第42話 節分の鬼退治
「鬼は外っ!」
「福は内っ!」
ダブルドラゴンシフターが叫びながら投げた豆が、黑い鬼の姿をした怪物に当たると怪物が霧散化して消滅する。
節分の日、真昼間からドラゴンシフターと二号は済んでいる家の近所に出現した鬼を退治をして回っていた。
彼らだけではなく、フロートシティにいる他のヒーロー達に加えて日本の各地でもヒーロー達全員が鬼退治をしていた。
「このまだできて数年も経っていない人工島でも、鬼が出るのですね?」
「ここはある意味で悪の組織のホットスポットだから、奴らの邪気に寄せられて性質の悪い鬼も出て来るさ!」
この日、日本全国でヒーロー達による豆まきや武力で鬼退治が行なわれていた。
「そう言えば日本では、鬼はただの亡者と言うわけではないのですね?」
「ああ、生きてる鬼や地獄の獄卒も夜叉や羅刹も化け物は色々纏めてオニだ」
中国では
「まあ、元は中国の追儺から節分になったわけだが節分の日はとにかく鬼が活発になるんだよな!」
「鬼に関する日の所為か、鬼に由来するヒーローの方々も強化されてますね」
「ゲームの特攻キャラみたいにな、本当に今日は渡る世間は鬼だらけだよ!」
日本の本島から離れた人工島であるフロートシティも例外ではなく、節分と言う事で街のあちこちに鬼が現れたのでヒーロー達に退治されていた。
鬼退治は古来より続くヒーローの仕事、ドラゴンシフター達も伝統を受け継ぎ鬼退治に励んでいた。
「豆以外でも気の力などで倒せるのですね、私達は日本の鬼に特攻効果があるようですね? 色々気にはなりますが、一旦事務所に戻りお昼と行きましょう」
「ああ、ガッツリ食ってまた鬼退治だ♪」
自分達の家に戻る道中も、豆を投げたり光り輝く気を纏った格闘攻撃などで街にはびこる鬼達を退治して行くダブルドラゴンシフター。
自宅に戻り、変身を解除する。
「ふう、取り敢えずお疲れ様」
「お疲れ様です、お食事にいたしましょう♪」
「そうだな、手伝うよ」
立磨とジンリーは、手洗いなどを済ませてキッチンで調理に取り掛かる。
「鬼退治用の大豆がまだ数袋ほどありますので、豆と鶏肉の辛味噌雑炊にいたしましょう♪」
「この豆で、豆腐何百個作れるんだろうって買ったよな?」
「余りは自家製豆腐や味噌作りに使えますから♪」
「豆腐に加工すると、鬼には効果がないんだよな」
「呪術は存在の固定ですから、加工で変容すると無効なんだと思います」
「ああ、魔法の授業で習ったなその理論」
どんな時でもいつも通り、夫婦漫才でメンタルをニュートラル状態にする二人。
完成した雑炊の鍋を食卓に持って行き、二人で食べる。
「よっし、ごちそうさま♪」
「お粗末さまでした♪」
食事を終えた二人は、急いで後片付けに取り掛かる。
「それじゃあ、また二人で変身して鬼退治に行くか」
「ええ、伝説の英雄である桃太郎様のように退治しましょう♪」
「何気に、日本って各地に桃太郎伝説があって桃太郎の後継者ヒーロー多いよな」
「黍団子も各地で売られてますしね」
軽口を言いつつ変身した二人は、事務所を出て再度街の鬼退治へと出かける。
「さて、次は住宅街に行くかな?」
「お待ち下さい、どうやらこの騒ぎに便乗したダークカルテットの各組織の襲撃が島内各地で起きているそうです!」
「いや、悪党どもが全組織を上げて節分に便乗かよ?」
「迷惑な便乗商法ですが、これらも放置できませんね?」
ドラゴンシフター二号が、マスク内でネット検索をして調べた情報を伝える。
日本全国が大騒ぎな時に、悪の組織が黙ているわけはなかった。
このビッグウェーブに乗るしかないと、騒ぎに便乗して悪ノリした悪の組織達の対応にもヒーローが動いたという情報もドラゴンシフターも得たので対応を考える。
ドラゴンシフター達は空を飛び、住宅街のある地区へと向かった。
「来るな~っ! 鬼は外~っ!」
「うえ~~~ん、豆が効かない~っ!」
「怖いよ~! 助けて~っ!」
「誰か、子供達を助けてっ!」
「ヒャッハ~♪ 食っちまうぞ~♪」
住宅街にあるマンションが並ぶ団地の谷間の公園では、幼い子供達やその母親と言った住民達が鬼の怪物だけでなく悪の組織の怪人にも襲われていた。
「そうはさせん!」
「お助けに参りました!」
空から龍の形態で現れたドラゴンシフター達が、とぐろを巻くように子供達を守る壁となり鬼や怪人達から子供達を守る!
