第52話 合体、太極ドラゴンシフター!

 「……は~♪ お義兄さんの膝枕と耳かきは健康に良いね♪」

 「ぐぬぬっ! おのれジンリン、何と言う屈辱!」


 寝転がり、立磨の膝の上に頭を載せて耳かきをされるジンリン。


 空間移動で事務所に来たジンリン、立磨はジンリンに対してこれまでのお礼とお詫びで膝枕と耳かきの奉仕活動をしていた。


 ジンリーは台所で、中華まんじゅうをふかしつつ悔しがっていた。


 「いや、お前らなあ? リンちゃんは動かないでくれよ?」

 「お義兄さんの臭いで疲労が消えて、細胞が活性化して行くよ♪」

 「いや、そういうのは猫の腹の臭いとかで吸ってなよ?」

 「お義兄さ~ん♪ もっと甘やかして接待して~♪ 頭撫でて~♪」

 「よしよし、リンちゃんはいつも開発とかありがとう♪」


 ジンリンを甘やかす立磨。


 「ご主人様、何卒っ! 何卒、この後で私めには妹以上に可愛がってください!」


 ぐぬぬと、血涙を流しながら立磨に直訴するジンリー。


 「……ああ、ジンリーも俺にとっては大事だから血涙出すなっ!」

 「ふっふっふ~♪ だが今は私がお義兄さんを占有しているのだ~♪」

 

