第22話 発表、闘う学園祭っ!
数日後、立磨達は朝のHRでクリストファー先生からプリントの束を配られた。
「第一回
立磨が小声でプリントの文を読み上げた。
「会議の結果、今年の学園祭は競技場の特設リングでトーナメント大会になった」
クリストファー先生が皆に申し訳なさそうに呟く。
「うん、悪の組織と戦う人材を育成する我が校らしいな♪」
「参加選手には、参加だけでファイトマネーが一万円か」
「優勝の賞品は焼肉無料券一ヶ月分で、二位がハンバーガー店と三位が牛丼屋の無料券かそれぞれ一ヶ月分かあ」
生徒達が商品の項目を読んで考え出す。
「……焼肉かあ♪ 私、出ます!」
女子では真っ先に春原さんが、参加に名乗りを上げた。
「俺も出るっしょ♪ 食費が浮く♪」
虎吉もやる気を出した。
「参加するだけで一万円なら、出ない理由はないな」
徹もやる気を出し、生徒達の心に火が付いて来た。
「学校側でもスポンサーと交渉は続けるので、賞品の追加も期待していてくれ」
と、先生が締めてHRが終わった。
優勝賞品や参加賞の一万円が、生徒達の食欲とやる気に火を付けた学園祭の告知であった。
「そう言う告知があったんだけど、会社の規約とかスケジュール的に問題はないかな?」
「はい、その日は空いてますね♪ 私も当日は、応援に行かせていただきます♪」
「ああ、何となく今度はクライゾーンがちょっかいをかけて来そうな気がするぜ」
「人が集まる場所はテロを起こすには最適ですしね、スリムマンも気になります」
帰宅した立磨が、ジンリーと事務所スペースで話をする。
「しかし、学闘祭ですか? 学園祭は、学生が催し物などをする物だとばかり?」
「まあ、生徒数も少ないし学校も競技場に人と金を集めたいんだろう」
「当日のお昼は、お弁当をご用意しますね♪」
「ああ、宜しく頼むぜ♪」
「はい、当日をお楽しみに♪」
ジンリーと話を終えた立磨は、公式ブログの更新などの仕事に取り掛かった。
仕事を終えてジンリーと住居スペースに戻る立磨、二人で食事の支度に取り掛かる。
「今夜は、自家製担々麺です♪」
「このスープで雑炊や鍋をしても良いな♪」
ジンリーと向き合い、丼に入った真紅のスープを一口すすって見る立磨。
「黄家の辛味噌は万能の調味料ですから、カレーにも合います♪」
「今日の弁当の、味噌おにぎりも美味かったしな♪」
「お気に召していただけて何よりです♪」
二人は和気藹々と、夕食を楽しんだ。
翌日、学闘祭の告知がされてから参加を決めた生徒達。
それぞれが休み時間や放課後を使い、自主練に励んでいた。
「如何です、クリストファー先生♪ あの生徒達の熱の入れようは♪」
「……理事長先生の慧眼、恐れ入りました」
「いえいえ♪ クリストファー先生のお考えは教師として素晴らしいです、誇って下さいな♪」
「ありがとうございます」
理事長室で理事長とクリストファー先生が語り合う。
二人は、窓から走り込みをする生徒を見ていた。
「自分達の大事な物は、自分達の手で守れるようにする♪ 生徒達が社会に巣立ってからも必要な事です、例えば四度目の恐怖の大王との戦いが来た時に彼らが泣かぬように♪」
「理事長、もしや何か未来を見られたのですか?」
神妙な面持ちで語る理事長。
クリストファー先生は、彼女が魔法で未来を見たのかと感じた。
「今はまだ例え話の段階です♪ ですが、三度も起きた事で四度目がないとは思わないで下さいね♪」
微笑みつつも釘をさすように伝える理事長。
「肝に銘じておきます」
「この学校には色んな運命を持った生徒達が集まています、特に龍の子」
「それは、日高君の事でしょうか?」
「はい、彼は来るべき戦いの時に重要な存在となるでしょう♪」
「それも、未來視の結果でしょうか?」
「彼に関してはそうです♪ 体育祭のスピーチの時に未来が見えました♪」
理事長が微笑みながら語る。
「……日高君本人には、伝えなくてよろしいのでしょうか?」
「問題ありません、彼の宿命は彼の保護者達が教えるでしょう♪」
立磨に関して理事長が言及した事に、クリストファー先生は黙った。
「暗い顔をなさらないで下さい、笑う門には福来るですよ♪ 生命が持つプラスの気持ちのエネルギーが、邪悪を打ち倒す力になるのですから♪」
「私もまだまだ未熟ですね、気を付けます」
「変身した時のあなたの方が明るくて素敵ですよ、クリストファー先生♪」
理事長の笑顔に、クリストファー先生は頭を悩ませたのであった。
理事長室でそんな会話が行なわれているとも知らず、立磨は新たな学校での初の学園祭と言う空気に少々高揚していた。
「皆、気合い入っているな♪ 武道場も魔法の実習室も満員だし」
普通の学園祭とは違うが、これはこれで楽しみな流れだなと立磨は感じた。
「けど、今度も絶対に敵が来る気がする」
好事魔が多し、本当の魔物であるクライゾーンの怪人との交戦経験が立磨に嫌な予感を感じさせていた。
何はともあれ、自分は自分だと気を取り直して立磨は事務所へと急いで帰る。
自分は一人ではない、人生も戦いも共に歩むパートナーがいるのだから。
