第40話 天の川での再戦
「俺達、春節の祝いで会社は冬休みになったはずだよな?」
「会社のデータベースを調べた所、私達は社員旅行中と言う扱いのようです」
「いや、確かに旅してるけどさあ? 遥か地球から、宇宙まで!」
「ペアで宇宙旅行って、とっても浪漫がありますね♪」
「ロボット使って、ドリルで隕石掘ってと労働してなけりゃな!」
ドラゴンシフターと二号が二人で巨大ロボ、
空には宇宙、周囲に見えるのはアステロイドベルト。
自分達の立っている場所も巨大な隕石の上、ドラゴンシフター達は再び神珍鉄と言うレアメタルを採掘しに銀河の天の川を訪れていた。
「予算ができたからロボットの三号機作るね、操縦は私で♪」
「私達、休暇のはずでは?」
「宴会でも仕事したよな俺達? ていうか俺、学校あるんだけど?」
「まあまあ、お金は出すから大丈夫♪ あ、学校には連絡しておいたから♪」
「いや、根回し早いな!」
「流石は我が妹、侮れませんね」
事務所にやって来たジンリンが用件を語る。
「そういうことだから、宇宙までまた材料取りに行って来て♪」
「私以上に強引ですね、まあ戦力増強の為なら仕方ありませんか」
「休みって一体何だろうな」
地球にて、そんなやり取りをしたのを思い出すドラゴンシフター。
「いや、オートモードだから作業自体は辛くはないがな?」
「もう少ししたら、作業を止めて居住スペースでお茶にしましょう♪」
「ロボに居住空間あるって、珍しいよな?」
「壺中天フィールドと同じ原理で異空間を作り居住スペースにしております♪」
「仙術って、本当に空間の関係はべらぼうだよな?」
一休みで機体をアイドリング状態にして、二人は変身を解く。
「ロボの中に1LDK、VRじゃないのが凄いよな」
「お帰りなさい、あなた♪ ご飯、お風呂? それとも私♪」
「じゃあ、フルコースで」
「もう、地球に帰らずここに永住しましょうか♪」
「ジンリーと温泉巡りに行きたいから、それは却下♪」
「まあ、喜んでお供いたします♪」
「気に入った所があれば宿ごと買って、会社の保養所にしようぜ♪」
「なるほど、美人女将と言うのも良いですね♪」
宇宙だろうが夫婦漫才をする二人。
「それでは、お昼はラーメンを作りますのでお待ち下さいませ♪」
「手伝おうか?」
「ではお米を洗っていただけますか? 余ったスープは、雑炊にいたします♪」
「おっけ、肉はラム肉か♪」
「はい、お気に召されたようなので用意しておきました♪」
立磨は米の用意、ジンリーは具材の下拵え。
「お米の次は生地を手ごねしてから、切って下さいませ♪」
「任せろ♪」
二人で仲良くラーメン作りをして、さて完成と言う時であった。
「ここで警報かよ!」
「好事魔が多しですね、片付けましょう!」
「腹ごなしと行くか!」
変身してドラゴンシフターになり通常空間に戻る二人、計器と目視双方で確認できたのは円盤型の宇宙船の群れであった。
「敵、
「にゃろ、飯時を邪魔した怨みは深いぜ!」
「奴らを倒したら、二人で楽しくいただきましょう♪」
機体を操作して戦闘に入るドラゴンシフター達。
敵の円盤部隊も金龍合神に対し、赤い色の光線を発射して攻撃して来た。
「おっと、当たるかよ♪」
「新武装を試しましょう、
ドラゴンシフターの機体操作で回避運動を行う中、二号が操縦席周りのスイッチを操作して新武装を召喚した。
虚空から瞬時に現れたのは二丁の巨大なガトリング砲。
「セット完了、左腕は黒龍宝珠で右腕は赤龍宝珠だ!」
金龍合神の両腕に背とされたガトリング砲が唸りを上げて、冷気の弾丸と超高熱の火炎弾を宇宙空間にド派手にばら撒いた!
冷気の弾丸を受けた敵機は凍り付き、味方の機体と衝突して撃墜。
火炎弾を受けた敵機は、僚機を巻き込んで爆散した。
「へっ、どっちも魔法のエネルギーだから簡単には防げないぜ♪」
「次元の振動をキャッチ、新手が来ます!」
「よし、武装を送還して遮蔽を取るぜ!」
「足裏ドリル発動、潜行します!」
ドラゴンシフターの操作でガトリング砲が消える。
次に金龍合神は足の裏からドリルを生やして、土竜の如く隕石の内部に潜った。
次元を超えて出現したのは、巨大な黒い包丁としか言い表せない宇宙船であった。
宇宙船は、頭部にブレードを持つ巨大な鎧武者風の人型ロボットへと変形。
金龍合神達が潜っている巨大隕石へと降り立ち、機体から声を出した。
「出てこい金蛇共、今度はこちらも以前のようにはいかんぞ?」
ロボから流れた声は、ドラゴンシフター達がクリスマスに遭遇した敵の幹部。
暗剣殺のデバの物であった。
その言葉に応じるように、隕石の中から金龍合神が姿を現した。
「上等だこの包丁野郎、去年の生身戦での決着を巨大戦で着けてやる!」
「挑まれたなら受けて立ちましょう、ここで見事に金星を挙げて見せます!」
「そのロボットごと、我が愛樹マゴハチで背開きにしてくれるわっ!」
「その邪悪な刃、叩いて砕く!」
ダブルドラゴンシフターの操る金龍合神と、暗剣殺のデバのマゴハチ。
宇宙空間を舞台に、二体の巨大ロボットによる巨大戦が始まった。
デバがまず仕掛けたのは遠距離攻撃。
「暗黒クナイ千本打ちっ!」
デバの操るマゴハチの両肩が開き、無数の漆黒の苦無が射出される。
「急速潜行、土遁の術ならこっちも得意だぜ♪」
瞬間移動並みの速さで隕石内部に潜り、敵の攻撃を回避する金龍合神。
「小癪な奴め、いぶり出してくれる! 暗黒カトン術っ!」
マゴハチの両手が印を結ぶと、その手から黒い火の玉が撃ち出された!