「出たな金蛇共、だがガキ共はいただくぜ♪」
「助けて~っ!」
「させるかよ!」
ドラゴンシフター達が来た事で敵の数は減ったが、まだ無傷のオニオコゼの怪人が幼い男の子を担いで逃げようとする。
「させないっしょ!」
「子供達を狙うとは許さん! ジャスティス正拳突きっ!」
「ぐはっ!」
「おっと、子供ゲットっしょ♪」
公園に現れた新たなヒーロー。
それは、アームドタイガーとプリティジャスティスの二人だった。
プリティジャスティスが怪人を攻撃し、アームドタイガーが子供を奪還と見事な連携を見せる二人。
「よっし、仕留めるぜ! ファンロンアッパー!」
二人の登場で、劣勢になったオニオコゼの怪人にドラゴンシフターの必殺パンチが止めを刺して状況を終了させた。
「はい、お母さんの所へお帰りっしょ♪」
「ありがとう、アームドタイガー!」
「ありがとうございます!」
アームドタイガーが助けた子供を母親に引き渡す。
「皆、私達が守るから集まってお家へ帰ろうね♪」
「は~~い♪」
「皆さん、ありがとうございます♪」
プリティジャスティスが穏やかな声で呼びかける、ヒーローが来て怪人達を倒した事で安堵した子供達や母親が一斉に集まって来た。
「周囲に敵の気配はなし、子供達も親御さんも全員います」
「良かった、アームドタイガー達が来てくれたおかげで助かったぜ」
「いや、そちらが先に守っていてくれなければ危なかったよ♪」
「そうそう、互いが協力した結果っしょ♪」
ドラゴンシフター達の言葉に、アームドタイガーとプリティジャスティスが笑って答える。
会話を終えたドラゴンシフター達も周囲の索敵や人数確認を終えると、子供達の護衛に加わる。
公園にいた子供達や母親を、住んでいるマンションに送り届けたヒーロー達。
「よし、皆にこのお札セットをあげよう♪ お父さんやお母さんとお家のドアや窓にこのお札を張れば、鬼とかがお家に入って来なくなるからね♪」
「こちらの豆もどうぞ、私達ヒーローのパワーが籠った物で食べれば邪気に耐性が付きます♪」
ドラゴンシフターがお札を、ドラゴンシフター二号が虚空から小袋にパッケージされた豆を子供達や親御さんに配る。
異次元でキョンシー服を着た幽霊達が豆の袋詰めをして、二号が虚空から豆を取り出した際に陽の気を込めて手渡しと言うガチで龍の霊力が籠ったマジックアイテムの無料配布であった。
子供達や親御さんに礼を言われつつ、団地を出たヒーロー達。
「俺らは海岸地区に行くけど、二人はどうするっしょ?」
アームドタイガーがドラゴンシフター達に尋ねる。
「そうだな、こっちは次は商業地区の中央通りかな?」
ドラゴンシフターが答える。
「そう言えば、お二人も仲が宜しいのですね?」
ドラゴンシフター二号が、アームドタイガーとプリティジャスティスの仲の良さに気付いた。
「ああ、彼は私が捕まえて花婿として育成中だ♪」
「ハートと胃袋、彼女に鷲摑みにされちゃったっしょ♪」
笑顔で惚気る二人に、ドラゴンシフター達はマスクの下で微笑み彼らと別れた。
「ご主人様の周りも、カップルが出来て来ましたね?」
「ああ、良いんじゃね? バレンタインもあるし?」
「学校でご主人様が狙われないか不安でしたが、安心しました♪」
「何故か知らないが、人間からは学生生活でモテた事ねえよ!」
「人間にはなくても西洋や他の地域のドラゴン達が、ご主人様を狙って襲来する可能性もありえますので」
「いや、それは流石にないと思うぜ~?」
「はい、私もプリティジャスティス様と同様に婿は逃がしません♪」
「おれもお前を離したくないよ♪」
龍形態で空を飛びつつ、惚気て愛を語る二人。
節分を越えて、楽しいバレンタインを迎えるべく本日のラストバトルに挑む。
「金棒で武装しているのは、バンクラーの強盗獣ですね」
「良し、こっちもぶちのめそう♪ 帰りに恵方巻を買って帰ろう♪」
ダブルドラゴンシフターが降り立ったのは、銀行のある中央通り。
他のヒーロー達も、鬼や鬼もどきの敵を相手戦っている中でドラゴンシフター達も赤鬼をモチーフにした怪人と対決する。
「行くぜ二号、こいつで今日の仕事は終わりだ♪」
「はい、鬼は外と参りましょう♪」
背中合わせに構え、虚空から大刀を取り出して武装するダブルドラゴンシフター。
二人に対して、金棒をバットのように振り回しながら襲い来る怪人。
「来たな、福は内と行こうぜ♪
「除災招福、私達も皆様も笑顔で過ごす為に決めましょう!」
二人が大刀の刀身を合わせ、刃にエネルギーを集めて金色の光を灯す!
「「必殺、ダブルファンロンバースト!」」
ドラゴンシフターとドラゴンシフター二号が同時に叫べば、二人の大刀の先から金色の光の龍が飛び出す!
エネルギーで出来た光の龍は、赤鬼の強盗獣に突進し大口を開けて噛み砕くと敵と同時に消滅した。
「よっし、これにて解決だな♪」
「周りの皆様も無事に勝利されたようで何よりです♪」
ドラゴンシフター達が敵を倒したのと同時刻に、彼らの周囲でもヒーロー達による鬼退治が完了して皆で勝利を喜んでいた。
だが、この戦いで喜んでいたのはヒーローや市民達だけではなかった。
「くっくっく、ヒーローや龍共に気取られずに陰気が集まったわい♪ これで、新たな邪仙力士のコアができる♪」
どことも知れぬ場所にある、薄暗く陰気が満ちた部屋。
壁には怪しげなションが並ぶ書棚、部屋の中央には用途御不明な金属のガラクタがおかれた作業台と部屋の空気に似合わぬデスクトップパソコンと言うヤバい部屋。
部屋の主は。黒い着物を着た毒々しい紫の肌に赤い瞳の白髪の老人。
邪仙の一人である
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