仲間達と楽しく切磋琢磨する為にも、敵の好きにはさせたくなかった。
「なるほど、やはりご主人様もクライゾーンが怪しいとお考えでしたか」
「体育祭の時だけ来なかったのが、どうも気になるんだ」
「敵の法則は私もわかりませんが、嫌な出待ちですね」
「奴らのやることは、質の悪いストーカーだよ本当に」
「ですねえ、事件とは別件ですが学闘祭に我が社も関わる事になりました♪」
「学園側が試合をスマイル動画で独占配信するとの事で、スマイル動画側から本社にキャンペーンの企画が持ち込まれました♪」
ジンリーが笑顔で告げる、スマイル動画はウェーチューブやアシヤTVなど動画配信サイトで有名な会社だ。
ロンスターも公式チャンネルを開設していて、立磨も変身した上で何度か公式動画に出演している。
「ああ、十連ガチャチケットとか配布するんだ?」
「ええ、ドラゴンシフター応援キャンペーンの開催です♪」
「うん、タイトルはどうかと思うけど雇われている身だから文句は無いよ」
自分がゲーム会社の所属ヒーローだと思い出した立磨。
ジンリーのデスクのPCから見せられた、会社が打ち出したキャンペーンの内容に目を通す。
「変身した俺を応援してくれたユーザーの人数で、会社の運営している格ゲームの高レアリティのガチャチケットとかの配布か?」
企画の内容自体はよくある企画であった、SNSに応援でも配布と立磨も普通に参加しそうな内容なのは良かった。
ヒロインコレクトやクマ娘キューティーTDなど、ロンスターのゲームコンテンツに対応した無償通貨やガチャチケットに育成アイテムなどをユーザーに配布する。
「うん、普通の企画だよね俺が関わっていなければ」
「ええ、我が社はユーザーフレンドリーな運営ですから♪」
「そうだね、俺は広報はしてるけどタッチしていないから言いにくいな」
会社の事はスルー、雇われてる身だし別部署の事より自分の所の仕事が優先。
「なので、キャンペーンに向けた動画の撮影をしに明日は採石場へ参ります♪」
「いわゆる、栃木の採石場?」
「はい、爆薬の設置はロンスターガードの工兵部隊が行ないますので万全です♪」
「いや、それ傭兵チームの爆破工作じゃねえか!」
「これから早速、船に乗り本土の栃木まで参りましょう♪」
「急すぎるよ~っ!」
友人達は特訓などに励む中、仕事の入った立磨は特訓どころではなかった。
弾丸で栃木入りをして車中泊だった立磨、身支度もそこそこに変身して採石場での撮影が始まる。
爆炎をバックにポーズを取るドラゴンシフター、それが終われば番組開始だ。
「株式会社ロンスター所属、ドラゴンシフターです♪ 今回のロンスターチャンネルは採石場からゲーム情報をお届けします♪」
そして再びドラゴンシフターの背後で起こる爆発。
「今回、俺の応援キャンペーンが開催されます♪ SNSの応援投稿やフォローで何とガチャ百連分がプレゼント♪」
ドラゴンシフターがフリップボードをカメラに見せた所で、またもや背後で爆発。
撮影の節目で爆発が起こる仕組みらしい。
何とか撮影を終えて変身を解いた立磨。
「ふう、疲れた! 撮影とか爆発とかに予算は使わなくて良いと思う」
「お疲れ様でした♪ それでは、次は私も変身しますので特訓風景の撮影とまいりましょう♪」
ジンリーが立磨にプロテインを差し出して告げる、少しの休憩の後今度は二人での特訓の動画撮影が始まった。
「ドラゴンシフターです、特訓で栃木に来てます!」
「ドラゴンシフター二号でございます、ロンスターチャンネルでも配信されますので高評価とチャンネル登録をお願いいたします♪」
今度は二号も交えての撮影を始める、ドラゴンシフター。
「で、二号さん? 特訓のメニューは一体なんでしょう?」
「はい、採石場にやって来たと言う事で岩を砕いていただきます♪」
「危険ですから、一般の方はマネしないで下さいね!」
「それでは、始めたいと思います♪」
夫婦漫才のトークをしてから撮影を始める二人、ヒーローが半分タレント化している現代ではこうした動画も流行しヒーローの収入源となっていた。
「それでは、まずはこのサッカーボールサイズの岩から挑戦していただきます♪」
「よっし、乗り切って見せるぜ!」
そして始まる特訓、ドラゴンシフター二号が崖の上からサッカーボールほどの岩を投げつけて来た!
「オラッ、ファンロンエルボーッ!」
ドラゴンシフターがジャンプして、肘打ちで飛んできた岩を粉砕する。
だが、次に飛んできた岩は直撃を受けてしまいドラゴンシフターの顔面で粉砕する事となった。
「油断大敵ですよ! 次は十個同時に砕いて下さいっ!」
「やったらあっ!」
今度は十個飛んで来た小岩を、拳・肘・膝・額・肩・尻尾と体の各部位を駆使し砕き切る事に成功する。
そうして、世間に見せる表向きの特訓を終えた二人は撮影を止める。
そして、真の特訓とも言える組手に挑むのであった。
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