「なめんな、火吹きも龍の得意技だよ!」
「
金龍合神が飛び出し、胸部を開けば中の龍が大口を開けて超高熱の火炎放射を行いマゴハチの火の玉を飲みこむように打ち消してカウンターを叩き込む。
「かすったか、おのれ!」
デバのマゴハチはギリギリで回避するも、かすった炎が肩アーマーの先端を溶かして失わせていた。
「申し訳ございません、直撃は避けられました!」
「ナイスだぜ、ちょっとずつダメージ入れて行こう♪」
「はい、勝負はこれからですものね♪」
「おっし、締まって行こう♪」
敵にわずかながらもダメージを与えたドラゴンシフター達は、素直に喜ぶ事で自分達を鼓舞して戦いの士気を高めた。
「調子に乗るなよ、宇宙こそは我らの庭よ!」
デバのマゴハチが姿を消した。
「にゃろう、忍者らしい事しやがるな」
「科学のセンサーには反応なしですが、
「当たるも八卦、当てるぜ八極拳! チェリャっ!」
敵が消えても慌てない、コンソロールに付いている八角形の風水盤が示した東南東の方角に金龍合神が突きを入れれば、姿を現したマゴハチを殴り飛ばす。
「馬鹿な、何故分かった!」
吹き飛ばされるも体勢を立て直し、刀身が黑い刀を構えるマゴハチ。
「何故だって? 占いが当たったんだよ♪」
「高名な風水師と易者に指導を受けた、AIによる占いの結果です」
「占いなどと言う下らん物で、我が術が破られてたまるか!」
今度は小細工はせず、刀を大上段に構えて迫るマゴハチ。
対する金龍合神は、両肩のアーマーとなっている龍頭を拳へとスライドさせる。
「おっしゃ、こっちも
「重力発生装置、作動っ!」
二号が重力を生み出す装置のスイッチを入れてから、ドラゴンシフターが機体を突進させる。
マゴハチの斬撃を左の拳で弾き、弾いた拳を振り下ろすフェイントの打撃を入れるもこれは避けられる。
「せりゃっ! 猛虎硬爬山は連続技なんだよっ!」
「何のっ!」
次に打った金龍合神の右ストレートは、マゴハチが刀で受け止めるが金龍合神は止まらない。
三発目は右の肘打ちを叩き込んで、相手の刀を粉砕した!
「ぐわっ! 我が刀が砕けただとっ!」
「こっちも得物を使うぜ、
マゴハチの刀を砕かれたデバが動揺した隙を見て、必殺の鉞を召喚した金龍合神。
「ここで止めと参りましょう!」
「ああ、怪獣化させる間は与えないっ! サンダースマッシュだ!」
魔法が生み出す神威の雷は、宇宙空間だろうと生み出される。
金色の雷を纏った鉞を大上段から振り下ろし、パイロッごと敵のロボットを両断。
敵の爆散を背景に残心を決める金龍合神。
「決まったな、生身の方が厄介だったが金星だぜ♪」
「おそらく、愛機を用いたならば負けはないと考えていたのでしょう」
「頼れれる相棒となら負けないって思うのは、敵も一緒か」
「私達は、相談しながら新たな戦い方を模索しながら戦って行きましょう」
敵との戦闘で色々と思いつつも、ドラゴンシフター達はデバを倒したのであった。
「ですが、倒したという証拠も木っ端みじんにしてしまいましたから実績としてはノーカンになりそうですね」
「……あ、そっちの事を忘れてた! 敵組織の大物を倒したなら、ヒーロー連合から高額の賞金が手に入るんだったっ!」
「まあ、名誉やお金よりも無事に勝って生き残った事を喜びましょう♪」
「そうだな、俺達は社員旅行中だしそれで良しとするか」
「それでは、変身を解いてラーメンを食べましょう♪」
「ああ、何かガッツリ疲れたよ風呂入ってから飯にしよう」
「食後は仮眠もとりましょう、今日の採掘はひとまずお休みにして♪」
「だな、今日はもう仕事終わり!」
機体を元居た巨大隕石に下ろして、変身を解く二人。
勝利を喜んだんも一時、お金と実績は手に入らなかったけれどもロボットを使い宇宙で戦闘して生き残ると言う経験は得られたのであった。
「ふう、ジンリーの作るラーメンは何処で食っても美味いな♪」
「ありがとうございます♪ 私も、こうして愛するあなたと食卓を共にできる事が嬉しいです♪ いずれは、子供達が出来て家族で団欒ですね♪」
「早い、早過ぎるよジンリーさん!」
「私の脳内は、現在通常の三倍の速度で未来を描いておりますので♪」
ロボの中に設けた居住スペースに戻り、食卓で互いに向き合いラーメンを食いつつ夫婦漫才をする立磨とジンリーであった。
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