第24話 後夜祭は二人で
試合後、立磨はジンリーと競技場を出て中庭で弁当を出して貰いつつ話し合った。
「……結果としては勝負に勝って、試合に負けたってやつだな」
「お疲れ様でした♪ 理事長が、ご主人様とスリムマンの戦いを観客の皆様に公開されていた事で評価は上昇です♪」
「対戦予定だった
「ご主人様が、その方に生命エネルギーを譲渡されたからです♪」
「同じクラスの仲間だし、あんな目に遭わされたなら助けねば」
「ヒーローとしても人としても素晴らしい行動でした♪」
「ある意味で、彼は俺達の行動のとばっちりを受けたわけだしな」
「ご自分を悪く思うのはお止め下さいませ、いささか内罰的な所はいけません」
ジンリーに諫められる立磨、ジンリーも常に立磨に対して肯定的ではなかった。
立磨は、学闘祭の大会的には無効試合で両者負けと言う結果になった。
だが、ドラゴンシフターのヒーローとしての実績はできた。
なので会社的には、立磨の評価は良いらしい。
「そうだな、ありがとう」
「いえいえ♪ 気分を切り替えて、お昼を召し上がり下さいませ♪」
「ところで、この焼売の肉って何?」
「まるごとスッポンでございます♪」
「いや、試合無効なのに元気付けちゃったよ!」
「ちなみにつくねソーセージは、山羊肉でございます♪」
「うん、精が付く物ばかりだな?」
山羊の肉もスッポンも、どちらも知ってる人は知っている精力剤だ。
「ご主人様なら、目の前で傷付いた命を救おうとなされると予想してました♪」
「今更だけど、何か完全に俺の事把握されてるなっ!」
「それはもう、私の長年のご主人様へのストーキングもとい調査の結果です♪」
「ちょっと待て、もはや犯行を隠す気がねえなおいっ!」
ジンリーが、ヤバい女だと再確認した立磨。
「夫となる方の事ですから♪ 実は私、幼少の時に赤ちゃんの御主人様とお会いしておりますの♪」
「え、実は俺の人生って生まれた頃から決められてた?」
「以前にも言いましたが、前世からです♪」
さらりと明かされた情報と、弁当の食材に驚きつつも弁当を食う立磨。
作ってくれたジンリーはヤバいが、料理の味は美味かった。
「ちなみに、餃子の肉は?」
「百パーセント赤マムシの肉でございます♪」
「血行良くなりすぎるっ!」
戦いの後の、夫婦漫才であった。
「しかし、俺は改めてジンリーや周りの皆のお陰で生きてられていると思うよ♪」
「まあ、どうなされたのですか♪ 嬉しさの余り、昇天しかけました♪」
「いや、これ迄を思い返してな?」
落ち着けたので、ジンリーと出会いヒーローとなってからを振り返る立磨。
「一年も満たずに、色々とありましたからね♪」
「あり過ぎたけれど、ありがたいと思えてるよ」
「ご自分の運命を、意志確認をされずに決められていたと知ったのにですか?」
「その辺については、禍福とも思える人生を貰えたから良い」
「私としては、あなたの人生をいただいた対価だと考えております♪」
「ありがたすぎるよ、やりたい事が出来て美人な嫁さんも貰えたし♪」
「私、爬虫類の化け物で愛が重い女ですよ♪」
立磨の言葉にジンリーがいたずらっぽく返事をする。
「今じゃ俺も同類だし、俺も重くジンリーを愛すれば良い」
「普通の人間は、異類を受けれがたいものですがあなたのような人間がいたから私達は人間と愛し合えるのだなと感じられます♪」
「まあ、昔から異類婚をする人間はいたよ?」
「ええ、良くある素敵なお話ですね♪」
「俺はまあ、自分に愛をくれる相手を無碍にできないだけ」
「そう考えられる貴方だから、私は惚れました♪」
ジンリーが頬を赤く染めつつ、立磨に微笑む。
「俺もガチで惚れてる、お前が好きだ!」
「ええ、感じております♪ 私達は相思相愛だと♪」
「恥ずかしいが、俺もそう思わせてもらうよそういう風に導かれて来たとしても」
「ええ、しっかり誘導させていただきます♪ もう、愛の強制連行です♪」
「んじゃあ改めて、これからも何処までも俺と一緒に宜しく頼む」
「はい、改めて♪ 私は、あなたをいただきます♪」
「ああ、グルグルに巻き込んでくれ♪ 俺もそうする♪」
改めて、互いの愛と共に歩んで行く事を誓い合う二人。
会話が終われば食事を再開し、弁当を平らげた立磨。
「ごちそうさま、美味かったよありがとう♪」
「お粗末さまでした♪ 食後はこちらをどうぞ♪」
ジンリーが虚空に指で、開の字を描いて仙術を使い虚空から水筒を取り出す。
「もしかして、中身はスッポンの生き血か?」
「はい、私は食材を無駄にしませんのでぐいっとどうぞ♪」
立磨も、もう慣れたもので水筒を受け取り一気に飲み干してから水筒をジンリーに返せばジンリーがまた虚空に水筒をしまう。
「そう言えば、仙術って余り呪文使わないんだな魔法拳法みたいに」
「しっかり呪文を唱えて使う場合もありますが、西洋の無詠唱魔法のようにショートカットできます」
軽く解説するジンリー、軽く言っているが先ほどの虚空から物を出し入れする術は普通の人間の術者であればMPをそれなりに消費する術だ。
「ご主人様も、元から術者としても素養はあるのですから折を見て学びましょう」
「ああ、使える手数は増やしたいからな」
今後、仙術も学ぶことにして昼食を終えた立磨。
そして、競技場に戻ると決勝の試合が始まる所であった。
壁の巨大モニターを見て、立磨は顔を歪めた。
「げげ、まさかこの学校に通ってたのか?」
「お知り合いですか?」
「垣花師範代の妹、同門だよ!」
「ちなみに、仲の方は宜しかったので?」
「……うん、多分良くも悪くもなく普通かなあ?」
「その様子だと、恋愛フラグは折られていたようで安心です♪」
「何で恋愛フラグが立つんだよ、姉弟子的な立ち位置だよあれは!」
対戦カードは、アームドタイガー対プリティジャスティス。
虎のヒーローと、銀髪ポニーテールで黒帯を締めた白い空手着の上にピンクのフリルが付いたような衣装の美少女がリングに上がった。
「転入生? 負けないっしょ!」
「それはこちらも同じ、垣花流を見せます!」
「タイガーエアカッターっしょっ!」
アームドタイガーが、手刀を振り空気の刃を飛ばす!
