第31話 忘年会の激闘

 「イブとクリスマスは、とても素晴らしかったですね♪」

 「ああ、イブは大変だったが楽しかったな♪」 

 「大晦日は、腕によりをかけて年越しのラーメンを作りますね♪」

 「今年もあと数日か、掃除も適度にしているしのんびり過ごしたいよな?」

 「ご主人様、世間ではそれはフラグと言うのはご存じでしょうか?」

 「いや、流石にもう大事件はないと思いたいよ俺は」

 「私もですが、敵と言う物はこちらの都合などお構いなしですからね」


 クリスマスは終わっても、立磨とジンリーの夫婦漫才は終わらない。


 「まあ、警戒するしかないよな? 俺らの仕事って、休み中でも休みじゃないし」

 「ヒーローとは、そういう運命の生き方ですよね♪」

 「それを乗り越えて、俺はこの進路で生きて行くと決めたんだ♪」

 「私がおりますし、将来は子供もできますから家族で支え合って行きましょう♪」

 「俺、家族でヒーローチームをやるのも夢なんだよな♪」

 「叶えましょう、その夢♪ 私達で、ドラゴンシフター軍団を作りましょう♪」

 「ああ、その為にも頑張って金を稼がないと軍備は金がかかるから♪」

 「龍は一万年くらいは普通に寿命はありますから、時間をかけて行きましょう♪」


 フロートシティの事務所に戻り、未來について語り合う立磨とジンリー。


 鬼に笑われようが、二人で未来の夢を描き出したのであった。


 「俺達の夢の為、世の平和と人々の笑顔の為に今年も残り数日頑張るか♪」

 「ええ、年末の悪党大掃除ですね♪」

「悪党の大安売りは、良くないと思う」

 「悪党はこちらが買いたくなくても、事件の押し売りをしてきますからね」

 「代金は武力で払って踏み倒せってか♪」

 「お後が宜しいようで♪」


 和やかに年末を過ごす二人であったが、事務所の電話が鳴り出す。


 「はい、株式会社ロンスターヒーロー事業部です♪」


 立磨が電話に出て応対する。


 「その声は若旦那ですか? ドラゴンイレギュラーズのフグと申します、忘年会お誘いでご連絡をさせていただきました♪」


 電話からフグと名乗る、アニメで聞くような可愛らしい女性の声がする。


 「ああどうも初めまして、そう言う事でしたらジンリーに変わりますね」


 立磨がジンリーと電話を交代する。


 「お電話変わりました、忘年会ですね? はい、参加させていただきます」

 「ありがとうございます、場所はシャコさんのお店で夕方です」

 「わかりました、宜しくお願いします私とご主人様はお酒は無しです」

 「は、はい! 心得ております~~っ!」

 

