第36話 引っ越しは爆発から
「さて、素材提供はしたし引っ越しだな」
「ええ、リビングの物は式鬼達を使い異界の別荘へ移送済みです♪」
「と言う事は、上はもう終わりか?」
「後は、一階の事務所の片付けだけですね♪」
立磨達は、新基地建設の為に仮住まいへの引っ越し準備をしていた。
仕事のデータなどは電子も紙も本社に送信してバックアップも移してあるので、後は業者を呼んで
パソコンやデスクなどを転居先へ運ぶのみと楽な作業のはずであった。
「結界は解除しておこうか? 引っ越し屋さんがうっかり
「そうですね、結界の設定が悪人や悪心を持つ者で仕掛けたのであり得ないとは言い切れませんからね」
これまで事務所への悪質セールスを含めて敵の侵入を防いでいた、悪人が入り込むと鬼神の力で死ぬと言うデストラップな結界。
他にも、事務所に迷惑メールを送り付けたり迷惑電話をかけて来ようとした者や組織に不幸になる呪いをかける魔術的なセキュリティシステム。
引っ越すからジンリーが事務所の周囲に仕掛けた術を解こうと、指を二本そろえた時であった。
立磨は、外で何かが飛んでくる音を感じた。
「待った、ドラゴンシフト!」
立磨が突如変身して、ジンリーを抱きしめて押し倒しながら床を破り地下の下水口まで潜る!
「ヒャッハ~♪ 金蛇共の巣を爆破してやったぜ♪」
「危険な蛇の巣は駆除しま~す♪」
灰色のネズミの怪人と、背中にバズーカ砲を背負ったバンクラーの強盗獣が瓦礫の前で高笑いをする。
「よ~し、バンクラーの兄弟♪ 奴らの死体を探そうか♪」
「おうよ♪ 見つけたら俺達は大出世だ♪」
怪人達が瓦礫の山に変えた事務所跡へと足を踏み出す。
「そんな日は来ねえよ馬鹿共っ!」
「デスクの運搬と、PCの処理の手間が省けましたね」
「被害届けとか出さないと、保険屋さんもな」
怪人達の侵入と同時に、付近のマンホールの蓋が飛び上がりドラゴンシフター達が飛び出して来た!
「げげっ! 金蛇共が出たっ!」
「畜生、やるしかねえ!」
やったと思ったら、やれてなかった怪人達。
「藪を突いて出されちまったな?」
「他人様の愛の巣を突くとは野暮な、それに私達の土地なのは変わりません!」
「蛇呼ばわりされたなら、藪を突く野暮は始末しないとな♪」
「藪をつついて蛇を出す諺を使ったウィットな漫才です♪」
「それじゃあ、お後を宜しくしましょうか♪」
敵の怪人達に事務所を爆破されても余裕で夫婦漫才を交わす、ドラゴンシフターとドラゴンシフター二号の夫婦ヒーロー達。
「馬鹿にしやがって、蛇共がッ!」
「お前らを殺して幹部に昇格するんじゃ!」
漫才は理解できなくても、馬鹿にされた事はわかった怪人達が二人に襲い掛かる。
「藪を突く野暮なレスポンスですね、ツッコみの勉強が足りません!」
「被害が家だけだったのは、凄いのかショボいのか? まあ、近所迷惑だ!」
華麗に空へ舞い上がり、敵の攻撃をかわすと同時に跳び蹴りを入れるドラゴンシフター達。
「畜生、まだだ! 喰らえっ!」
「こっちもだ、一発っ!」
鼠の怪人が緑色のガスを吐き出し、バズーカの強盗獣は最後の一発だと背中の砲塔から砲弾を発射する。
「そんな物は効かない! 宝珠チェンジ、緑龍フォーム! 薬草乱れ咲っ!」
「宝珠チェンジ、黒龍フォーム! 凍結っ!」
ドラゴンシフターが緑色に、二号が黒色に素早くフォームチェンジする。
そして、毒ガスはドラゴンシフターの突き出した掌から生えて来た複数の薬草が吸収をしながら無効化した上で成長して鼠怪人を縛り上げて拘束する。
二号は迫りくる砲弾を凍結させて止めると、指で突いて砕く。
「「これで終わりだ!」」
ドラゴンシフター達が同時に叫び、止めを刺す。
鼠怪人は口から寄生していた生命体を吐き出して人間の姿に戻り気絶した。
バズーカの強盗獣は二号の蹴りで全身が凍結した後に、五体がバラバラに分解されたのであった。
「さて、鼠の方は下級幹部ですらないから人間に戻したぜ?」
「悪党に人権を取り戻して差し上げるとは慈悲深い、ではこの方には人権を活用していただいて警察で洗いざらい吐いていただきましょう♪」
変身は解かず、元鼠怪人をしっかりと植物の蔦で縛り上げたドラゴンシフター。
鼠怪人の素体の人間は、いかにも小悪党と言うような風体の灰色のスーツを着た頭の毛が薄い中年の男だった。
二号が周囲を警戒し、捕らえた男が口封じをされないように様子を探る。
「よし、まだ口封じはされないから警察を呼ぶか。 人間に戻した怪人は、きちんと警察へ引き渡さないとお金にならないし」
「恐らく、相手の組織としては大した情報は渡されていないから失敗しても口封じをする価値もないと判断されたんでしょう」
ドラゴンシフターが、捕らえた元怪人の男の口に怪人を退治したという証明の睡眠薬が染み込んだシールを張り眠らせる。
二号が警察に連絡して、やって来た警官達に事情を説明して引き渡す。
「さて、瓦礫を片付けてまっさらにしないとな」
「短い間でしたが、お世話になりましたと言う事で行きましょう♪」
