第26話 期末試験、実技あり

 「いよいよ今日から試験期間ですね!」

 「ああ、一般教科は何とかなると思う」

 「苦手な理数系科目も、私が家庭教師として頑張りましたしね♪」

 「おう、乗り切るぜ!」


 朝、住居でジンリーと朝食を摂りながら語る立磨。


 鶏肉粥を食い終えて、気分を落ち着ける。


 「それでは、行ってらっしゃいませ♪」

 「ああ、行ってきます♪」


 食事の片付けや身支度をして登校する立磨。


 教室では試験機関ともあり全員が出席し、静かに机に向かい問題に挑む。


 昼休みでも、各自が参考書片手に食事と静かであった。


 そんな感じで、その週の三日ほどは筆記試験に皆が真剣に挑んだ。


 四日目、この日からは実技試験。


 「筆記試験、お疲れ様でした♪」

 「ああ、悪の怪人よりも手ごわかったよ」

 「自己採点の結果から、赤点は免れてると思いますよ♪」

 「うん、ジンリーのおかげだぜありがとう♪」

 「無理に高い成績を狙わず、クリアできる点数を取ればいいのです♪」

 「後は実技だ、こっちの方が本番だぜ!」

 「ファイトです、ご主人様♪」


 家でジンリーとの、いつものやり取りを終えて登校する立磨。


 教室では、筆記試験から解放された生徒達の顔でどことなく明さが増していた。


 「ヒーローにとっては、実技こそ本番だな♪」

 「確かに、こっちの方が気が楽だな」


 男子では委員長と徹が語り合う。


 「一般校から転校してきたのだが、この学校はそういう物なのか?」

 「私も体動かす方が頭が楽♪ それと垣花さん、勉強見てくれてありがと~♪」


 女子では春原さんと垣花さんが語らう。


 「たっつん、一緒に補習受けような♪」

 「いや、お前も筆記頑張ったんだろ?」


 立磨は虎吉に肩を叩かれていた、立磨は理数系が苦手なだけで頭は悪くはない。


 のだが、友人達からは勉強が苦手だと思われていた。


 「実技とは一体、何をやるんだろうな?」

 「普通なら、模擬的な事件の解決とかなんかじゃないかな?」

 「大丈夫っしょ、俺は垣花さんに協力するぜ♪」


 春原さんと垣花さんの会話に虎吉が混ざりに行く。


 「冬だけだど春が近いか?」

 「ま、虎は置いておいてマジで読めねえな?」


 それを眺める委員長と徹。


 「赤点で補習は避けねば、冬の仕事に差し支える」


 立磨は、友人達を気にしてはいられなかった。


 「日高君、大丈夫か?」

 「たっつんだけ、何か空気重くねえ?」

 「もしかして、会社がブラックだとかか?」 

 「日高君、心配だよね? 尻尾出てるの気付いてないし?」

 「外資系の企業勤めは、色々あるのだろう」


 友人達は、立磨を案じていた。


 教室にクリストファー先生が入って来る。


 「皆、筆記試験はお疲れ様♪ 実技試験だが、各自それぞれが依頼を受けて来て解決してもらう実地形式となった」


 先生が人数分の書類を取り出す。


 「質問です先生、それは試験期間中に終わる物なのでしょうか?」


 垣花さんが手を挙げて質問する。


 「ああ、その件に関しては問題ない♪ 案件はどれも、最短一日で終わる程度のものばかりだ♪ 悪の組織の事件の調査などではない、民間人の雑務程度だよ♪」


 先生が答えて、書類を配る。


 書類を配られた者達は、それぞれが悲喜こもごもな顔をしていた。


 「俺が割り振られたのは、隣の島の怪獣駆除かラッキーだな♪」


 立磨は、自分に振られた仕事の内容を確認すると教室を出ていった。