 ジンリーが電話を切った。


 「さて、会社のイベントでの忘年会はクリスマスで終わりましたが今宵はイレギュラーズ達の忘年会へと参りましょう♪」

 「いや、フグの人が何か怯えてなかった?」

 「フグは気弱な所がありますが、針術の達人ですから心配ありません♪」


 フグを心配する立磨にジンリーが笑顔で答える。


 「まあ、それなら良いか? 会費とか大丈夫?」

 「お任せ下い、私費できっちり支払います♪」


 ジンリーの笑顔に立磨は考える事を止めた。


 定時で業務を終えると、戸締りをしてから立磨とジンリーはシャコの営む寿司屋へと出かけた。


 人工島のフロートシティも忘年会シーズンのようで、中央通りは賑わっていた。


 「こういう時だからこそトラブルには気をつけないとな」

 「ええ、気のゆるみが事件を招きますからね」

 「俺らの周りを人が避けるのは、何かの術?」

 「はい、人避けの術です♪ 私達の時間を邪魔されたくはないので♪」

 「使用動機はともかく仙術、本当に便利だな?」


 ジンリーの術で、トラブルを避けてシャコ八へとやって来た立磨達。


 「ごめん下さい?」

 「お招きに預かり参上いたしました♪」


 二人が店に入る。


 「へい、らっしゃい♪ 後はヒョウモンダコで最後ですね♪」

 「寿司だけでなく。ラーメンもありますよ♪」

 カウンターの中から、シャコの大将と海亀が笑顔で出迎えてくれた。


 「おお、若旦那達いらっしゃい♪」

 「お二人とも、いらっしゃいませ~♪」


 グレイの作業服姿のインスマス顔の会社員のナマズ。


 黒髪ロングに瓶底眼鏡が特徴の、大人しそうな雰囲気の白い服の女性がいた。


 彼女がフグかと立磨は声で気が付く、それと同時にジンリーが腕を組んで来た。


 「フグ、ご主人様は渡しませんからね♪」

 「いや、大丈夫だからなジンリー!」

 「ひ、ひいっ姫が怖い! 恐れ多いです!」


 嫉妬するジンリーと驚くフグに呆れた立磨であった。


 「まあまあ、座って下さいよ♪ 後はヒョウモンダコが来れば始まりです♪」


 ナマズが場を宥める。


 「そうですね、宴を楽しみに待ちましょう♪」

 「じゃあ、座らせていただきます:」


 ジンリーと立磨が席に着く、あと一人が来れば楽しい忘年会の始まりだ。


 「あ、ヒョウモンダコさんからです!」


 幹事らしいフグが、なり出した自分のスマホを取って出る。


 「フグちゃん? そっちに、若旦那達も来てるならエマージェンシ~~ッ!」

 「ちょ! 場所は何処ですか! ヒョウモンダコさん!」

 「港湾地区よ! GPSで追跡して!」

 「わ、わかりました! 皆さん、事件です!」


 フグがヒョウモンダコとのやり取りを終えて仲間達に情報を伝える。


 「……行きましょう、宴会の邪魔は許せません」

 「だな、んじゃ全員で行くか?」


 立磨とジンリーが立ち上がる。


 「それじゃあ、寿司を握る前に悪党をしめますか」

 「あいつらは、煮ても焼いても食えないけれどね」


 シャコと海亀もカウンターから出てくる。


 「ほ、本気出しますよ~!」

 「私も、がんばります!」


 ナマズとフグも意気込んで店を出る。


 ダブルドラゴンシフターと、ドラゴンイレギュラーズの合同作戦が始まった。


 一方、夜の港湾地区では黄色に黒のブチとまさに豹の様なカラーリングをしたマスクとタイツが一体化したスーツを着たアメコミヒーロー風の姿になったヒョウモンダコが逃げ回っていた。


 「何処の怪人だゴラ~~~ッ!」

 「チョッパーなめんな~っ!」

 「ちょっと、誰が怪人よっ! この、チンピラ共がっ!」


 マシンガンを撃って来る怪人の銃撃を躱しながら、掌から猛毒の墨を発射して反撃するヒョウモンダコ。


 「うばっ!」

 「ぎゃっ!」

 「タコを舐めんじゃないわよ、外道が!」


 ヒョウモンダコの毒の墨で死んで行く、一般の雑魚怪人達。


 夜の港での不審船の調査中、チョッパーの暗躍を突き止めたヒョウモンダコ。


 不審船への潜入前に、敵の下級怪人とエンカウントした彼は調査を断念。


 戦闘しながらの撤退中の彼の前に現れたのは、全身が金色の装甲で覆われた怪人。


 マッシヴな金色の騎士鎧風の怪人の頭部から、熊がモチーフの動物だとわかる。


 「貴様、日本の怪人ではないな?」

 「まさかこんな所に金バッヂの幹部が出るなんてね、瞬間移動でもして来たの?」

 「ほう、詳しいな? 我が名はベアゴールド、チョッパーの上級幹部だ!」


 月明かりの下、ベアゴールドがヒョウモンダコに対して金の斧を取り出して大上段に振り上げた時であった。


 「そこまでだ、チョッパー!」

 「我らドラゴンシフターが相手です!」


 空からベアゴールドとヒョウモンダコの間に割り込んで来た、黄金の救いの手。


 主人公とヒロインコンビのヒーロー、ダブルドラゴンシフター。


 「助けに来たぜ、ヒョウモンダコ!」

 「はい、タコさんに援軍の出前一丁!」

 「げげ、あれは色からして幹部怪人っ!」

 「怖いけれど、怯んでられません!」

 「ちょ、あんた達! もう、マジでサンキュ~♪」


 ヒョウモンダコの後ろから、悪の組織の怪人と似た風体の戦闘形態に変身したシャコや海亀にフグにナマズのドラゴンイレギュラーズが駆けつける。


 「何処の組織の怪人共だ貴様ら、そして賞金首のドラゴンシフター達だと?」


 理解不能な状況に陥るベアゴールド。


 「誰が怪人よ! 私達は中国の海産物ヒーローチーム、オーシャンファイブよ!」


 仲間達とヒョウモンダコが、存在を知られた時に名乗る表の素性を叫ぶ。


 ドラゴンイレギュラーズである事が秘密で、ヒョウモンダコ達は擬装の為に中国本土でオーシャンファイブとしてヒーローの国際ライセンスを取得していた。


 「俺達、ドラゴンシフターが雇った助っ人ヒーローの皆さんだ!」


 ドラゴンシフターも、あくまで別組織風に叫ぶ。


 目の前の敵の目と組織の意識を、サポートメンバーではなくメインの自分達に向ける為だ。


 「ヒーローは助け合いですからね、臨時雇用させていただきました♪」


 二号も乗っかる。


 「海外の有象無象を傭兵に雇ったか、忌々しい!」

 「は、有象無象かどうかはわからんぜ♪」


 敵に対して、こちらは緑の甲殻類の怪人にしか見えないモンハナシャコ。


 シャコが動くと知ったドラゴンシフター達は、バックステップで跳躍し移動。


 味方であるヒョウモンダコ達の所へと、エンゲージする。


 主君達への誤射の心配が無くなったシャコ。


 「シャコのプラズマパンチを喰らえ!」


 と、ベアゴールドへ拳を突き出し、プラズマ弾を発射した!


