第45話 新武器テスト依頼

 「取り敢えず、これで邪仙に関してはひとまずは片付いたかな?」

 「ええ、今後も悪の道に走る仙人がいなければですが」

 「ああ、それが心配だよな? 何百年かの周期で、殺業とかあるからあの人達」


 戦いを終えて会話をする立磨とジンリー。


 邪仙郷から帰還した二人は、本部であるロンスターの本社に来ていた。


 立磨達を労うのとジンリー亡父の法要も兼ねた祝宴が、ロンスター本社にある地下ホールを使って行われるからだ。


 会場では複数の丸テーブルに料理が並べられ、参加者達が祝杯を上げる。


 法事と言う事なので、立磨は礼儀として学生服に着替えていた。


 「さあ、皆お疲れ様♪ 今日は、ガンガン飲んで食べて楽しみましょう♪」

 「「オ~ッ♪」」

 「この世に仇為す、憎たらしい邪仙どもを蹴散らした祝勝会よ♪」


 金のチャイナドレス姿のジンファが、お高い酒瓶を天に突き立てて叫ぶ。


 ジンファのコールに、参加した酒飲みな大人達は喜びの声を上げた。


 「龍って、やっぱり酒好きなんだな?」

 「お恥ずかしながら、水神として酒を供え続けられた種族なので」

 「それは、体は酒で出来ているとか言いそうだな?」

 「母は時々そう言って飲んでますね、酒こと百薬の王者とかも言いまして」

 「駄目な人の発言だよそれ」


 酒飲み組から離れた席で、ジンリーと二人の食卓に着く立磨。


 ジンファも酒飲みだが、社長としてコンプライアンスは守る気はあったらしい。


 「校則とか法律とか、各種コンプラは守らないとな」

 「家の酒飲み共はひどいので、ご主人様が二十歳になった時が危険ですね」

 「その時は、スキャンダルは起こさないようにするよ」


 義理の親戚達が、人化が解けてヤマタノオロチの如くべろべろに酔いくだを巻くどころかとぐろを巻き出す者も出る姿を見た立磨。


 本当に、酒には気を付けないと駄目だなと肝に銘じた。


 「しかし、邪仙郷の跡地の調査とかどうしよう?」

 「正直、戦力が酒に潰れているのと金龍合神の整備で此方は動けません」

 「あの戦いはこっちが消耗しただけか、休まないとな」

 「敵からの命がけの嫌がらせですね、まあ休むことも仕事と思いましょう」

 

 他の悪の組織の火事場泥棒とか、やられていても防げない状況が歯がゆい立磨達。


 会場で一通り飲み食いをした立磨達は宴を抜けて、開発室へと顔を出す。


 「うわ~っ! ちょと、二人とも服がお酒臭いよ~?」


 酒気まみれだった宴会場から出てきた立磨達を見て、鼻をつまむジンリン。


 「酒飲み達の所にいたから不可抗力です、諦めなさい」

 「ごめん、顔見に来ただけだからっすぐに帰るよ?」

 「まあ、丁度良かったけどね? 新しい辟邪剣の試作品一号ができたし」

 「マジで、リンちゃんありがとう♪」

 「では、テストが必要ですね?」

 「うん、これを見てDXデラックスファンロンセイバー(仮)!」


 ジンリンがデスクの上のジュラルミンケースを開ける。


 中には、プラスチック製のデフォルメされた黄色い龍が柄の玩具の刀が二個。


 ジンリンは新たな辟邪剣を、刀タイプに変更する気らしかった。


 「いや、明らかに玩具売る気のデザインだな」

 「転売対策が必要になる奴ですね」

 「ドラゴンシフターグッズ、中国限定で売ってるから転売の対策はしてるよ♪」

 「俺監修してないんだけど、そのこれまでのグッズ当人達に見せてくれない?」

 「まずキッズ向けに、ソフビと塗り絵とパンツとシャツでしょ? 発光パジャマは大人用の着て見る?」


  デスクの引き出しから商品のカタログを出して見せて、立磨にドラゴンシフターグッズについて語るジンリン。


 「こんなの出てたんだ? 変身バックルや、金龍合神の玩具もあるな」

 「ご主人様、ドラゴンシフターのグッズに関しては私が徹底して監修しておりますので問題はございません♪」

 「ジンリーがしてたんかい! いや、本人を蚊帳の外に出すなよな?」

 「ご主人様には学業もありますので、今後はご主人様の確認もお願いいたします」

 「おう、頑張るよ」


 ファンロンセイバーよりも、ジンリンに見せられたグッズのカタログに目を奪われてジンリーと夫婦漫才をする立磨。


 ジンリンは、一休みと引き出しからポテチを出してその掛け合いを眺める。


 「まあ話は反れるからグッズ云々は置いておいて、ひとますはこの段階でのデータ取りを二人にはお願いすうrね♪」

 「ああ、試して見るよ」


 気を取り直してジンリンに答えつつ、ファンロンセイバーに触れてみる立磨。


 引き金付きのグリップは、両手でも持てるタイプだと感じた。


 「うん、刀文化の日本人としては両手でも持てるのは使いやすいかな?」

 「そこはお義兄さんのスタイルに合わせて見たよ、突く剣でも振り回しそうだし」

 「ああ、俺は突く剣術とか知らないんだマジで」

 「チャンバラの国だからね日本って」

 「ところでこのナックルガードは、私がリクエストした宝珠のスロットですか?」


 ジンリーもファンロンセイバーを見て尋ねる。


 「そう、宝珠をセットして引き金を引いて刃の属性を変えるの♪」

 「なるほど、リクエスト通りですね♪」

 「お約束だな、属性変更は」

 「お約束は大事だよ商売でも♪」

 「まあ、玩具化はこれでも行けそうかな? これは刀身もプラスチック?」

 

