第23話 燃えろ、学闘祭っ!

 そして週末の天気のいい朝、競技場に集った様々な姿の学生ヒーロー達。


 競技場のグラウンドに設置された円形状のリングの上で白いフリル付きのドレスを纏った美女、魔闘少女まとうしょうじょプリティステラこと桃井ステラ理事長が口を開いた。


 「これより、第一回の学闘祭を開催いたします♪ この大会で学友達と切磋琢磨し邪悪の魔の手から、この世界で自分の守りたい物を守る力を高め合って下さい!」


 理事長のスピーチに、生徒や教師だけでなく客席からも拍手が上がった。


 「我が校は悪と戦うヒーローを育成する学校です、この大会も敵の目を引き襲撃が予想されますが上等です! 皆さんの手で迎え撃ちましょう! 学生だからと言っても、ヒーローを舐めるな! 観客のガードは私達教師が行ないます、生徒の皆さんは存分に力を振るって下さい!」


 美人な理事長の熱い言葉に、生徒達は応とレスポンスした。


 「理事長、熱い人だったんだな」


 ドラゴンシフターが呟く、立磨を含む参加生徒達は皆変身していた。


 正体を公開している者もいるが、プライバシー保護などの面から全員変身して表記も変身後でとなっていた。


 「流石、理事長先生♪ 魔闘少女まとうしょうじょの大先輩♪」


 プリティボックスは、先輩に当たる理事長を輝いた瞳で見つめていた。


 理事長がリングから降りると壁の巨大モニターから、スポンサーのCMが流れる。


 そして新たにリングの上に降り立ったのは、緑の全身タイツを着た黄色い髑髏マスクのマッチョマンことキャプテン・メキシコだった。


 「レフリーは私が勤める、フェアプレイ精神で切り抜けるんだ!」


 プロレスラーとしても有名なヒーローの登場に、観客席が沸き上がった。


 『それでは第一試合、アームドタイガー対ヒノカミレッド! 両者、リングへ!」


 レフリーの言葉に、二人のヒーローがリングに上がる。


 一人は虎吉が変身した、アームドタイガーだ。


 変身後は、虎を模した銀色のメタリックなヒーロースーツを装着している。


 もう一人は、委員長が変身したヒノカミレッド。


 白羽織付きの黒い胴鎧を纏い、腰に日本刀を帯刀した赤いスーツの戦士だ。

 

 ゴングが鳴り、リングの上でぶつかり合いが始まる!


 「おっしゃっ! 先手必勝、タイガーハウリング!」


 アームドタイガーが、突き出した掌から圧縮した空気の塊を発射するっ!


 「……こちらも行くぞ。 火の神の太刀、赤熱突きっ!」

 

 空気弾の直撃を受けるが耐えるヒノカミレッド。


 抜刀してから、赤熱化した刀で中段突をする!


 「何の! タイガー白羽取りっ! って、熱っ!」

 「悪いが俺の技は装甲を貫通するっ!

 「おっと、まだっしょっ! タイガーサマーソルトッ!」


 アームドタイガーがサマーソルトキックで、ヒノカミレッドの刀を蹴り飛ばすっ!


 「むっ。ならば組打ちだっ!」

 「それはこっちも同じっしょ、タイガー暴風投げっ!」


 組み合いを制したアームドタイガーが、ヒノカミレッドをぶん回して場外へと投げ飛ばして勝利を掴んだ。


 「俺が優勝したら、焼き肉おごるっしょ♪」

 「……不覚だ、もっと精進せねば」


 アームドタイガーが場外へ行っ、ヒノカミレッドの刀を投げて渡す。


 「第二試合、プリティボックス対スノウブリンガー!」


 続いてレフリーが選手を呼び出す。


 黄色のドレスに、オレンジ色のボクシンググローブとブーツのプリティボックス。


 全身を雪の結晶を模した白い鎧に包んだ騎士、スノウブリンガー。


 ゴングが鳴ると同時に両者いきなり、必殺技の体勢に入った。


 「全力で行くぜ、スノウストームッ!」


 全身から吹雪を放出するスノウブリンガー。


 「バーニング、ボンバーッ!」


 対するプリティボックスは、パンチと共に火の玉を発射した。


 吹雪と火の玉がぶつかり合い爆発が起こる!


