あっさりとした「別れ」
町の中を弥生と二人で歩く。思い出のハンバーガー屋さんはこの道を右に曲がってすぐだ。
店に入って注文する。弥生と僕は同じメニュー。昔からそうだ。
弥生と僕の関係はどんな言葉でも表せない。恋、なんてものではないし、愛でもない。親友でもないし、友達でもない。そう。弥生と僕は、「言葉では表すことのできない関係」。
そんな感じ。
ハンバーガーを食べて、僕と弥生は帰り道を歩く。
弥生は途中で口を開けると、
「漱石、あなたがいなくなるのは寂しい。」
と別れを惜しむような言葉を放った。
帰ってから。僕は弥生に演奏を頼んでいた。
「お願い!弥生の思い出の歌で、ぼくをあの世へ行かせて!お願い!」
弥生は
「いや!絶対に嫌!」
完全拒否状態だった。
それでもずっと僕が頼んでいると、ついに弥生は、「いいよ」といってくれた。
「でも、絶対に、また会いに来てね。」
そう弥生は言った。
僕は一つ考えがあって、あの世に行くことにした。だから大丈夫。絶対に戻ってくる。
「じゃあ、弾くよ。」
弥生が弾いたのは無題の曲。町の人々がうたっている歌だった。
だんだん僕の体が透けていく。
また会おう。弥生。それまでは、さようなら。
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