと同じ、死者への冒涜なのではないのか。


 しかし発想は素晴らしい。魂と宇宙、この部分だけを切り抜いていじり回したら、なんとかなったかもしれない。しかしここまで書いて、やっぱりやめたと消すのもなんだか嫌なので、公開することとする。別に魂と宇宙じゃなくても、悪魔と宇宙でもいいのだ。宇宙の悪魔。宇宙人が想像する悪魔なんて、面白いだろうな。それこそ5日後のメモにあった、「悪魔の種類」じゃないか。


 □■□■


 悪魔よりも人間のほうがタチが悪いなんてのは、よく聞く話。悪魔が人間を出し抜く話と人間が悪魔を出し抜く話を集計したら、圧倒的に後者のほうが多いはず。確かな根拠はないが、悪魔という想像上の悪を頭脳で負かすのは面白いだろう。結局、面白い話を書こうとするのだから、つまり、そういうことになるだろう。人間ってのは正義を振りかざして悪を叩くのが好きみたいだからな。


 話が逸れた。悪魔よりタチの悪い人間の話だ。実際、そういう人間はたくさんいるんだろうな。悪魔は魂を奪うが、悪魔のような人間はストレスを与えてくる。そういう人は自分で気付いていないんだろうか。しかし迂闊なことを言って、「お前は悪魔よりタチの悪い人間だ」なんて言われてしまったら、オイラは自分で書いた文章にバカにされることになってしまう。自分を客観視せねば。


 幸い、オイラの周りにそういった、悪魔よりもタチの悪い人間はいない。人運に恵まれてると言うべきか。しかし、もしかしたらそのせいで、悪魔よりもタチの悪い人間を想像できず書けなかったのかもしれない。そう考えると悪魔よりもタチの悪い人間にも価値はあるということか。


 □■□■


 悪魔に、「オイラを悪魔にしてくれ」と頼んだらどうなるのだろう。メモには記憶を失い悪魔になるとの記述もある。こうも考えられないだろうか。


 なんらかの事故に遭い、頭部に強い衝撃を受ける。そのせいで記憶喪失。しかし超能力を授かる。それが宗教上の悪魔と似たような能力だった。


 いじり出すと形になりそうなのはどうしてだろう。完全に動き出すことはないだろうと思っていたメモなのになぁ。相手の願いをなんでも3つ叶える超能力とか出たら、まんま悪魔だろうな。本人は記憶喪失だから、周りから悪魔だと言われたら自分は悪魔だと思い込み……。しかしオチが思い浮かばない。最悪なくてもいいと思うが。


 □■□■


 オチと言えば最後のやつだ。

「人間は我々を悪だと決めつけるが、本当の悪はどっちなのだろうな。」


 これは本当に難しい。悪魔は悪いから悪魔なのだろうが、善悪を決めるのは人間だろうに。いや、宗教上は神が決めることになるのか。どっちにしろ、相手のことをよく知らずに一方的に悪だと決めつけているような気がする。そう思うのは悪魔の知識が足りないからか。


 不思議なもので、ショートショートにおいて悪魔はかなり扱いやすいと思うのに星新一先生はあんまり書いている気がしない。なにかしらポリシーとかあるのだろうか。星新一先生のショートショートはよく読むが、星新一先生についてはあまり知らないので深くは言えない。


 しかし、最後に言いたいことがあるとしたら、みんなもっと悪魔を出したショートショートを書いてもいいんじゃないのかなということだ。


 悪魔が願いを3つ叶えるが代わりに死後、魂を奪うと言う。人間はなんとしてもそれを出し抜く。これがテンプレだ。もちろんテンプレに沿わなくてもいいのだ。しかし悪魔という概念は非常に便利。もし、次アイデアに悩むことがあれば悪魔を思い出してほしい。このエッセイを読んで悪魔モノのショートショートを書きたいと思う人が出てきたなら、このエッセイを書いた意味はあったということだ。

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