雪との「出会い」

精華side

まさか雪ともう一度、会えるなんて。私があの、「メロディー屋」へ行ったのは、雪との再会をあきらめるような気持ちで行った。なのに、あきらめようとしていたことが実現されようとしている。それがうれしくもあり、寂しくもあった。雪と会える。それはすごくうれしい。でも。雪と会ってしまったら。またもう一度、もう一度、そうなってしまう。それに、会ってしまえば、私はこの世にいる理由がない。だからあの世へ行かないといけない。それが寂しい。でも、あのお店は私の願いを実現してくれる。その事実に感謝だ。

そういえば、雪と初めて会った日もそうだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~精華による回想~~~~~~~~~~~~~~~~~

さ~っと風が吹く。風が吹くと、公園にいる人々の反応は様々だ。

「涼しい~」って喜ぶ子もいれば、「前髪の形が崩れる!」って必死に前髪を抑える子もいる。みんなを見ていると、うれしいけれど、なんだか寂しくなる時がある。いくら私が見ていても。みんなは、私を見ることができない。私はだから、みんなの「輪」の中には入れない。それがとても悲しかった。そんな時だった。いきなり私をじいっっと見つめている少年がいた。それが雪だった。雪は毎日公園に来ては、私を見つめてから帰る。ある時、私はついに気になって、

「あなたは私を見ることはできますか?」

と訊いた。私が視えてなければ、何を話しているかもわからないはずだ。きっと何か答えてくれる。そう思った時だった。

「俺は、君を見ることができます。」

と。雪はそう言った。それから、私たちは、会うたびに毎回他愛ない話をしては笑って。そんな時間を過ごしていた。ある日のことだ。いきなり雪が、

「しばらくここには来れない。」

そう、私に告げた。いきなりのこと過ぎて、私は全く頭が追い付かなかった。心では、わかっていた。でも頭が追い付かなかった。それくらい、私は雪に「依存」していたのかもしれない。前に雪は「持病がある」と言っていた。だからきっと手術でもするのだろう。でも雪は、「手術する」とは言わなかった。きっと私を思ってのことだろう。一度だけ聞いたことがある。精霊は、自分の宿るこの葉に自分のパワーを少し入れると、お守りができる、と。そのお守りは、持っている人を、病や災いから助けることができるほどの力がある、と。

だから私は、この大イチョウの、特徴的なハート形の葉に、自分の力を込めて、布で包んだ「お守り」を、雪に渡した。

その次の日だった。雷が私の大銀杏に落ち、木が倒れ、撤去されたのは。私は自分が死んでしまった瞬間でも、雪のことを忘れられなかった。ずっと、雪のことを考えていた。あの世へ行って、雪を忘れてしまうのが、雪に会えなくなってしまうのが、すごく嫌だった。

きっと、その思いが強かったからだろう。だから私は「亡霊」として、この世にさまよい続けているのだろう・・・・・・。

==================回想終了==================

今でもあのお守り、持っていてくれているかな?

私の作ったあのお守りを。


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