第49話 龍人拳法、秘伝の決め技っ!
「ジンリー、老師の課題頑張ろう!」
「はい、打倒クソジジイですね♪」
「いや、敬老精神とかどこ行ったっ!」
「うふふ、あのジジイよりも私にとって尊いのはご主人様ですから♪」
「
「私にとって、敬う天も愛する人は隣にいるあなたです♪」
「ジンリーのそういう、何処でも性格のブレない所は尊敬するよ」
立磨とジンリーは、晴天の中で昼間から岩山を登っていた。
二人共、黄色の拳法着と言う姿で互いの手を鎖で繋がれた状態。
息を合わせて、二人三脚ならぬ二人登山。
ジンリーと立磨は、なぜこんな事をしているのか?
しばし時を遡る。
ジンチャオが変身した龍王シフターに、稽古で負けた二人。
「さて、二人共? 自分がまだまだだと、わかったじゃろう?」
石畳の練兵場でジンチャオが立磨達に尋ねる。
「ぐぬぬ~っ! ですが、心は負けてませんよ!」
「ジンリーと一緒に強くなります、俺達に稽古をお願いします老師!」
「本当に、立磨君は良い婿じゃな♪ ジンリーはわしの悪い所ばかり似て困る」
「ジンリー、ここは素直に教えを受けよう?」
「む~っ! ご主人様がそう言うなら従います」
「うんうん、ジンリーは良い子♪」
「は~い♪ ジンリー、良い子になる~♪」
「いや、お主もわしと立磨君とで態度やキャラクターが変わり過ぎじゃろっ!」
孫娘の突然のキャラ崩壊にツッコむジンチャオ。
「何ですか、愛しい推しとそれ以外の対応は別じゃないですかお祖父様?」
「お祖父ちゃんショック! 立磨君、孫娘がわしをいじめるんじゃけど!」
「はいはい、二人とも喧嘩しない!」
嫁と義理の祖父の喧嘩を止める立磨。
「まあ、そんな身内でのコントはおいといてじゃな」
「お爺さんとしては、俺達に伝える物があるんですよね?」
「流石じゃのう♪ 立磨君には、立心からの遺産を受け継いで欲しいんじゃよ」
「何かの拳法ですよね、今更妙な拳法習っても微妙なのですが?」
「わしと立心が編み出した、
「ジンリー? 俺達で、先人達の技を継承して行こう?」
「はい♪ 奥義までマスターして、子供達に伝えて聞きましょう♪」
「本当にわしの孫娘、ちょっと恐いわ~っ!」
実の孫娘のジンリーの態度に、やや引き気味のジンチャオ。
「まず、お主らドラゴンシフターのコンセプトがわしと立心で編み出した龍人拳法なんじゃがそこらへんは理解してくれとるかの?」
「昔聞かされたお祖父様の思い出はともかく、理解してます」
「人と龍が一体となって共に戦うてのは、これまでの事から納得です」
「うむ、立磨君はありがとう♪」
「ジンリー、お爺さんに冷たくない?」
「私は常に平常運行です、キリッ!」
ジンリーは立磨以外には対応がドライだった。
「まあ、ともかく人が龍の、龍が人のと互いの特性を活かしす技、それが
「コンセプトの素晴らしさは、わかりました」
「お主ら、本当に大丈夫かの?」
ジンリーに対して不安になるジンチャオ。
「俺達二人なら大丈夫です♪」
「そうじゃのう、立磨君が孫娘を引っ張てくれるなら何とかなるかの?」
「ご主人様の為なら、やって見せますよ」
「立磨君? 本当に孫娘の手綱は頼むぞ?」
ジンチャオは不安が消えなかったが、立磨達に修行を課した。
「で、ここが修行の場所ですか?」
「私とご主人様なら、どんな困難も越えられます♪」
「ああ、頑張ろう♪」
「うんうん、夫婦仲は満点じゃな♪ 本当にそこだけは良き事じゃ♪」
休みの日、立磨とジンリーはジンチャオに呼び出されて中国の山奥にある自然が豊かすぎる仙郷に来ていた。
良く晴れた空の下、三人の目の前にあるのは茶色い岩山。
「まずは、お主らには鎖で互いを繋いでもらう」
立磨達と同じ拳法着姿のジンチャオが、二人に手鎖を際し出す。
「命綱の代わりですね」
「織姫と彦星のように離されるよりはマシです」
「龍人拳法は、二人の繋がりが大事じゃからな離す意味がない」
ジンチャオの言葉に頷き、立磨とジンリーは互いの手を鎖で繋ぐ。
「その鎖は、お主らの龍としての力を抑制する宝貝じゃ頂上で待っとるぞ」
そう言うと、ジンチャオだけ龍に変じて空へと舞い上がった。
「おっし、頑張ろうぜジンリー♪」
「愛する人と鎖で繋がれる、滾りますね♪」
「うん、平常運転だな♪ 素足で行こう」
立磨とジンリーは靴を脱ぎ素足になって、岩山に近づき手を掛けた。
時は戻り、半ば位まで登った二人。
「……く、山に気を吸われる感じがします!」
「ジンリー、山を食えって事じゃね?」
手足を龍の物に変えて、気を込めた爪を楔代わりに固い山肌に打ち込んで山に張り付きながら登る二人。
二人は、ある程度登った所から山に自分達の気を吸われる感覚に襲われていた。
「五行山に閉じ込めらえた斉天大聖様の気分です」
「あの鉄丸と銅汁を食わされたって話、山のパワーを食ってたんじゃね?」
「不味そうですいやなのですが、大地の龍らしく齧っていただきましょう」
「ああ、登山で爪を山を食って牙を鍛えるぜ!」
立磨達は歯を龍の牙に変えて、山肌を噛み喰らう。
「不味いですね、ですが気を取り返した感じはします」
「おっし、攻略法は掴んだ♪」