 両者、爆発の煙の中突進しパンチの打ち合いになだれ込んだ。


 「マジかよ、武器を出す暇がねえ!」

 「マジもマジだよ♪ ビートステップラッシュ♪」


 スノウブリンガーの正面から、プリティボックスが姿を消した?


 スノウブリンガーが混乱した一瞬の隙を突いて、彼の四方八方からプリティボックスの拳が飛んで来た!


 だが、プリティボックスが殴ったスノウブリンガーはパリンと砕け散った。


 「嘘、いつの間にダミーをっ!」

 「そっちが消えたのと同じタイミングだ、スノウホールド!」


 ラッシュを終えたプリティボックスを、スノウブリンガーが背後から雪ダルマで包み込み場外へと転がしてリングアウトで勝利を収めた。


 「う~~っ! 焼肉一か月分、食べたかったよ~っ!」


 雪だるまの中で悔しがるプリティボックス、だが勝負の結果は非情であった。


 「勝者、スノウブリンガー!」


 レフリーがスノウブリンガーを勝者と認めた。


 「……よし、こうなりゃ飯代確保目指すか」


 勝ったスノウブリンガーは、静かに闘志と食欲を燃やした。


 「続いて第三試合、狸林流たぬきばやしりゅうブンブク対プリティウルフ!」


 午前最後の第三試合は女子生徒対決、緑の忍者装束の上に黒い茶釜に似た鎧を着た狸耳の短い茶髪の小柄な美少女ブンブク。


 「ここで、狸林流たぬきばやしりゅうの名を上げて見せます!」

 「私は、ハンバーガーの為に勝つのです!」


 灰色の狼の耳を生やした長い黒髪の活発そうな美少女のプリティウルフ。


 耳と赤いエプロンドレスだけが狼要素かと思えば、手足を肥大化した人狼の物に変化させた!


 「に、忍法! 木の葉嵐ですっ!」


 ブンブクは、木の葉を舞わせた竜巻をプリティウルフへとぶつける。


 「こっちも、風で吹き飛ばすのですっ!」


 プリティウルフが、口から突風を噴き出して竜巻と相殺する。


 プリティウルフは、あらゆる童話の狼の力を使う魔闘少女。


 対するブンブクは、狸の忍者。


 「狼なら、熱湯の術~っ!」


 ブンブクが印を結び、レッドウルフの足元から熱湯を噴き上げさせた!


 「くうっ! これは、三匹の子豚でやられた技っ!」

 「これで終わりです。忍法小石変化っ!」


 ブンブクが小石に化けて、プリティウルフの腹の中に飛び込んだ!


 「はうっ! まさかっ!」


 プリティウルフは自分の未来が予想できた。


 「忍法、石分身っ!」

 「ぎゃう~~んっ!」


 小石に変化したブンブク、その状態のまま分身の術でプリティウルフの伊の中で増えて暴れ回った!


 狼と七匹の子山羊よろしく、プリtぃウルフはノックダウンされたのであった。


 プリティウルフの中から出て来たブンブク、レフリーであるキャプテン・メキシコが彼女の勝利を宣言した。


知っている者、クラスでも関わらない者などが奮闘する中ついに第四試合でドラゴンシフターの出番となった。


 「よっし、気合い行くぜ!」


 リングに上がったドラゴンシフター、応援キャンペーンとかされた以上負けられない!