ドラゴンシフター達は、瓦礫の山となった事務所を原子分解させて片付ける。
「光の粒子が蛍みたいに天に上がって行くな?」
「成仏して行くようでもありますね♪」
「家も魂が宿るとかいうしな♪」
瓦礫の除去を行うと二人は変身を解除。
ジンリーが電話で業者を呼び、建設予定地として封鎖をしてもらった。
「それじゃあ、買い物してから引っ越しだな」
「新しいパソコンとデスク、その他備品の購入が必要ですしね」
立磨とジンリーは、引っ越し先に運んでもらうパソコンなどを買いに中央通りへと向かった。
「さて、ここが新しい仮住まいか♪ 何か、ドラマの探偵事務所風だな?」
「仮住まいでも良い感じの物件を見つけておきました♪」
港湾地区の倉庫街に来た立磨とジンリー。
二人の前に聳えるのは、黒く四角いシンプルな二階建てガレージハウス。
「私達の新たな拠点ができるまでですが、大事に使いましょうね♪」
「そうだな、この近辺の倉庫って悪の組織とヒーローの戦いで大破とかするし」
「悪の組織の動向を探るのには、便利な立地でもありますよね」
「たしか、正月初めもこの近所で戦いになったしな」
「人工島なので、物流が海から来る以上は仕方ないですね」
「それじゃあ入ろうか?」
「ええ、中の掃除などをしませんとね♪」
「ああ、屋根のある場所で寝られるように頑張るぜ♪」
ジンリーが鍵を開けて、シャッターの隣にあるドアを開けてから階段を上がり立磨達は二階へと上がった。
「うん、こじんまりしてるけど良いな」
「悪霊などもおりませんし、別荘と繋げてテーブルなどを運びこみましょう♪」
ジンリーが黄色い呪符を取り出して壁に貼ると、茶色い木のドアが壁に出現する。
「じゃあ、この
立磨も懐から黄色い呪符を取り出すと、呪符が消えると同時に数体のキョンシー服姿の幽霊達が出現した。
「それではあなた達、宜しく頼みますね
ジンリーが式鬼達に指示を出せば幽霊達が動き出す、一号などの番号は幽霊達が来ているキョンシー服に記された番号だ。
「実体のあるのがキョンシーで、ないのが幽鬼なんだな?」
「はい、今度ジンリンに式鬼の幽鬼達を入れる義体を作らせた方が良いかも知れませんね?」
「それって、漫画みたいに位牌をチップ代わりに核にして入れた人形で魔術的なアンドロイドを作るとか?」
「ええ、概ねその認識で正解です♪」
「その辺は後々で、終わったら式鬼達に手間賃を払おう」
仙術を駆使して引っ越しを終えた立磨達、手伝ってくれた式鬼達には紙銭に加えて饅頭も付けて対価を支払った。
翌日、届いたパソコンとデスクは一階部分に設置してセッティングを行い立磨達は事務所を再稼働させた。
「よし、これで事務所も営業再開だな♪」
「はい、新基地ができるまでですが頑張りましょう♪」
「新い基地は、ビル形式にするんだよな♪」
「はい、イレギュラーズ達の表稼業の店もそこに入れる予定です」
「完成が楽しみだな、定期的に様子を見に行こう♪」
「ええ、見るだけでなく金龍合神で組み立ても手伝いに行きましょうね♪」
「いや、本当にDIY精神が旺盛だな!」
「費用削減にもなり建設作業もできると実績になりますので、一石二鳥です♪」
「俺達のヒーロー道は、何処へ続くのか行き先がわからなくなって来たな?」
「ヒーローも、邪悪と戦うのみでなく何処かのアイドルのように無人島などに村作りができる位のマルチタレント性が求められる時代ですから♪」
新たな仮事務所で作業をしながら語り合う、立磨とジンリー。
後は業者に任せるだけだと思っていた立磨、ジンリーのDIY精神に押されて学校帰りに自分達のロボで自分達の基地の建設にも関わる事になったのであった。
「三階建てで、一階にシャコさんのお寿司屋さんで二階がトラフグさんの治療院とヒョウモンダコさんの美容室が入る予定か?」
ドラゴンシフターに変身し、
機体の通信機で金龍力士二号に乗っている、ドラゴンシフター二号ことジンリーとやり取りを行いながら資材を配置して組み立てていく。
「はい、残念ながら日照権など法令上の都合で断念いたしました」
「うん、断念で良いよそんなタワーマンション規模はいらないからな?」
「いえ、私達に相応しい豪奢な宮殿を建てたかったのですが?」
「いや、俺達の龍宮城は俺が龍王になってから海の底にでも建てよう地上に龍宮城を建てるのは迷惑だからな?」
「今、龍王になられると宣言されましたね? それでは、豪奢な海底での城作りは将来の楽しみにしておきましょう♪」
「あれ、俺なんか不味い事言ったか?」
「いえいえ、不味い事はありませんよ♪ お祖父様がお喜びになられます♪」
「ジンリーのお爺さんか、俺のひい爺さんの件で世話になったからまあ孝行はするよ恩があるんだし」
作業をしながら、将来はヒーローだけではなく龍王もやる事を決めたドラゴンシフターこと立磨であった。
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