 変身して空を飛び、現地の役場前へと着地する。


 「ドラゴンシフターです、怪獣の駆除に参りました」

 「ああ、初めまして役場の者です! 山で、キョンが怪獣化して家畜や畑を!」

 「わかりました、直ちに取り掛かります!」


 依頼人は、眼鏡をかけた闇龗七三分けにスーツ姿の男性の役場の人。


 役場の人が示した方向には、漆黒の肌をして頭部がドラゴンのようになった鹿の仲間のキョンがベースの四つ足の巨大怪獣がジャンプした姿であった。


 「やべえっ! 金龍合神を呼ぶ時間がない、行くぜっ!」


 ドラゴンシフターが、巨大なメタリックな金の龍へと変形して空を飛んで行く。


 「地上の畑や家畜小屋が壊滅か、これ以上被害は出させねえ!」


 空を飛ぶと同時に視界に入った被害状況を見たドラゴンシフター。


 跳躍した敵に対して、高速で飛んで体当たりと同時に敵の体にグルグルと巻き付いて締め上げる!


 「喰らえ、こいつが文字通りのドラゴンチョークだ!」


 細長い龍の体を活かした締め技だ。


 ドラゴンシフターの締め付け攻撃に怪獣も苦しみ、もがきながらドラゴンシフターに噛みつくがドラゴンシフターの鱗は貫けなかった!


 「顎の力が弱いぜ、噛みつきってのはこういうんだ! ファンロンバイトッ!」


 金色に光輝く龍の牙で、ドラゴンシフターが敵に嚙みつき返して息の根を止めた。


 怪獣を倒したら、役場の駐車場が広かったので安全を確認しながら着陸。


 人型へと戻ると、役場の人がやってきて驚いた。


 「あ、ありがとうございます! それでは、証拠の撮影をして課題達成と報告させていただきます!」

 「いえ、農家の方の被害の調査などはお願いいたします」

 「は、それはこちらの仕事ですから! 怪獣の遺体の方は、処理もお願いしたいのですが如何でしょうか?」


 役場の人から、怪獣の死体処理を頼まれるドラゴンシフター。


 「わかりました、お任せ下さい♪ 壺中天フィールド!」


 ドラゴンシフターが、敵を異空間に閉じ込める機能を使いあっさりと怪獣の死体を片付けて見せると役場の人は顎が外れるほどに驚いていた。


 こうして、ドラゴンシフターは期末試験を筆記も実技も無事にクリアした。


 異空間に閉まった死体は、後程ジンリーと一緒にしっかり食べ切った。


 フロートシティにある学校に戻り、職員室でクリストファー先生に証明書を提出した立磨。


 「筆記は苦労したが、もしかして実技は俺が一番でクリアですか?」

 「ああ、流石だな♪ 後は、筆記の結果が出るまではしゃがないようにな」

 「うっす、自重します」


 嬉しかったが、先生に釘を刺されて気を引き締める立磨。


 立磨が帰ろうかと思った時、職員室にスピーカーから放送が入った!


 「フロートシティ警察から応援要請です、署内の交通安全教室をクライゾーンの新幹部が襲撃との事!」

 「先生! これは受けてる奴の試験とは関係ないよな? 助けに行くぜ!」

 「勿論だ、行ってこいっ!」


 立磨はドラゴンシフターに変身して、職員室を飛び出して空へと飛び上がった。


 穏やかな午後の時間。


 フロートシティ警察署の駐車場では、子供向けの交通安全教室が開かれていた。


 「皆♪ 横断歩道を渡る時は、どうするのかな?」


 プリティジャスティスが、参加している小学生達に優しく尋ねる。


 「馬鹿め、貴様らに安全などはな~~いっ!」


 突如警察署の屋上から響き渡る、渋い中年男性の声!


