第30話 クリスマスと忍者 後編
「ち、火災が怖いから水で行くぜ青龍フォーム!」
「前の敵に集中し過ぎるとは不覚、名誉挽回します!」
ドラゴンシフターは青龍フォームにチェンジして、二号と共に展望台に似た巨大な白いドーム型をしているサンタ達のアジア基地へと突入する。
敵の爆破により、ドームの屋根に穴の開いたサンタ達のアジア基地。
内部は広く、基地の中央部に囲われる形でプレゼントなどで飾り付けられた巨大なクリスマスツリーが御神木のように設置されていた。
「くそったれ、今夜は配達だってのに邪魔をするな!」
普段はフォークリフトやパワーローダーで、プレゼントをトナカイが牽く橇へと積み配送する係の赤サンタ。
基地内のあちこちで鍬を持つ手を剣に変えならぬ、仕事道具を武器に変えて作業用のロボットや重機で赤サンタは邪悪な黒装束の宇宙の忍者達と対決する。
「サンタは強いってのを教えてやるよ、エイリアンども!」
基地の内部を防衛する黒サンタ達も、斧を武器に敵の忍者と切り結ぶ!
自分達の基地と夢と希望を守る為に、彼ら職域を越えて基地の屋根に穴を開けて侵入して来た敵の忍者達と交戦していた。
「プレゼントを守れ! 奴らにツリーを破壊させるな!」
プレゼントを、人々の夢と希望を守るべく武器を手に取り邪悪に抗うサンタ達。
ツリーが子供達の願いを受信し、果実の如くプレゼントを木に実らせるのだ。
これを壊されたら、アジア地域一帯のクリスマスが滅んでしまう!
「悪党ども、水でもくらえ!」
「龍の爪で裂かれなさい!」
ドラゴンシフターの二人がエントリーし、サンタ達に加勢して下忍達を水流や格闘で打ち倒して行く。
「おお、ヒーローが来てくれたか!」
「我らも負けてはおられんぞ!」
増援に勇気づけられたサンタ達は更に奮起し、斧やパワーローダーで擬態を解いて怪人化した敵軍に立ち向かう!
「宝珠チェンジ! まだ火災が起きてなくて良かったぜ♪」
「ええ、次は私が宝珠チェンジです!」
ドラゴンシフターが青から金色のフォームに戻れば、次は二号が黑の黒龍フォームに変わって冷気を纏った攻撃を繰り出して敵を氷漬けにしては粉砕して行く。
「いけません、ツリーに敵が!」
「よっしゃ、体伸ばしてカバーリングするぜ!」
二号がツリーを狙う敵に気付けば、ドラゴンシフターが龍形態に変形して飛んで行きツリーをカバーリング。
金色の鱗の装甲が敵の銃弾もビームも弾いて守る!
「効かねえよ♪ これが攻防一体のドラゴン戦法だ!」
敵の攻撃を防ぎ切り、ドラゴンシフターが吠える。
「……ならば、我が竜殺しの刃も防げるかな?」
「何っ! やべえっ!」
突如ドラゴンシフターの頭上から振り下ろされる刃、体をうねらせて避けるも尻尾が切り下ろされる!
「ぎゃっ! ヤバかったっ!」
「……ふん、これが本当の尻尾切りか」
敵に下ろされて霧散化するドラゴンシフターの尻尾。
龍から人型に戻り着地するドラゴンシフター、彼の元へ二号が駆け寄る。
「ゲームでドラゴンは斬ってきたが、自分が切られる側になるとはな!」
「尾ならまだ問題なしですが、ご主人様の美尻を傷つけるとは許せません!」
「ふん、ゲーム脳が! 我が名は上忍、暗剣殺のデバ!」
ダブルドラゴンシフターがツリーを背に向き合う敵の名はデバ、全身を漆黒の鎧に包んだ凶星忍軍の幹部怪人。
特徴的なのは、兜の飾りが出刃包丁のような刃物になっている事で先ほどドラゴンシフターを襲った刃物はこの兜飾りだ。
「ちっ、こっちは三枚おろしもかば焼きもお断りだぜ!」
「ええ、その凶刃を砕いて見せましょう!」
ダブルドラゴンシフターが背中合わせで構え、全身から金色のオーラを放出する。
「ならば二匹丸ごと開きにしてくれる、暗黒忍法・乱れ出刃っ!」
出刃の全身から、無数の黒いエネルギーの刃が発射される。
「宝珠チェンジ緑龍フォーム、無限植林っ!」
「宝珠チェンジ白龍フォーム、竜巻天幕っ!」
ドラゴンシフターが緑色に変わり、瞬時に自分達の前に森を生み出す。
二号は白にフォームチェンジして竜巻の壁を張って敵の刃を防ぐ。
「ふむ、これは防ぐか面白い♪」
フルフェイスの兜の下でデバが笑う。
「ち、こっちの手口を見て実力を計れてる!」
「ですね、ご主人様は緑のままでお願いします自動再生効果がありますので」
「了解、じゃあ反撃と行こうか♪」
今度はこっちの番だと、ドラゴンシフター達が攻めに行く。
「蔓の鞭をくらえっ!」
「そんな物は斬れば良い♪」
「切ったらいけない木もあるんだよ♪」
「ぐわっ!」
ドラゴンシフターが掌から生み出した、奇妙なコップのような花の咲いた長い緑の蔓の鞭。それをデバが花弁ごと切れば花弁から液体が漏れデバの体を酸が灼く!