「はい、クリアして帰りましょう♪」
爪を牙を山肌に突き立て、大地を喰らい山の気を食って取り込みながら二人は山を登り切った。
「はあ、やったなジンリー♪」
「はい、達成感がひとしおです♪」
山頂に着いた所で、二人を繋いでいた鎖が砕け散る。
辿り着いた山頂は、広く開けていた。
「二人共、良くぞ乗り越えた♪」
ジンチャオが二人を出迎える。
「ご主様の龍の力の使い方の発想力には驚きました」
「いや、俺も自分でもよく山を食おうとか思ったよ?」
「それが人の力の一つ、発想力じゃよ♪」
「で、次があるんですよね老師?」
「組手ですか? やりますよ!」
山登り以外にも特訓メニューがあると感じた立磨が尋ねる。
ジンリーは今度こそ組手で勝つと気合いを入れる。
「勿論じゃが、その前にお主ら溶岩とか山を飲み食いして鱗とか強化せんか?」
ジンチャオが二人に尋ねて来る。
「やっぱり、山のパワーを食って身体強化するのもメニューの内か」
「山は骨煎餅みたいな物ですか?」
「うむ、わしら大地の龍に溶岩はプロテインで鉱物はサプリメントじゃ♪」
ジンチャオが山を修行場所に選んだ理由を語る。
「龍らしく自然の力を己に取り込めと言う事ですか、わかりました」
ジンリーが嫌そうな顔をしつつも、ジンチャオの言葉に納得する。
「マジで火山を風呂代わりにする日が来るとはな」
「西洋のドラゴンが火山を根城にしたりするのも、山の力を食う為じゃよ」
「今更ですけれど、龍ってべらぼうな生き物っすね」
「ご主人様~♪ 早く二人で、マグマを浴びて飲みましょう♪」
立磨は改めて龍と言う生き物の生態に驚きつつ、ジンリーの誘いについて行った。
立磨達は全身を龍に変えて火口に入り、山のマグマを飲んだりして腹を満たす。
火口を潜って行きマグマを体に浴びて吸収する二匹の龍。
登山で吸われた以上のエネルギーを溜めてから、山頂に戻って来た二人。
人の姿となって、改めてジンチャオの次の修行を受ける事になった。
「二人共、体は整ったようじゃから次は技じゃ! 変身せい!」
ジンチャオが立磨達にバックルを投げて渡す、受け取る二人。
二人がドラゴンシフターに変身すると、ジンチャオも龍王シフターに変身する。
「さあ、この間は負けましたが私のマグマが迸りますよ!」
「いや、根に持ち過ぎだろっ!」
二号にツッコむドラゴンシフター。
「お前のそう言う、わしと同じで元気になったら調子に乗る所がいかんのじゃ!」
孫娘に過去の自分を重ねてツッコムむ龍王シフター。
「ふふふ、マウントを取っていられるのも今の内です♪」
「そういや俺ら、金じゃなくてオレンジ色になってね?」
何かこれで勝てるみたいな気分な二号、ドラゴンシフターは自分達の変身後のカラーが金ではなくオレンジ色に変わっている事に驚いていた。
「マグマと愛のパワーですよ♪ さあ、魂燃やして行きましょう♪」
全身から炎を噴き出すドラゴンシフター二号、彼女のテンションは上がっていた。
「ふん! 愚かな孫娘よ、貴様の状態はエナドリを飲んでハイになっているのと変わらん事を教えてくれるわっ!」
「チェリャ~~~ッ!」
「キェ~~ッ!」
ドラゴンシフターをそっちのけで、ぶつかり合を始める二号と龍王シフター。
「……たっく、あの二人はいい加減にしろっ!」
ドラゴンシフターの怒りが頂点に達し、全身から八頭の巨大な炎の龍が現れる。
「えっ!」
「何じゃとっ!」
ドラゴンシフターの気の変化を察知した二号と龍王シフターが動きを止める。
「
ドラゴンシフターが出した八頭の炎の龍は拳に集い、巨大な炎の拳を形成する。
ドラゴンシフターは、その巨大な拳を相方と義理の祖父へと容赦なく叩き込んだ!
「ぎゃ~~っ!」
「私まで~っ!」
「どっちも悪いっ!」
ドラゴンシフターが出した技の一撃は、自分達がいた山を跡形もなく消滅させる。
避ける間もなく、ファンロンマグマナックルが直撃したドラゴンシフター二号と龍王シフターは地面にダウンした。
「……これが人と龍が一体となった力ですか、お祖父様?」
「まさか、まだ教えとらんのに逆鱗の力を発動させるとは思わんかった」
二号と龍王シフターは、技の防御に変身のエネルギーを使い果たしたのか変身が解除される。
「……こっちも、すっごい疲れた」
技を出した方のドラゴンシフターもエネルギーを使い切って、変身が解けて地面に突っ伏した。
三人ともクールダウンをした事で落ち着き、平地で地べたに座りながらジンチャオから語られる。
「まあ、先ほど立磨君が見せたのが秘伝の決め技である逆鱗の力じゃ」
「二人へのツッコみで覚醒するとは思いませんでしたよっ!」
「激しく荒ぶるご主人様も素敵でした♪」
「強力じゃが、莫大なエネルギーを消耗するので使い所を考えてな?」
「次は私が、逆鱗の力をマスターして見せます♪」
「取り敢えず、龍人拳法は技の型とか基本の所から改めて稽古して行きましょう」
強敵に備えての必殺技の特訓も良いが、やはり地道な鍛錬を積み重ねるのが一番だと立磨は思い至ったのであった。
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