 「何者だっ! 君達は逃げてっ!」


 プリティジャスティスが上を見上げつつ子供達を逃がそうとする。


 「子供達は任せて下さい!」


 参加していた婦警や警察官が、子供達を守りつつ避難させる。


 「我が名は、テツベンダー! 死した相手にも鞭打つ苛烈将軍かれつしょうぐんよ!」


 オールバックの黒髪に青白い肌にカイゼル髭、緑色の軍服に黒ブーツと軍人風の怪人テツベンダーが名乗りを上げる。


 その名の通り、奴の武器は片手剣のようだが刃の部分が鉄の棒の鉄鞭てつべんだ。

 「垣花流魔法拳法、プリティジャスティスが相手だ!」


 プリティジャスティスがテツベンダーへとジャンプして、殴り掛かる!


 「チェリャ~~~ッ!」


 テツベンダーも奇声を上げてジャンプし、鉄鞭を振るう!


 空中を舞台に繰り広げられる鞭と拳のぶつかり合い!


 「吾輩の鉄鞭は、もう一本あるんである!」

 「ぐわ~~~っ!」


 競り合う拳と鉄鞭の対決は、テツベンダーが二本目の鉄鞭を振るい出した事で一変しプリティジャスティスが地面に叩き落とされた。


 「追撃なのであ~るっ!」

 「させるかよ!」

 「お助けに参上です!」


 其処へ割り込んだのはドラゴンシフターと二号!


 ドラゴンシフターがテツベンダーを蹴り飛ばし、二号がプリティジャスティスへとか駆けつけて光を当てて回復させる。


 「がはっ! 貴様らは忌々しい神の使徒共っ!」

 「おう、てめえらの敵だ!」


 着地するテツベンダーとドラゴンシフター。


 「プリティジャスティス様、お加減は?」

 「ありがとう、まだ痛むが体は大丈夫だ」

 「この場は、我々に任せてお戻りください♪」

 「悔しいが、お願いする!」


 二号がプリティジャスティスに撤退を促すと、彼女は従い立ち去った。


 「小娘は逃げたか、まあ貴様ら龍共の方が首の価値は高い♪」


 テツベンダーがニヤリと笑う。


 「悪いが、俺達二人なら負けはしない!」

 「叩きのめさせていただきま!」


 ドラゴンシフターと二号が背中合わせに構える。


 「ならばこちらも変身だ♪ デ~モアップ、なのである♪」


 テツベンダーが黑い仮面を虚空から取り出して顔に付けると、全身に角ばった黒の甲冑を身に纏った。


 「そっちも変身か、上等だ!」

 「敵の胸に、戦車のような砲塔が生えました!」

 「喰らえ我が主砲、ファイエルなのである!」


 テツベンダーが胸から方針を出して、漆黒のビームを発射した!


 「「ダブルファンロンバースト!」」


 それに対してダブルドラゴンシフターも、掌を突き出して金色のビームを放出!


 光と闇がぶつかり合い、爆発して相殺される!


 「ぶはっ! 我が主砲が引き分けたのである!」

 「ちっ! マジか!」

 「これは、少々手間取りそうですね?」


 互いの攻撃の爆発に耐える両者、ドラゴンシフター達は追撃の為にオーラを練る。


 だが、突如テツベンダーの鎧が粉々に弾けた!


 「何と、試作品が持たなかったのである! 撤退であるっ!」


 鎧がはがれたテツベンダーは、虚空に黒い穴を開けて逃げようとした。


 「逃がすか馬鹿野郎っ!」

 

 ドラゴンシフターは、逃すまいと練り上げた気を光の砲弾にして発射する。


 「吾輩、自分の言葉は撤回せんのである!」


 黒い穴を動かして、ドラゴンシフターの攻撃を吸い込むテツベンダー。


 ドラゴンシフター達が突進した所で、超高速で黒い穴に吸い込まれるようにテツベンダーは消え去った。


 「畜生、逃がしたかっ!」

 「残念ですが、追跡は不可能ですね」


 体当たり直前で逃げられ、慌てて立ち止まるドラゴンシフター達。


 自分の試験が終わった所に、新たな敵の登場。


 「畜生、次はキッチリ打撃を与えて決めてやる!」

 「はい、敵の情報も得られましたし次に活かしましょう」


 次は決めようと、気を引き締めて警戒しようと決めたドラゴンシフターであった。

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