 だが、対戦相手が上がって来ない。


 どういうことだとざわつく中、虚空から何かが放り投げられた。


 「うおっと! げっ、こいつはっ!」


 ドラゴンシフターが受け止めたのは、緑のヒーロースーツ姿で全身を殴打されてズタボロな対戦相手の同級生の少年だった。


 すぐさま、自分のエネルギーを少年に流し込み蘇生させるドラゴンシフター。


 「彼を医務室へ、応急処置だけはしました!」

 「わかった!」


 息を吹き返した少年をレフリーに渡すと、レフリーは医務室へと向かった。


 「出て来いよ、スリムマン!」

 「おやおや、お怒りですねえ♪」


 ドラゴンシフターが叫ぶと、虚空を裂いて黒い紳士服姿の闇人間とでも言うべき怪人スリムマンが出現した。


 「挨拶くらいしかした事ない同級生でも、やられれば怒るわっ!」

 「先日、あなた方に悪だくみの思索を邪魔された仕返しです♪」

 

 ドラゴンシフターの出番を狙っていたのであろう、怪人の出現に場内が沸き立つ。


 「ならここで、俺が決着をつけてやる!」

 「私も、全力で暴れさせていただきます!」


 全身を肥大化させたスリムマンと、ドラゴンシフターが互いに動き激突した!


 「罠にかかりましたね♪ ステラフィールド発動! 被害を気にすることなく思い切り闘って勝ちなさい、ドラゴンシフターッ!」


 ドラゴンシフターとスリムマンが激突した瞬間、理事長が両手を叩き二人を異次元へと転移させた。


 「何ですとっ! しまったっ!」

 「余所見は注意だぜ、似非紳士野郎っ! ファンロンストレートッ!」


 自分とドラゴンシフターが、宇宙空間のような場所へ転移させられたと気付くスリムマン。


 その隙をドラゴンシフターの拳が突くっ!


 「がは~っ! 舐めるな~っ!」


 全身の闇を槍のように伸ばして、ドラゴンシフターを襲うスリムマン。


 だが、ドラゴンシフターはその攻撃を避ける事無く全て耐えきった。


 「……けっ! この位、お前に理不尽に襲われたあいつに比べれば屁でもない!」


 同級生の少年を想い、呼気を吐き全身から黄金の光を発するドラゴンシフター。


 「ぐぬぬっ! 忌まわしき神の手下めっ!」

 「……手下じゃねえ、これでも端くれだよっ! ファンロンエルボーッ!」


 突進してくるスリムマンに、外門頂肘を打ち込むドラゴンシフター。


 「悪いなあ、エネルギーが全身に満ちていてお前に全く負ける気がしないわ!」

 「ほざけっ! ならば貴様を喰らってやるっ!」


 スリムマンが巨大な口だけの闇の大玉に変化して、ドラゴンシフターを飲み込む。


 その中は、邪悪な瘴気で満ちている地獄の胃袋。


 だが、全身から黄金の気を発しているドラゴンシフターは無傷であった。


 「……大体見切った! お前なんざ、金龍合神を呼ぶまでもないっ!」


 ドラゴンシフターが手を爪に変えて切り裂き、スリムマンの中から出てくる。


 その様子は泰然自若、スリムマンの攻撃などどこ吹く風であった。


 「お、おのれっ! デーモニウムを喰らってパワーアップして来たというのに!」

 「龍になる前の俺一人ならヤバかったが、今の俺なら負ける気はしない」

 

 悔しがるスリムマン、だがドラゴンシフターは斬膳と返した。


 「終わらせてやるよ、こちとら学校行事の最中なんだ!」

 「まだだ、まだ私はっ!」

 「光の牙で噛み砕く、ファンロンバイトッ!」


 ドラゴンシフターが全身を巨大な黄金の龍へと変化させて、スリムマンの全身を噛み砕いて消滅させた。


 決着がつくと同時に、ドラゴンシフターのみ元の空間へと帰還したのだった。


 「勝者、ドラゴンシフターッ♪」


 戻って来たドラゴンシフターの勝利を、理事長の宣言と観客の拍手が讃えた。

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