捜査の「参日目」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~三日目~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日は、朝顔 雪さんに会いに行こうと計画していたのだが、漱石、治、両名ともに、昨日夜遅くまで外にいたせいか、夏風邪をひいてしまった。そのため、今日は「休息日」とすることになった。せっかくの「休息日」なので、私は今日、夏用の服を買いに行こうと思い、階段を下りた。その時だ。たまたま今日は母にばったり会ってしまった。すると、母は意外なことに、
「どこに行くの?」
と訊いてきた。私は、
「今日は、服買いに行こうと思って。」
と答えた。母と会話したのはすっごく久しぶりな気がする。前話したときはいつだったのか覚えていない。それぐらい前だったのか、それとも、話題が今日のようにあまり「大したこと」ではなかったのか。
「私も一緒に行っていい?」
母がそう言った。その瞬間、私は、「これから地球が爆発するのでは?」という考えと、「宇宙がついになくなってしまうのか?」という考えで頭がいっぱいになった。
あれだけずっと外には一人で出かけていた母が。買い物はすべてオンラインで済ませていたあの、母が。休日はずっとひたすら寝ていた母が。一体どうしたんだ?体調でも悪いのかな?などと考えているうちに、母はすでに身支度を整えていた。早い・・・・・・・・・・。
さすが。さすが母。昔、私が生まれるずっと前には、警察官だった時期もあったらしい。一か月足らずで退職したらしいけど。そのせいか、ご飯を食べたり、服を着たりするのが早いのだ。
「じゃあ行こうか。」
母が言う。こんな母を見たのは、すごく久しぶりな気がする。少しはにかむような笑顔。
でも、前よりずっと、母がかわいらしく見えた。
ガコンッ!ドン!
私たちは車に乗り込んでショッピングモールへ向かった。
私はそこで、母に洋服を選んでもらった。
白がベースになった、服のふちが淡いピンクで縁取られたシンプルだけれどかわいいブラウス。青の線がチェックになって入っている、貝殻をモチーフにしたスカート。素材も涼しくてちょうどいいセンス。さすが母。
そのあと、買い終わってからも本屋さんで立ち読みしたり、アイスを食べたり。一通り満喫してから、私と母は帰路に就いた。
車に乗って帰る途中。相変わらず母の運転は素晴らしいほど酔いやすい。でも、その時、母が言った。
「私さ。父さんが死んでから臆病になってた。弥生を見ると父さんを思い出してしまうから、わざと弥生からも距離をとって。ずっと一人で引きこもってさ。でも。今日、弥生と出かけて、なんだか少しわかった気がする。何が分かったのかは言葉にしにくいけど。なんだか、何かをつかんだ感覚がする。今日、一緒に出掛けられてよかった。すごく楽しい。いや、すごく「楽しかった」。」
母はそう言った。もしかしたら私は、母を勘違いしていたのではないか。母は私のことが嫌いなんだと思い込んでいた。でも違ったんだ。もしかしたら、私と母の間には、誤解があるのかもしれない。そう思った。
いつの間にか日が沈み始めた夕焼け空は、まるで、今の私の心を見透かしているかのような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます