第39話 春節の巨大戦、邪仙力士を迎え撃て!
旧正月、それは概ね一月半ば過ぎから二月の初めに催される旧暦でのお正月。
中華の文化圏では1月1日ではなく旧暦で
立磨とジンリーが所属する株式会社ロンスターも、本社所在地が中国の会社なので旧正月が社員一同が待ちに待った冬休みの始まりであった。
「さあ皆、楽しい冬休みの始まりよっ♪ 乾杯♪」
「「乾杯♪」」
金色のチャイナドレスを着た社長のジンファが音頭を取り、本社前の広場に作った特設のステージでお高いドンペリが入ったグラスを突き上げて叫ぶ。
そのコールにレスポンスする立磨達、ロンスターの本社の敷地を使い春節のお祝いパーティーと称して昼間から大宴会が催されていた。
参加者は龍と魚介類の妖怪達の黄家の一族郎党と、一部の社員に系列企業の面々。
中華圏では、ラッキーカラーの一つである赤で飾られた会場は爆竹やドラに琴での音楽が鳴り響き大人は酒を飲み子供もご馳走を食べたりと盛り上がっていた。
「
「はい、お正月ですからこういう遊びも良い物ですね♪」
立磨達が乗るスーパーロボット、
「
「変身して~♪」
「
色取り取りの中華服姿の小学生位の男女の子供達が、立磨達へ近づいて来た。
「む、従兄弟達が来ましたね? では、これでも喰らいなさい!」
ジンリーがやって来た親戚の子供達に、シュバシュバと赤いポチ袋を配る。
紅包、中国のお年玉をもらい喜ぶ子供達。
「あ、ご主人様の紅包は親戚一同から古銭やら元やら通貨レートが統一されずに来たので私がまとめて日本円に両替えしてからお渡しいたします♪」
「お、おう任せた? じゃあステージで変身して来ようぜ?」
「ええ、休みですがひと仕事をしておひねりをがっぽりいただきましょう♪」
社長のジンファが挨拶をしたステージに立った、立磨とジンリーは変身した。
ドラゴンシフター達が登場した事で拍手が鳴り響く。
「昨年はお世話になりました、皆様本年も宜しくお願いいたします♪」
「今年も頑張って戦って行きます♪」
ドラゴンシフターと二号がポーズを取ると爆竹が鳴り響き、歓声が上がる。
「さて、温まった所でキッズ達~っ♪ 春節パーティー、紅包獲得イベントよ♪」
ジンファが司会のお姉さんとしてステージに上がって叫ぶ。
盛り上がる子供達、遊んでお小遣いゲットな展開に燃え上がる。
「おいおい、どんなゲームなんだ?」
「問題ありません、子供達も龍ですし妙な事にはならないはずです」
ご馳走や酒を飲み食いして駄弁ったりお年玉をもらうと、お正月の流れ中華も日本と変わらないが金のある所は金の使い方が違っているよなと立磨は感じた。
「はいはい、まずはビンゴ大会よ新年の運だめし♪ ドラゴンシフターの二人はランダムマシンを操作して♪」
「はい、ガラガラと回してね♪」
ジンファが叫べばジンリンが、福引などで見る手回しの機械を大きくした物をステージに運んで来る。
「よっしガンガン回すぜ!」
「まず出た数字は五番です♪」
ドラゴンシフターが機械を回して二号が読み上げる、ビンゴに参加している子供鯛は様々な表情で結果を待っていた。
大人達は呑気に見守り、子供達は白熱するビンゴ大会。
「やった~っ♪ ビンゴ来た~♪」
「よし、リーチだ♪」
「小哥お願い、次に十五番出してっ!」
「僕、後は七番で三列ビンゴする!」
わいわいはしゃぐ子供達、パーティー会場が陽の気で満ちて行く。
「皆確実に一列はビンゴする設計ですから、後は己の天運のみです」
「よっし、これがラストだとりゃっ♪」
そしてドラゴンシフターが最後の手回し操作で、ビンゴは終わりできたビンゴの列の数に応じて追加の紅包のポチ袋を貰う子供達。
「まだまだチャンスはあるわよ、運の次は実力! ドラゴンシフター達がこれから籠を背負うから次は玉入れゲームでゲットを目指しなさい♪」
ジンファが次のゲーム、玉入れを開始する。
「よし、頑張るか♪」
「ええ、親戚の子供達が元気すぎて申し訳ございません」
「いや、将来俺達が自分の子供達と遊ぶ練習だよ」
「なるほど♪ そう思えば、頑張れますね♪」
ドラゴンシフター達は籠を背負うと動き回り、子供達と遊ぶ。
「ほっほっほ、今年も子供達が元気で何よりじゃ♪」
「婿殿が、子供達の相手をしてくれるお陰でのんびり酒が楽しめる♪」
「さあさあ、子供は遊んで大人は飲んで食って英気を養いましょう♪」
大人組は酒を飲みながら、ドラゴンシフター達が子供と遊ぶのを眺めていた。
子供達との玉入れゲームも無事に終わり、変身を解いたドラゴンシフター達。
「ふう、小中学生は元気だな?」
「お疲れ様でした、後は私達も料理をいただきましょう♪」
「どんどん楽しんで陽の気を溜めて放つんだよな?」
「はい、そうする事で人や生き物や土地にエネルギーを与えられます」
「ようするに、陽の気が人と自然に対する肥料になるのか」
「はい、施肥です♪」
「それじゃあ、地球の為にも楽しむか♪」
催しがひと段落して、これでやっと自分達の会社での冬休みが始まると思ったその時であった。
