第4話「追求」
「付いてきてくれるかしら?」とリサは尋ねた。フェティはそれを断る理由もなく、ただ一度頷いた。
「分かりました」
「アルスとマリンも来て」
「分かった」
「なんで……私も」
アルスは渋々といった表情で立ち上がり、リサの後に続く。
安全で安心できる空間から一歩外に出た時、フェティの背筋に悪寒が走る。同時に、表現できない音が何度も鳴り響き、5秒後――。
一本の道から光が飛び出してきた。
「逃げるわよ!!」
「了解っと!!」
「さっきも言ったけれど、動く光に接触すると呑み込まれて、現実世界に生まれてしまうわ。それが嫌なら全力で逃げるわよ!!」
「はい!!」
4人は迫りくる光に背を向けて、全力で走り続ける。
怖い空間で怖い状況にも関わらず、フェティには恐怖という感情が僅かにしか湧いていなかった。リサがいるから。そして、マリンとアルスがいるから――。
逃げ切っては新たな光に見つかり、逃げては新たな光が生まれてフェティ達を追いかける。不快で不気味な音が連続で途切れなく鳴り響いていた。
その音と光にしびれを切らしたか――アルスがむすっとした表情をし始めた。
「音が、鬱陶しいなぁ……小さくなってしまえばいいのに……」
アルスは立ち止まり光に右手を差し出す。すると右手が一瞬緑色に発光。
――――――。
「な、何!?」
次の瞬間。光が不気味な音を立てて、小型化した。動きも遅く、光も小さい。今まで通りの速度で走るフェティ達に追いつくのは、到底不可能な遅さになっていた。
「今のはアルスの《特徴》。動く光を小型化させて、動きを遅くさせるの」
「な、なるほど」
「あと少しだから急ぐわよ」
リサの言う通り、1分程走り続けた時、1つの扉が4人の前に現れた。
4人は扉を飛び越え、急いで閉めた。
「これで一安心ね」
「……そうですね。それよりも……ここは?」
中の空間はさっきの空間とはまた違う安心感に包まれていた。
無数の本棚に本があまりにも綺麗に置かれていた。
「ここがどういう場所かは私達も分かっていない。でも、私達はこういうエリアを探しているの」
「それはどうしてですか?」
リサは一度頷き、フェティに対して答えを述べた。
「《創造》はゆっくりとだけれど大きくなり続けている。何もしなければ、私達も何れ呑み込まれるわ。だから、この場所で永遠に暮らせる方法を見つけ出す。それが《創造》に恐怖する《虚体》の共通認識よ」
「他にも怪しい場所は見つかってるんだ。ただ、まだその奥に入れていないことが多い。だから、今はまだ、俺達は光から逃げ続けることしかできない」
蝋燭の火が激しく揺れて、空間を震えさせる。リサとマリンの言葉がどれだけ重要であるかを示すように――。
「理由じゃなくて悪いのだけれど、これからフェティも……探すのに協力して、くれないかしら?」
「もちろん、協力します――それ以外に道はなさそうですから」
「……!! ありがとう!! 1人でも協力してくれる人が多い方がいいもの!!」
リサは心底嬉しそうな面様で笑顔を浮かべ、フェティに対して右手を差し出した。フェティは誰にも分からない程度の微笑みを溢し、差し出された右手を握った。
「見つけましょう――私達の幸福のために」
これは、始まりにして終わりの出逢いと約束だった。
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