「
プリティジャスティスは、腕を胸の前で交差し下ろすと同時に呼気を発する。
空気と空気がぶつかり合い相殺された!
「牽制は失敗、なら真っ向勝負っしょ!」
「その心構え、素敵です! 行きますっ! ジャスティス正拳突きっ!」
アームドタイガーは投げ技で迎え撃つ構えを取る。
それに対してプリティジャスティスは、両の拳を脇に構えると瞬間移動の如く間合いを詰めてアームドタイガーの腹に正拳突きを叩き込んでいた。
プリティジャスティスの正拳突きは、アームドタイガーを場外まで吹き飛ばしてリングアウト勝ちを決めたのであった。
「出た、正拳突きから魔法で生み出した斥力でぶっ飛ばす技だ」
「喰らった事がおありなんですね」
「今なら受け流せると思う」
知り合いの転校生が友人を打ち負かしたのを見て、立磨は焦った。
プリティジャスティスはリングを降りてアームドタイガーに駆け寄る。
「大丈夫ですか? お相手ありがとうございました♪」
「平気っしょ♪ これでもヒーローだし、可愛いね君♪」
「ありがとうございます、本名は
「うん、よろしくっしょ♪」
何か、アームドタイガーに物語が始まり出したようであった。
こうして、第一回の学闘祭りは転校生のプリティジャスティスが優勝した。
理事長がリングに上がり優勝したプリティジャスティス、二位のアームドタイガー、三位のプリティボックスに祝辞と賞品を贈って行く。
「皆さん、おめでとうございます♪ そして、ドラゴンシフター君もリングに上がって下さい♪」
理事長がドラゴンシフターの名を呼んだので、立磨は慌てて身を隠して変身しリングに上がった。
「えっと、俺はノーコンテスト何ですけれど?」
呼ばれて上がったのは良いが、何故呼ばれたのかはわからないドラゴンシフター。
「お礼です、敵の襲撃を退けて学闘祭を守ってくれたあなたに感謝を♪」
理事長がドラゴンシフターに礼を言うと、会場から拍手が沸き上がった。
「ひゅ~ひゅ~♪ 美味しい所持って行ったっしょ♪」
アームドタイガーがからかいいつつも拍手する。
「お疲れ様、ドラゴンシフター君♪」
プリティボックスも笑顔で労いつつ拍手する。
「ありがとう、来年は同門対決をしましょう♪」
プリティジャスティスも、ドラゴンシフターに拍手をした。
「えっと、皆さん恐縮ですっ!」
ドラゴンシフターとしては、そう言うしかなかった。
試合には負けたが、勝負には勝った。
特に表彰や賞品ははないが、ドラゴンシフターの行いは評価されたのであった。
試合が終わった後は、変身を解いた生徒達が競技場内の模擬店での買い物などを楽しむ後夜祭が始まった。
「何か、最後に呼ばれるとは思わなかったぜ」
「良い事です、静かに去るのも武侠のようで宜しいですが時には素直に賞賛を受け取るべきだと思いますよ♪」
「そう言われてもなあ、どうにもむず痒いぜ」
「ご主人様は、少々自分に自信がなさすぎるのともっと素直になりましょうね♪」
「俺は素直だよ、というか美人が無表情でタコ焼き食う姿がシュールだよ!」
「失礼、帰宅してから再現する事を考えておりまして」
表彰が終わり後夜祭となった学園、生徒達は各々が楽しんでいるようで人気のない中庭のベンチで立磨とジンリーは再度二人きりとなっていた。
そんなシチュエーションで、模擬店で買ったタコ焼きやお好み焼きを無表情で食うジンリーにツッコむ立磨。
「ちょっとストップ、ジンリー? はい、あ~ん♪」
ジンリーが止まったのを見た立磨が、タコ焼きを一つジンリーに食べさせる。
「ああ♪ 何と言う事でしょう♪ タコ焼きの味が、ご主人様の愛によって天上の甘露に変わりました♪」
口の横に青のりが付いていても、美人なのは変わらないジンリーの頬がピンク色に染まり芝居がかった恋する乙女モードになる。
「折角、二人きりなんだからさイチャイチャしようぜ♪」
「はい♪ もう仕事は終わりですし、ラブラブタイムですね♪」
夫婦漫才をしながら、買ってきた食べ物を二人で食べさせ合い学園祭デートを楽しむ二人であった。
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