「あれは強化したウツボカズラの酸です、ファンロンキック!」
「どわ~~っ!」
ドラゴンシフターが搦手で攻め、二号が光り輝く足で飛び蹴りをかます!
二人の攻撃で基地の壁に打ち付けられたデバ!
「おお、やるな若いの♪ こっちも援護するぞ!」
敵の兵達を倒したサンタ達が、デバに対してベルの付いたクリスマスリースを突き出して鳴らす!
「ぐわ~~っ!」
サンタ達が鳴らしたリースのベルが生み出したのは超音波、その振動と衝撃がデバの装甲を越えて内臓を痛めつける!
「少し遊びが過ぎたか、今宵はここで退いてやる! だがただでは帰らん!」
忌々しげにデバが掌からボールを取り出し、投げると同時に姿を消す。
「あれ、もしかして怪獣兵器か? 閉じ込めるぞ!」
「はい、壺中天フィールド!」
デバを追いかけたドラゴンシフター達が、投げられたボールが召喚アイテムだと判断して自分達ごと異空間へと取り込む!
ギャオ~~ン! と雄叫びを上げ、水墨画のような世界に現れたのは一匹の怪獣。
灰色の肌をした二足歩行の象と言えるが、頭頂部にはトナカイの角。
広い耳の半分が、イカの触手のような物が蠢く異形であった。
「正気度減りそうな怪獣だな、生身戦の次は巨大戦か!」
「お約束ですが、金龍合神を呼びましょう!」
だが、どんなに敵が異形でも巨大でもドラゴンシフター達は退かない。
「「
ドラゴンシフター達が、社交ダンスのように向き合い手を取り合って叫ぶ!
異空間の大地が割れて、二体の金色のスーパーロボットが二人の背後に出現した。
二人がそれぞれの北に乗り込むと同時に、敵が突進して来るっ!
「よっと!」
「合体の邪魔をするとは無粋ですね!」
二体のスーパーロボット、金龍力士一号と二号が突進を避けて呟く。
「じゃあ、改めて合体するか♪」
「はい、一つになりましょう♪」
「「
胃空間の中に銅鑼の音が鳴り響くと、怪獣はその音に悶え苦しみ動きを止めた。
敵の怯む隙を突いて合体を遂げた金の龍の頭を双肩に乗せて金の龍の頭を兜にと三つの龍の頭を持つスーパーロボット、金龍合神が完成する。
「よっし、ここからは俺達のターンだ♪」
「帰ったら、船上でクリスマスパーティーです♪」
楽しいパーティーの為、本日最後の勝負に挑むドラゴンシフター達。
気を取り直した怪獣が、両耳の触手を槍のように伸ばして突き立てて来る!
「甘いですっ! 龍頭鉄拳弾っ!」
ドラゴンシフター二号が機体を操作すると、金龍合神の双肩の龍頭が拳へと移動し拳ごと敵に向かい発射された!
