幼いころの「記憶」

それにしても昔の思い出と言えば、小さいころに階段で足を滑らせて、記憶喪失になってしまっているんだよな。一部。一体私はどんなことをしていたのだろうか。そしてなぜこの能力があれば思い出が思い出せるんだろう。そんな疑問を抱え毎日我が家の資料を読み漁った。資料なら、確実に何らかの記録が残っているはずだ。我が家は代々身分の高い家だったそうだ。だからなのか、歴史のある文書が多いのだ。父も昔から、何か困ったことがあったら家の資料を読めと言っていた。あった。能力に関する資料だ。資料によると、どうやらこの能力は先代の当主の能力者が死んでしまったとき、代替わりをする次の当主が能力を持つことができるそうだ。しかし、当主であった父はその能力を持っていなかったはずだ。能力を持つ者は皆髪の毛の色が白くなる、と資料には綴られている。現に私も髪の毛が白く変化している。しかし父は漆黒、と言ってもいいほど黒い髪だった。そう考えると矛盾していることがある。それは、この能力を持つ者は直系の家系、持たぬものは親族関係の者たちだということだ。当主は直系の家系の人間しかなれないという規則なのだから、父に能力がなく、私に能力があるというのはおかしいのだ。でもなぜだかあまり聞かないほうがよさそうに思えてずっと謎のままだ。

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