第七章:太極到達編
第48話 龍宮リフォーム計画
「何だろうな、お爺さんの用件って?」
「ええ、私も気になります」
立磨とジンリーが並び、朱塗りの手すりなどが神社に似てる龍宮の通路を歩く。
二人を先導するのは、白い着物の上に黒い鎧を纏った真っ赤な蟹の将軍。
「……若様、恐れながら某は美味ではありませんよ?」
「え? ぎっしり実が詰まってそうなのに!」
「ご主人様、将軍は食べてはいけません!」
「ひ、姫もご勘弁を!」
通されたのは黒い鉄の扉の部屋の前、自動で扉が開く。
蟹の将軍は、食われてはたまらんと猛ダッシュで去って行った。
「失礼します」
「お待たせいたしました」
立磨達が部屋の中に入ると、特徴的な赤い柱や大きな丸テーブルが中華料理店のような部屋だった。
「おう、いらっしゃい♪」
「立磨君、待ってたわ♪」
「これで全員揃ったね♪」
円卓に座り待っていたのはまずこの城の主の龍王、ジンチャオ。
二人目はジンファで三人目はジンリンと、黄家の一家であった。
「えっと、俺らどういう用件で呼ばれたんでしょう?」
「私も、新事務所の工事を手伝いたかったのですが?」
「まあ、二人共席に着きなさい♪」
用件を尋ねる立磨達に着席を勧めるジンチャオ、立磨達は従い席に着く。
「いや、ちょっとした家族の会議じゃよ♪ 立磨君、最近頑張っとるらしいの♪」
「……おっす、恐れ入ります」
「緊張しなくて良いわよ♪ パパ、ウキウキしてるだけだから♪」
「お祖父ちゃんが、お義兄さんどうしてるかなって心配してたよ♪」
「もう、お祖父さま! 私が妻としても、守護龍としてもお仕えしております!」
「いや、そうは言っても家の大事な婿じゃからな?」
「何というか、ありがとうございます」
立磨としてはありがたいが、恐縮であった。
「パパ、この間久しぶりに戦ったから荒ぶっちゃって♪」
「あんなもん、準備体操じゃい♪」
「お祖父ちゃん、やる気出しちゃったの♪」
「いや、準備運動だけで大地震とかどんだけっすか?」
「いやあ、それほどでも~♪ まあ、お祖父ちゃん強いよ♪」
ジンチャオの暴れ振りを思い出してツッコむ立磨。
「今ならワンチャン、ワンラウンドなら斉天大聖とも?」
「いや、それは流石に無理ですね」
ジンリーが調子に乗るジンチャオにツッコむ。
「……越えらえない壁はあるんだよ、お祖父ちゃん?」
「若い頃、二万年早いってワンパンで倒されたって言ってたでしょ?」
ジンリンとジンファが窘める。
「……うん、ちょっと冷静になった」
娘の言葉から、過去の苦い記憶を思い出したジンチャオ。
「哪吒太子にも倒されて、関帝聖君のブートキャンプで鍛えたけど返り討ちにされたんですから調子に乗らないで下さいね?」
「いや、お爺さんより強い斉天大聖とかヤバすぎるな」
「上には上がおる、その上で己を高めるべく精進するのは大事なんじゃよ♪」
無理やりに、良い話風なオチを付けるジンチャオ。
義理の祖父の人となりに、ちょっと呆れつつ親しみを覚えた立磨であった。
「まあ、いざと言う時は頼むけどパパも無理しないでね?」
ジンファが、父であるジンチャオの身を案じる。
「わしゃまだまだ行けるぞ、任せろ♪」
「はいはい、お祖父ちゃんは大人しくしましょうね♪」
今度はジンリンがジンチャオをたしなめる。
「まったく、それで用件は何です?」
「そうだな、お爺さんの話でそれていたが何かあったんじゃ?」
ジンリーは溜息を吐き、立磨ははっと思い出す。
「おう、すまんな♪ 実はこの龍宮をリフォームしようと思うんじゃ♪」
「金龍合神と特級龍神とお城を合体させて、ロボにしようって話♪」
ジンチャオの言葉にジンリンが続く。
「私、実家がロボになるとは思いもしませんでした」
「いや、お金大丈夫なんですか?」
義実家パワー総出な話に驚く立磨、応援され過ぎである。
「金ならある♪ 心配はいらん、それに立磨君も龍王継いでくれるんじゃろ?」
「はい、将来的にはそれで恩返ししたいかなと思ってますけど?」
「いや、偉い♪ 本当、あの博打狂いの立心から良く出て来てくれた♪」
「曽祖父が御迷惑をおかけしたのもありますから」
「うんうん、何も心配いらんよ♪ まあ、そんな次代の龍王に相応しいしろにしたいんじゃよ♪ 城がロボになるとか、結構好きじゃろ?」
「……はい、好きです」
ジンチャオの問いに頷く立磨、婿の立場だし好きなのは変わらない。
「……はあ、まあ戦力は必要ですからね同居もやむなしとしましょう」
ジンリーは、嫌そうではあったが祖父の言う事に従う事にした。
「そう言うわけだから、これからも頑張ってね♪」
「私は、城の事も関わるから現場はリモートで出られるようにしておくよ」
ジンファとジンリンの言葉に、立磨はもうこのまま乗るしかないなと思った。
「立磨君、不思議じゃろうが君にはこの先大きな戦いが待ち受けておる」
「……それは、今の悪の組織との戦い以上でしょうか?」
「うむ、ダークカルテットはまあその先触れじゃ」
真面目な顔で語るジンチャオ、焦りながら聞く立磨。
「立心の奴が力を失う前に見せたのよ、君も含めてわしらが共に戦う光景をな」
「正直分からない事だらけですが、この道を進むと決めた以上やります」
