漱石の「警戒」

漱石の説明を聞いていくつか不思議に思ったことがある。なんで私が悪夢を「昔から」見ていたことを知っているのか。なんで妖家のなかでも一番と言っていいほどの秘密を(しかも膨大な知識量を)まったくの他人である漱石が知っているのかということだ。この情報は外に漏れないように、妖家専用情報管理センター(通称・情理)が管理しているはずだ。うちの情理は世界のトップレベルの人材が集まり、日々自分の気になる情報の管理方法を試している場所である。つまり、情報管理のトップだ。そのため、この情理が五百年前に設立された後から、一回たりとも情報が漏れたことはない。ましてや情報を盗もうとするやからもいなかったと資料には書かれていたし、近所でも現に、「あやかしさん家の情報管理はすごいね~~。」ともっぱら噂されている腕前である。そんな厳重管理された情報を、ましてや犬である、あの漱石が知ることなんてできるわけがない。それなのになぜ。なんでこんなに漱石はしているのだ。こんな情報を。

「なんで漱石は、私が、昔から悪夢にうなされていたことを知っているの?私は誰にも言ったことがないはずなのに。」

私は訊いた。漱石のこれまでの謎の理由をすべて知りたかった。たとえ漱石が話すのが嫌だったとしても。私は漱石について知りたかった。

「それは僕が、予知能力があるからさ。昔、弥生が小さいころに僕は君とあったことがあるんだ。その時に君が悪夢にうなされる予知を見たんだよ。でも予知はこの世でたった一人にしか話せない。運命を変えてはいけないからだ。だから僕は知っている。」

まるで、これ以上は踏み込んでくるなと警告しているような声で、漱石が話した。こんなに冷たい反応をする漱石を私は初めて見た。でも_____。

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