 立磨がファンロンセイバーの赤い刀身に、素手で触れて確認する。


 「うん、仙術で強化したプラスチック♪ 本製品は神珍鉄で作るから♪」


 ジンリンが一仕事終えた笑顔で答える。


 「前に渡された、龍牙大刀りゅうがだいとうとも連動してるの?」

 「あれも使いが手が良い武器でしたね♪」

 「うん、合体して龍牙大戟りゅうがだいげきになるよ♪」


 ジンリンがPCを素早く操作して、ディスプレイに動画を表示して見せる。


 龍牙大刀の先端が横に間借り、ファンロンセイバーが新たな先端となる映像だ。

 

 「ハルバードとかと似た奴だな」

 「流石我が妹、既存の物も無駄にならない造りが素晴らしいですね♪」

 「そりゃ私だって自分が作った物を、簡単に粗末にできないよ♪」

 「この新アイテム、戦闘にも救助活動にも役立てて見せるぜ♪」

 「ヒーローが破壊するのは敵だけではありませんからね♪」


 かくして、ボケたやり取りを交わしつつ立磨達は新武装のデータ取りの為のテストを行う事となった。


 「それじゃあ二人は日本に戻るんでしょ? またね♪」

 「ええ、また来ます♪」

 「ああ、またな♪」


 立磨達はファンロンセイバーの試作品を持って、開発室を出た。


 「リンちゃんには苦労を掛けるな」

 「まあ、特許料などで稼いでますから♪ 妹よりも、正妻である私の方を甘やかして下さいね♪」

 「ああ、わかってるよこっぱずかしいけどパジャマのペアルックしてみるか?」

 「ええ、喜んで♪ 撮影会もしましょう♪」

 「いや、いつも以上にキラキラした笑顔で乗ってきたな?」

 「今日は、嬉し恥ずかしパジャマ記念日ですね♪」

 「毎日が記念日の世界だな、楽しいが」

 「愛のメモリーを蓄えて参りましょう♪」

 「言い方はあれだが、その気持ちには賛成だよ」


 二人で惚気つつ、会社を出ると運転手付きの社用車で空港へと送られる二人。


 本社から支給されたビジネスクラスの航空券を使い、飛行機に乗り帰国する立磨達であった。


 「ふう、飛行機とか使わないといけないのが面倒だな」

 「ヒーローに変身して国外に行く時は、ある程度出入りは自由なのですがね」

 「だよな、変身して出ると衛星探知で自動的に出入国の処理してくれるのに」

 「会社の経費の正当な使用の証明が必要ですので、ご了承下さい」

 「そう言う事情なら仕方ないな、マイルも溜まれば買い物できるしまあ良いか」


 空港を出て帰国した二人は、人気のない場所を探す。


 日本国内ならテレポートや転移の魔法の使用は自由なので、他の人の邪魔にならない場所に行き仙術で空間に通路を開けて通り事務所へと戻る立磨達。


 「ふう、ドタバタしてたが帰って来たぜ」

 「お疲れ様でした♪」


 住居スペースの居間で一息つく、立磨とジンリー。


 カレンダーを見た立磨が、思い出したように呟く。


 「そういえば、そろそろバレンタインの時期だよな?」

 「はい、当日は私の愛を込めたチョコをフルコースでお召し上がり下さい♪」

 「うん、楽しみだけど絶対に平和なバレンタインと言う日にはならないよな?」

 「ええ、残念ですがならないと思います。 平和に暮らしたい他人様の幸せや楽しみをぶち壊すのが、悪の組織の仕事と言えますから」

 「だよな、敵にとってもヒーローにとっても記念日的なイベントのある日は稼ぎ時みたいなものだしな悲しい事に」

 「敵を迎え撃って悪に負けない、楽しいバレンタインを二人で過ごしましょう♪」

 「おう、新たな武器も手に入れたし奴らでファンロンセイバーの試し切りだ!」


 迫り来るバレンタインにおける、悪の組織との戦い闘志を燃やす二人であった。


 一方、立磨達が日本で一休みしている頃。


 ジンリンは黄色の繋ぎに白ヘルメットと言う格好で、巨大な工場にいた。


 「はい、オーライ、オーライ、先頭車両そこで降ろして!」


 工場内でクレーンを操作する作業員に指示を出すジンリン、彼女に指示でクレーンから降ろされたのは真紅の龍の頭をしたロボット。


 工場内には数本のレールが敷かれており、列車が分離されて置かれていた。


 「ふう、私のロボもやっとここまでできたよ♪ 完成まであと少し♪」


 ジンリンが嬉しそうに呟く、この巨大工場は彼女の作業場。


 制作しているのは、姉達が乗る金龍合神と合体機能を持つ列車型のロボット。


 その名は特急龍神とっきゅうりゅじん


 「変形や合体のテストは、金龍合神ごんりゅうごうじんの整備が終わってからかな? 修理ついでに、この子との合体と連動のプログラムを入れて貰わないといけないし」


 タブレットで、画像を出すジンリン。


 画面んは特急龍神が人型に変形したり、パワーローダーのように金龍合神と合体するモデリング映像が表示されていた。


 「私も現場に出る用意を進めていくからね、デビューまでもう少し待っててね♪」


 この場にはいないが、今後は現場でも共に戦う義兄や姉に対して呟くジンリン。


 姉や義兄の力となるべく、ジンリンもドラゴンシフター三号として現場に出る為の準備を進めていくのであった。

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