「戦いをやめるという道は選ばんのか?」
「ないですね、戦わないと生き残れないって警告されてる気がするんです」
立磨としては、感じた事を素直に言う。
「大丈夫です、ご主人様には我ら黄家が付いております♪」
ジンリーが立磨を背後から抱きしめる。
「うむ、家の大事な婿殿じゃからな♪」
ジンチャオが立磨達の様子を見て微笑む。
「じゃ、大体話もまとまったし皆で食事にしましょうか♪」
ジンファが食事を提案する。
「そうですね、ご主人様にはしっかり栄養を摂って育っていただかないと♪」
「うむ、医も武も食と同源じゃからな♪」
「ご主人様、蟹将軍を見てお腹を空かせていたようですし」
「がっはっは、気持ちはわかるがいかんぞ♪」
「……お義兄さん、流石に家臣を食べるのは駄目だよ?」
「ああ、ごめん! でも腹はすきました」
「人間に化けていると空腹になりますよね♪」
全員で円卓に着き談笑する立磨達。
「じゃあ、食事を用意させましょうね♪」
ジンファが席を立ち、壁に掛かっていた銅鑼を鳴らす。
すると、ドアが開きコックコートを着たエビや鯛の妖怪達がずらずらと満漢全席と言わんばかりの大量の料理を運んで来たのであった。
「さあ、皆の者♪ 食って英気を養おうぞ♪」
「「いただきま~す♪」」
ジンチャオの号令で食事が始まる、立磨は黄家の面々と楽しい時間を過ごした。
食後、立磨とジンリーはジンチャオに先導されて通路を歩き灰色の石畳の広い部屋に案内された。
「ここは、修行の場と似てますね?」
「まあ、練兵場の一つじゃからな♪」
「お祖父様、もしや私達に稽古を?」
「うむ、まあちょっとなわしもこいつになれておこうと思っての♪」
ジンチャオが懐から変身バックルを取り出す。
「ええっ! 変身アイテム持ってたんですか?」
「妹め、余計な事を!」
「オーナー権限で作らせた、その名も龍王バックルじゃ♪」
ジンチャオが自慢げにノリノリで、自分の変身バックルを見せて来る。
金の正方形に王の字が刻まれたシンプルな造形。
「わしもこういうのは好きでの♪ ドラゴンシフトじゃ♪」
ジンチャオが龍王バックルを腰に当てれば、ベルトが生まれて腰に巻かれバックルが左右に開けば中の宝珠が輝きを放つ!
ジンチャオは眩い光に包まれると、瞬時にその全身を金のスケイルメイル風の装甲に身を包んだ龍の戦士へと変えた。
背中には赤地のマントが翻る。
「龍王シフターとでも名乗うかの♪ 二人共、来なさい♪」
龍王シフターが手招きする。
「おっす、宜しくお願いします!」
「頑張りましょう、ご主人様♪」
立磨とジンリーもバックルを取り出して変身する。
「こういう時は飾らない、素直に基本に忠実に!」
ドラゴンシフターは、腰を落として大地からエネルギーをくみ上げて踏み込み中段突きを打ち込みに行く。
「ふうんっ! その意気や良し、二十五点っ!」
爆発的な踏み込みで打ち込まれた拳を、片手で受け止める龍王シフター。
掴まれたドラゴンシフターは、龍王シフターの動きに逆らわず投げ飛ばされた。
投げられた所で受け身を取り、立ち上がるドラゴンシフター。
「ふむ、読まれたか流れに逆らわずと言うのは巧いの♪」
「次は私の番です、せりゃっ!」
続いてはドラゴンシフター二号が真っ向から相手に突っ込み、フェイントを織り交ぜながら突きや蹴りを繰り出して龍王シフターと打ち合う。
「ふむ、お主もそこそこやるようになたのう♪」
「ええっ夫の為に強くなると決めたので♪」
打ち合いから龍王シフターが、ゆっくりと拳を突き出して来る。
「それは喰らいませんよ!」
「ホッホ、やるのう♪」
ドラゴンシフター二号は、後方に飛び退いて回避した。
「うんうん、二人共鍛え甲斐があるのう♪ 行くぞ!」
龍王シフターが瞬時に、二人の目の前から姿を消す。
「来るっ! ぐあっ!」
「せりゃっ! ちいっ!」
ドラゴンシフター達は、相手の動きではなく技が出されれる時の気の流れを見る。
その上で、龍王シフターが放て来た掌打や蹴りをガードをするが吹き飛ばされた。
「ほっほっほ♪ 二人共、直感と防御のタイミングは良いが防御に回すエネルギーの練りがまだまだ遅い!」
爆発的な踏み込みでドラゴンシフター達に突進する、龍王シフター。
「全力全開っ!」
「ぶっ飛ばして見せますっ!」
立ち上がったドラゴンシフター達も、二人同時に床を踏み爆発的な威力で掌を突き出して龍王シフターを迎え撃つ。
互いの技がぶつかり合い、双方が発生した土煙と衝撃波に包まれる。
土煙が晴れると、龍王シフターは立っており変身が解けた立磨とジンリーは床に倒れていた。
「まだまだ、行けます!」
「やられっぱなしでは、終わりませんよ!」
ダウンから立ち上がる立磨とジンリー、二人の目は死んでいない。
「うんうん、良い根性じゃ♪ ならば、もう一丁行くぞ!」
「「応っ!」」
龍王シフターに対し、再度ドラゴンシフターとなってぶつかりに行く二人。
ドラゴンシフター達は健闘するも、今回は稽古を付けてくれた龍王シフターからは一本取る事は出来なかった。
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