敵意むき出しの「親戚」

「弥生様、ようこそおいでくださいました。」

親戚一同が気味が悪くなるほど、敬語を使って話し出す。

「弥生様、まず茶を飲みながらのんびりしましょう。」

叔父が話す。「のんびり」_______。なんだか嫌な予感がする。

「こちらが我が家特製のカモミールティーでございます。横のミルクピッチャーに入っているはちみつを入れてお飲みください。」

叔母さんが茶を持ってきた。でも正直信用はない。これまで靴に画びょうが入っていたり、食事に毒?みたいなものを盛られたこともあった。(私は毒に免疫がついてしまったので、ジュースのように飲んでも問題はない。)そんなこんなで食べ物には気を付けたほうがいいらしい。どうやら父いわく、「お前は無自覚に反感を買いやすい性格をしているから、人を疑いつつ信じろ。」ということらしい。でもだからと言って飲まないのもかわいそう・・・・・・。

よし!飲もう。毒が入っていたところで私は大丈夫だ。

「では、いただきます。」

すっとカモミールティーを口に入れる。はじめは少しさわやかな味わい。でも毒がだんだんつよくなる。多分この味だったら「トリカブト」とか、その辺の毒が致死量の二倍か三倍ぐらいは入っている。明らかに私を殺そうとしていることが分かる。

「そろそろ権利を渡してください。」

私がほとんど命令口調で権利をわたしてもらおうとする。そうなれば親戚も黙ってはいられない。

「弥生様の誕生日は三月ではないのですか?なんにせよ、「やよい」は「March」、三月を指しますので。確か権利をわたすのは、十七歳になってからです。ですからまだお渡しすることはできないと思いますが・・・・・・。」

わかっているのか、いないのか。それともこちらにけんかを売っているのか。一体どんな意図があって言っているのかはわからない。しかし、私の体が、本能が「これを信用するな、権利だけもらったらすぐ帰れ!」と言っている。

「私の名前は「弥生」ですが、誕生日は四月です。ですから私は十七歳です。まだ信用されていない方もいるようなので、生徒手帳を持ってきました。確認して良いですよ。ただし一切手を触れないでください。触れた場合、あなた方をこの「あやかし一族」から排除せねばなりません。」


私はわざといつもの五倍くらい低い声で、一人一人の目を順番に、ゆっっっくり見ながらそう話す。そんな私の態度に、さすがに怖くなったのか、叔父が耐えられなくなったように、

「権利を渡すよ。君たち「本家」の権力の三分の一、そして今の君たち一家の家の権利もね。ただ、もうここには来ないでくれ。君とは正直会いたくない。顔も見たくない。声も聴きたくない。だから絶対にこの家の敷居を跨がないでいただきたい。」

「世界で一番会いたくない人類ランキング」ぶっちぎりのベスト一位の叔父に言われた言葉に、妙にイラつきが隠せない。

「世界で一番かかわりたくない人たちの家の敷居を跨ぐなどこっちから願い下げだわぁ!二度と本家には近寄らないでほしいものだわ!」

こんな口調。こんなイラつき。まるで私ではない別人のようだ。いつもの私ならポーカーフェイス。腹黒気味。こんな落ち着きがなくなるのは初めてだ。

「権利を返していただいてありがとう。そう言えば、あなたたちの顔シワだらけよ。You should look in the mirror.それでは。」

皮肉を込めた横文字入りのあいさつの後、私は権利とともに帰宅した__________。

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