 愉悦を感じて調子に乗るジンリン。


 それだけの仕事は普段からバックアップでして貰っているので、立磨としては文句は言えなかった。


 「いや、リンちゃんも良い子だからジンリーを煽らないの!」

 「きゃっきゃ♪ は~い、煽らずに甘えま~す♪」

 「ぐぬぬ~っ! こ、これが嫉妬っ!」


 ジンリンが甘え、ジンリーが嫉妬を燃やしと立磨は気が休まらなかった。


 ジンリンが満足して甘え終えたのか、立磨からするりと離れる。


 次に選手交代と言わんばかりにジンリーが、瞬間移動の如く立磨に近づくと抱き着きから犬のようにすり付き回しとじゃれつき出す。


 「いや、ジンリー? 普段のクールな感じが消えてるんだけど?」

 「キャンキャンワンワン♪ ジンリ~♪ たっくん、だ~いすき♪」


 誉や恥を浜どころか彼方に捨て、精神を幼児化させて立磨に甘えて来るジンリー。


 「お、おう? よしよし、良い子良い子♪」

 「くんく~ん、ジンリ~、良い子~♪ たっくん、しゅき~~っ♪」

 「……お姉ちゃん、恐ろしい子っ!」

 「うんうん、俺も大好きだよジンリー♪」

 「く~ん、ジンリ~も~♪」


 犬が飼い主にじゃれつきのしかかるように、立磨にのしかかって来るジンリー。


 のしかかられた立磨もジンリーから漂う甘い香りに、心がゆるむ。


 立磨に甘やかされる姉の醜態を見て、自分を棚上げしてドン引きするジンリン。


 珍獣を観察するかのように中華まんを食いながら、姉と義兄のじゃれ合いを見る。


 小一時間後、ジンリーも立磨から何かの成分を吸い終えたのか一旦落ち着く。


 「ああ、幸せなひと時でした♪ 続きはまた後でお願いいたします、キリゥ!」

 「いや、キリッじゃねえよ!」

 「これは、普段の私とのギャップ萌えを楽しんでいただこうと言う趣向です」

 「いや、真面目な顔で何を言うんですかあなたは?」

 「私、ご主人様への愛と忠誠は常に真面目ですので!」

 「ブレないメンタルが凄い、やはりジンリーには勝てねえな」

 「私はもう、遥か古代からご主人様のアンダーコントロールなので勝ってます♪」

 「その時代の記憶は俺の方にないんだがちょっと、設定が盛り過ぎじゃねえ?」

 「ビッグバン以前から、私達は出会って結ばれを繰り返しているのですよ♪」

 「ビッグバン、宇宙のリセット機能果たしてねえな!」


 立磨は、宇宙規模のボケをかましてくるジンリーにツッコみ切れず勝てなかった。


 「まあ、二人の夫婦漫才はその辺で新しいバックルは後日渡すから」


 ジンリンは、立磨達への用件は今日は良いかと帰って行った。


 「では、改めてラブラブタイムと言う事でお願いいたします」

 「いや、真面目な表情で言う台詞じゃねえだろ?」

 「ラブラブタイムは真面目な事なのです、大事な事なので」

 「改めて聞くとこっぱずかしいわ!」

 「恥じらうお姿も萌えますが、まずはハグからでお願いいたします」

 「いや、さっきのじゃれ合いは何だったの?」

 「あれはいわば食前酒です、フルコースでお願いいたします」

 「いや、何のフルコースだよまったく」

 「何だかんだ言いつつも、私にデレを下さるのが素敵です♪」


 恥ずかしがりつつも、ジンリーと抱き合う立磨であった。


 「ああ、ご主人様の胸の鼓動♪ 愛する人の全てが尊い、ときめきます♪」

 「何かジンリーから、ほのかに甘い香りがするんだけど?」

 「中華まんじゅうに使ったバニラエッセンスですね♪」

 「マジで甘い香りだったよ!」


 立磨とジンリーは夫婦漫才をしつつ、その日はいつも以上に仲良く過ごした。


 後日、立磨達は新しいバックルのテストの為に空間移動で仙郷へと訪れた。


 「周りがゴロゴロと石と砂、採石場みたいな所だな?」

 「似たような場所は、何処にでもあると言いますからね」

 「はいはい、私もいるからね二人とも?」


 すぐ二人の世界に入ろうとする立磨達の前に、白衣に工事用ヘルメットと言う姿のジンリンが声をかけながらやってきた。


 「おう、そうだったリンちゃんは宜しく」

 「では早速、新たなダブルドラゴンシフターに変身をいたしましょう♪」

 「お姉ちゃんはブレないなあ、二人の新しいバックルだよ♪」


 二人に新たな変身のバックルを渡すジンリン。


 「左を向いた黒い龍が、スロットの空いた半円の台座に絡みついている?」

 「私は右向きの白い龍で同様ですね?」

 「二人が合体すると、このバックルも合体する仕組みだよ♪」


 開発したジンリンが、ニヤリと笑いながら自慢げに語る。


 「なるほど、宝珠は台座をスライドでフォームチェンジか」

 「合体すると宝珠の、スロットが丸いダイヤルになるんですね♪」


 立磨とジンリーは新しいバックルを受け取り、弄って見ながら機能を確認する。


 「まあ、そう言うわけで後は二人で実際に試して見てよ♪」


 ジンリンが続きは実践でと言うので、立磨達は頷いた。


 「行くぜジンリー、新しいドラゴンシフトだ!」

 「ええ、私達の新たな力を見せてやりましょう!」


 立磨とジンリーが、新たなファンロンバックルを腰に当て宝珠をセット。


 二人の頭上に暗雲が立ち込み、銅鑼の音と共に二頭の金龍が舞い降りるとそれぞれが立磨とジンリーに巻き付いて二人の全身を守る鎧と化した。


 「うん、今度の変身後は中華武将風だぜ♪」


 ドラゴンシフターの変身後は、当人が言うように中華武将風。


 何処からかおめでたい感じの中華楽器の演奏が流れる。


 金龍の頭の兜と言ったフォルムの、フルフェイスのヒーローマスク。


 金鱗で覆われたマッシヴな胴丸や腰鎧。


 手足の具足は甲や爪先が龍の頭、馬超をイメージした武将風な姿であった。


 「こちらも同じく甲冑状と、装甲が強化されてますね?」


 ドラゴンシフター二号も、同様に重装甲な外骨格を全身に纏い構える。


 「そして、二人が陰と陽の宝珠をスロットに同時にセットすで合体だよ♪」


 ジンリンがバックルの機能について、楽しそうにドラゴンシフター達に語る。


 「行くぜ、もう暴走はしない! 太極シフトだ!」

 「いいえ、ここから二人で暴走です♪」


 ドラゴンシフター達が両隣に並び、それぞれ陰と陽の宝珠をバックルにセット!