その一撃は、敵の触手を粉微塵に破壊し本体を殴り飛ばして戻って来る。
「よっし♪ 来い、
今度はドラゴンシフターが叫んで操作をすれば、落雷と共に金龍合神の手に必殺の武器が天から降臨する。
それは鉞、古代中国の王権の証であり断罪の処刑道具。
「止めだ、必殺・
金龍合神が稲妻の如き速さで突進し、黄金の雷を纏った鉞を怪獣へと振り下ろし両断した。
断末魔の悲鳴を上げる事も出来ず、怪獣は断ち切られて消滅した。
「これにて本日のお仕事は終了ですね、お疲れ様でした♪」
ドラゴンシフター二号が周囲の生体反応を、機内のセンサーで調べて確認する。
「よっし、お疲れ様♪ 後はサンタさん達に任せて、俺達はパーティーだ♪」
ドラゴンシフターが喜びの声を上げる。
こうして、今年のアジア地域のクリスマスはドラゴンシフター達とサンタクロースにより守られたのであった。
ドラゴンシフター達は機体から降りると、送還の魔法で金龍合神を工場へと送り返して現実空間へと帰還する。
「おお、ヒーロー達が戻って来たぞ♪」
「メリークリスマス♪」
「ケーキやチキンは食って行くかい?」
現実空間での戦闘も無事に終わったようで、サンタ達に出迎えられる二人。
「お疲れさまでした、俺らは俺らでパーティーに行くのでお先に失礼します♪」
「メリークリスマス、プレゼントの配達頑張手下さいね♪」
ドラゴンシフター達は、サンタ達に挨拶をしてから基地を出て龍の姿に変形して夜空へと浮き上がる。
「ふう、尻尾切らるとかヤバかったぜ!」
「厄介な相手ですが私達なら勝てますよ♪」
「ああ、来年も鍛え頑張るぜ♪」
そう言い合いながら空を駆けて、香港の海の上まで戻る二人。
二人が戻ると色取り取りの出迎えの花火が盛大に打ち上げられた。
「皆、パーティーの主役のお帰りよ~♪」
帰還したドラゴンシフター達を空に見つけたジンファが叫ぶ。
二人が人の姿に戻り甲板の上に降り立ち変身を解くと、スタッフ達により盛大なシンバルと銅鑼の音でがドラドラゴンゴンと打ち鳴らされて立磨達の帰還は歓迎された。
「た、ただいま帰りました」
「パーティーはこれからのようですね♪」
会社の仲間達に帰還の挨拶をする、立磨とジンリー。
「お姉ちゃん、お義兄さん♪ お帰り♪ はい、クラッカー♪」
ジンリンがやって来て、立磨達にクラッカーを渡す。
「二人が帰ってきた所でそれじゃあ、メリ~クリスマ~ス♪」
「メリークリスマス♪」
「メリークリスマスですね♪」
社長であるジンファの号令で、全員がクラッカーを鳴らす。
再び銅鑼とシンバルが鳴り響き、花火が上がればヒャッハーと言う歓声が上がる。
「さあ、忘年会も兼ねてるから元気に飲み食いしましょうね~♪」
「「オ~~~ッ♪」」
ジンファがお高いドンペリの瓶を抱えてのコールにレスポンス。
盛大に蓋が割られる巨大な日本酒の樽や中国酒の瓶、酒に群がるのは虹色のちゅか服姿の成人済みの龍達。
立磨とジンリーのカップルとジンリンと未成年組はジュースやお茶でケーキやチキンなどの料理を味わう。
「メリ~クリスマ~ス♪ お義兄さん、食べて食べて♪」
「ジンリン、それは妻である私の役目ですよ?」
「おおう、二人共ありがたくいただくぜ♪」
言い合うジンリーとジンリン姉妹に両サイドから、ごちそう攻撃に会う立磨。
ここに今、大人組の中でドンペリを瓶でラッパ飲みしてる社長のジンファが絡んでこなくて良かったと思った。
「
「
黄家の親戚の子供達が立磨達に近づいて来る、ジンリー達の従兄弟に当たる彼らと初対面した立磨。
「ああ、宜しくな♪」
義理の従兄弟達になる子供達に挨拶をする立磨。
服の色が赤とかなのは、自分達の鱗の色に合わせているんだなとわかった。
彼らとも飲み食いをして交流した立磨、船室から運ばれて来た巨大ケーキを船のスタッフに切り分けてもらい皆で分けて食べる。
「そうだ、プレゼント?」
「ご安心下さい、手に入れております♪」
プレゼントについて思い出した立磨にジンリーが微笑み、術で姿を変える。
金で出来た蜜柑の髪飾りを付けて、黄龍が描かれた金色のチャイナドレス姿になったジンリー。
「おお、百万ドルの夜景より綺麗だぜジンリー♪」
「ありがとうございます、クリスマスプレゼントは私です♪」
「我愛你、喜んでいただくよ♪」
衣装を着替えたジンリーをお姫様抱っこする立磨、クリスマスはカップルの日でもあるらしいから恥ずかしがらない。
囃し立てる参加者一同と打ち上がる花火、夜空には酒に酔って人間の姿から変化して空に舞い踊り出した赤から紫迄の虹の七色の巨大な龍達。
立磨とジンリーのヒーロー生活一年目のクリスマスは、とても派手な物となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます