仕事の「準備」
それから少し時は経ち。もう午後だ。早速最後の「看板づくり」に取り掛かる。「メロディー屋」と言われると、少しキュートな印象だろう、と漱石と話し合い、斬新さを取り入れるために、黒字の明朝体(太字)で、「めろでぃーや」と書くことにした。
「めろでぃーや」の「め」は、できるだけ丸みを帯びていつつ、字がつぶれないように。
「めろでぃーや」の「ろ」は、少しポップな雰囲気を漂わせつつ、明朝体の特徴を生かす。
「めろでぃーや」の「で」は、明朝体太字のプライドを見せつける、といった感じに。
「めろでぃーや」の「ぃ」は、____________。
・・・・・・。
全部の字にそれぞれのこだわりを持って、しっかり、ずっしり思いを込めた看板は、想像以上、いや、世界で一番と言えるほど、きれいな出来栄えに完成した。まさかここまできれいに作れるなんて思っていなかった。ゆでたまごを作れば殻が白身に毎回突き刺さり、食べるとじょりじょりとした食感に。のこぎりで木を切ろうとすると、自分の手が切れ、血まみれに。挙句の果て、洗い物で皿を洗うと、必ず、すべての皿が割れ、キッチンは出禁に。そんな不器用の極み、不器用の象徴ともいえる私がこんなにうまくできたなんて、千万分の一以上に低い低確率のはずだ。「今日は運がついているのかもしれない・・・・・・。」そんなことを思った。もしかしたら漱石の能力かもしれない。漱石といると、身体から自然と力が出てくる。簡単に説明するとするならば、疲れが一気に出てくると同時に、抜けた分の量の力が体に戻ってくる、という感覚に近い。
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