 同時にバックルが二人から外れ一つになり、回転と共に二人を超高速で吸い込む!


 宙に浮かんだバックルから、一人の戦士が閃光と共に飛び出した!


 「これが、俺達の合体した姿か?」

 「この一体感、素晴らしいです♪」

 「俺が右半身で?」

 「私が左半身、二人で一人のドラゴンシフターです♪」


 戦士が着地して呟く中、銅鑼の音が響く。


 二人が合体した最終フォーム、太極たいきょくドラゴンシフターの誕生であった。


 右半身が黒で左半身が白、頭に金龍の兜を被った白黒の仮面の戦士。


 黒の陰側は、金龍の頭を模した肩アーマーと籠手を装備。


 白の陽側は、肩と腰に天使の翼のような部分鎧が付いていた。


 ボディ全体は鱗鎧を着た武将から、鱗模様のスキンタイトな全身スーツに変化。


 合体前は武将、合致後は格闘士と言う印象だ。


 「合体すると、意識の中では俺達は変身前の姿だなジンリー?」

 「ええ、二人で乗り物に乗っている感じですね♪」


 太極ドラゴンシフターの中で語りあう、立磨とジンリーの意識。


 「一人だけど二人とも、それじゃあテストしてみようか?」


 ジンリンが太極ドラゴンシフターに尋ねた時、ドカンと岩山が爆ぜた!


 「危ないっ!」


 太極ドラゴンシフターがジンリンを抱きかかえて飛び退く。


 「え? ちょっとどう言う事っ!」

 「敵襲だよ!」


 取り敢えずジンリンを、安全な場所まで運んだ太極ドラゴンシフター。


 振り返れば、ライフルで武装した随伴歩兵達を連れて黒い戦車がやって来た。


 戦車の屋根の入り口が開き、ドラゴンシフター達にとって嫌な人物が姿を現した。


 「がっはっは、見たか蛇共♪ 覚悟するのであ~る♪」


 カイゼル髭の軍人風の怪人。クライゾーンの幹部のテツベンダーだ。


 「おいおい、馬鹿が戦車でやって来たな」

 「藪を突きに来るとは野暮ですね」

 「それじゃあ二人共、まずは生身戦でのデータをお願い!」


 ジンリンは空間転移で去って行った。


 「さあ行け我が兵達よ! まずは一斉射撃なのである」


 テツベンダーが歩兵達をけしかける、歩兵達が横一列に並び一斉に射撃。


 テツベンダーも戦車の中に入り主砲を発射して来た。


 「うっし、まずは俺が受けるぜ!」


 太極ドラゴンシフターが砲弾や銃撃の嵐を、黒い陰側の部分を前に出して受ける。


 ドラゴンシフターは、敵の猛攻をブラックホールの如く全て吸い込んだ。


 「うえっ、気持ち悪い!」

 「何っ? 我らの魔力が吸収されたのであるっ!」

 

 戦車の中で驚くテツベンダー。


 「大丈夫です、すぐに浄化されますので♪ 次はこちらからお返しです!」


 今度はドラゴンシフター側が、白い陽の部分を前に出せば肩と腰の翼型アーマーが開き金色の光の羽が豪雨の如く射出される!


 光の羽の豪雨は、戦車も含む全ての敵を襲い爆散させた。


 ド派手に上がる爆炎から、戦車を鎧として纏ったテツベンダーが現れる。


 「……くっくく♪ 雑魚共は倒せても、我輩は簡単にはやられぬのであ~る♪」


 虚空から鉄鞭を二本取り出し両手に装備するテツベンダー。


 「敵もやりますね」

 「まあ、ダテに幹部張ってないんだろう? お互いジャブってわけだ」

 「双方テストプレイが決戦になったkん時ですね」

 「ああ、勝って次へ進むぜ♪」


 太極ドラゴンシフターも正面を向き、拳を構える。


 テツベンダーとドラゴンシフターの因縁に決着がつく時が迫っていた。

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