 「俺達をなめるなよ、ナマズクエイク!」


 続けてナマズが地面を殴り地震を起こせば、ベアゴールドのバランスを崩す。


 この地震により、シャコの放ったプラズマ弾がベアゴールドに命中した。


 「ぐはっ! おのれ小癪なボンクラ共めっ!」


 不意打ちを受けて膝をつくベアゴールド、だがダメージは軽く装甲に焦げ目がついた程度で立ち上がる。


 「私達だってスペシャリストです!」


 魚人間となったフグことトラフグも、白い胸部から毒の棘を発射した!


 「甘いわっ! その程度の針、どうと言う事はない!」


 避ける事はせず受けた、ベアゴールド。


 彼の言葉通り、その装甲は貫けなかった。


 「良し、後は俺達が動きます!」

 「皆さんは撤退を!」


 ダブルドラゴンシフターが、仲間達を逃がす。


 「ふん、あんな有象無象はどうでも良いわ! 覚悟しろ!」


 ドラゴンシフター達の計画に乗せられたとも気付かないベアゴールド。


 ヒョウモンダコ達を見逃すと、斧を剣道の中段に構えて刃から電撃を放出する!


 「「とうっ!」」


 ヒーローらしく、アクロバティックにバク転で回避するドラゴンシフター達。


 「危ね、こっちも行くぜ二号!」

 「はい、ダブルファンロンバーストで行きましょう!」


 二人で背中合わせに体を構え突き出した掌から金色のビームを放つ!


 「ぬうん! 受け止めて返して見せる!」


 ベアゴールドがドラゴンシフター達の光線を斧で受ける!


 「耐えるなら出力増加だ!」

 「一発のビームで駄目なら、さらに強力なビームで押し通します!」


 大地からエネルギーを汲み取り、ビームの出力を上げるドラゴンシフター達。


 彼らのビームが、ベアゴールドの斧を粉砕し敵の本体を海へと突き飛ばした!


 ドラゴンシフター達はその場から動かず、文字通りマスクの目を光らせて敵の生命を探知する。


 「ふん、中々やるではないか賞金首共!」


 海から飛び上がって来るベアゴールド、胸部の装甲にひびが入り焦げ目がついた状態になっていた。


 「ち、やっぱりくたばらなかったか!」

 「敵のダメージは、ライトウーンズと言う位の負傷度合ですね」


 ベアゴールドが海から上がて来た所で、次の必殺技を打つべく呼気を整えてエネルギーを練るダブルドラゴンシフター。


 「こちらも武器以外にも技はある、喰らえ!」


 全身に電撃を纏い突進して来るベアゴールド。


 「ならばこちらは!」

 「ダブルファンロンエルボーです!」


 それを迎え撃つべくドラゴンシフター達も、同時に必殺技を裡門頂肘の形で出す!


 両者の技がぶつかり合い、爆発が起こり双方が吹き飛ぶ!


 「はい、キャッチ♪ 今度こそ本当に撤収よ!」


 逃げたはずのヒョウモンダコが現れ、両腕から十六本の触手を生やしてドラゴンシフター達を受け止める!


 「むむっ! おのれタコ男、邪魔する気か!」


 今度は全身にダメージを受け、ヘビーウーンズ状態のベアゴールドがゆらりと起き上がり叫ぶ。


 「邪魔するわよ、お正月には早いけど墨でも喰らいなさい!」


 ヒョウモンダコがマスクを開きタコの口を出して、ベアゴールドに毒の墨を吐く!


 「ぐわ~~っ! おのれ、今度会った時は覚えておけよ!」

 「知らないわよ! アディオ~ス♪」


 毒の墨が顔に掛かり再び倒れるベアゴールドを背に、ドラゴンシフター達を抱えて逃げるヒョウモンダコであった。


 「……うっ、ここはシャコ八か?」

 「不覚を取りました、皆さんはありがとうございます♪」


 立磨とジンリーは、シャコ八の店内で目を覚ました。


 「ふう、良かったぜ♪ さあ、忘年会と行きましょう♪」


 カウンターからシャコが笑う。


 「姫も若旦那もお疲れ様でした、ラーメンも寿司も沢山食って下さい♪」


 同じくカウンターから海亀が語りかける。


 「お二人のダメージは、私が回復させました♪」


 フグが立磨達に治療をした事を語る。


 「お二人が無事でよかったです♪」


 ナマズが安堵の声を上げる。


 「安心して、あの熊は二人のカウンターで相当ダメージを負ってるはずだから♪」


 ヒョウモンダコが敵について語る。


 「そうか、来年は鍛えてリベンジしよう♪」

 「ええ、次は不覚を取ることなく勝って見せましょう♪」


 立磨とジンリーはリベンジを誓った。


 「それじゃあ、若旦那達の来年の抱負が決まったし忘年会の始まりよ~♪」

 「ヒョウモンダコさんが仕切らないで下さい~っ!」


 強敵とのエンカウントを乗り切った立磨達は、忘年会で英気を養うのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る