「お義兄さん達、変身して! 空に邪気が出たのっ!」
ジンリンが慌てて立磨達に駆け寄る。
「ああ、敵も盆暮れ正月は休みやがれ!」
「義理事を狙うとは仁義外れですね!」
「いや、俺達ヤクザじゃないからな? いや、妖怪業界の中華マフィアとか言われるけど!」
「大丈夫です、私達は立派なヒーローです♪」
「じゃあ、お後を宜しくしようぜ!」
いつものように掛け合い夫婦漫才をしながら、戦闘モードのメンタルを整える。
「「ドラゴンシフトッ!」」
二人は再度変身すると、春節の飾りつけをされた旧正月モードの金龍合神に乗り込んだ。
『二人共、そのお正月飾りはエンチャントされてるから思い切りやっちゃって!』
「オッケ~♪ ドカンと決めて来るぜ!」
「親戚一同に私達の戦いを見せて、おひねりをいただきましょう♪ ジンリンは配信の用意を頼みます」
『わかった、任せて動画でも生放送で流すから♪』
ジンリンと通信でやり取りしドラゴンシフター達は機体を操作して、紫の雲が広がる空へと飛び立った。
「ほっほっほ♪ そちらから来てくれるとは好都合、我が名は
黒い着物を着た毒々しい紫の肌に赤い瞳の白髪の老人が、霞がかった荒れ地で金龍合神を出迎える。
「やっぱり邪仙か、気合い入れて行くぜ」
「油断せずに行きましょう」
コックピットの中で気合を入れる、ドラゴンシフター達。
「ふん、龍共にしては良い趣味をしておる♪ ならばこちらもロボットで遊んでやろうか出でよ
怪人、
貪狼魔が手足をバンプアップさせ。両手から赤いビームクローを展開し突進する!
「は、こういう時は♪」
「どっしり構えて迎え撃ちます♪」
「光る爪ならこっちも標準装備だ!」
金龍合神も両手から爪を生やし金色の光りを纏わせる。
「上から来ます、
二号がレバー操作を行い、巨大な赤い光のドリルとなって飛んで来た敵を金色に輝く掌を上下同時に打つ事でカウンターを入れる。
金龍合神に弾かれるも空中回転で着地する貪狼魔、互いにまだノーダメージだ。
「敵もさる者だな、燃えるぜ!」
「あちらも仙術と科学を混ぜた技術のようですしね」
「あっちは今度は四つ足か、次は俺だ
ドラゴンシフターが操作し、全身に金色の雷を纏った金龍合神の体当たりと敵の突進が同時だった。
ぶつかり合う両者、激しい衝撃音と上がる土煙。
「おいおい、あいつやるなあ♪」
「一撃をくらいましたか、確かに手強いですね」
立っているのは金龍合神だが、脇腹に切り傷ができていた。
貪狼魔の方は、吹き飛ばされて胸部がへこむなど傷を負うも再度立ち上がる。
「良いな、戦って来て初めて敵が格好良いと思ったぜ」
「邪仙が作ったにしては、良い味出してますねあの敵ロボット」
「ああ、だからこそ負けられないぜ決めてやろう♪」
「ええ、
巨大戦で初めて出会った好敵手、敬意をもって全力で立ち向かうと決めたドラゴンシフター達は必殺の武器を召喚する。
落雷と共に現れた巨大な鉞を大上段に構える、金龍合神。
貪狼魔も手足を地に着けて、雄叫びと共に巨大な頭を持つ狼形態へと変形する。
『見たか、これぞ貪狼魔の最強の形態よ♪ 狼ん食われて死ぬが良い♪』
虚空から機甲真人が笑い、貪狼魔をけしかける。
大口を開けて金龍合神を噛み砕かんとせん、貪狼魔。
「上等、その頭をカチ割ってやる! サンダースマッシュだ!」
「サンダースマッシュ、受けて見なさいっ!」
ドラゴンシフターと二号が同時に叫びレバーを入れる。
敵と同時に金龍合神がジャンプすれば鉞に雷が落ち、落雷を纏った一閃が振るわれ貪狼魔を真っ二つに両断した!
金龍合神が着地すると同時に、爆散する貪狼魔。
「あばよ、良い敵だったぜ」
「敵ながら見事な戦いでした」
敵を弔うドラゴンシフター達。
『おのれ龍共め、次は目にもの見せてくれるわ‼』
機甲真人は虚空に捨て台詞を吐いて、立ち去った。
「さて、俺達も帰るか?」
「はい、宴会で盛り上がりましょう♪」
戦いが終わった事を確認したドラゴンシフター達も機体を操り、帰還する。
「お祖父ちゃんや親戚のおじさん達が、お義兄さん達の戦いを気に入って開発費を沢山くれたから私用のバックルとロボットをデザインして開発に取り掛かるね♪」
戦いを終えて帰り機体を降りた立磨達に、ジンリンが笑顔で近づいて来てべらぼうな事をのたまった。
「はあ? ちょっと、お祖父さま達ジンリンに甘くありませんか?」
「いや、リンちゃんがドラゴンシフター三号になるって事?」
寝耳に水な立磨達、そこにジンファもやって来る。
「面白そうね、良いんじゃない♪ 今回の件で、ロボのパイロットスーツ事業にも手を伸ばせるかもしれないし会社としては商売繁盛は歓迎よ♪」
ジンファが娘の提案にオッケーする。
「ちょっと、職権乱用ですよ二人共っ!」
「お母さんありがとう♪ じゃあ、他の仕事と並行して開発するね♪」
反対するジンリーと喜ぶジンリン。
「おいおい、こいつは春から面倒事だぜ?」
立磨は頭を抱えた。
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