第四章:学園イベント戦闘編

第19話 体育祭の敵を討て!

 「そう言えば、学校に競技場が完成したようですね♪」

 「ああ、工期が遅れていたけれどこれで体育祭とか行事ができるぜ♪」


 いつものように、リビングでジンリーと食事をしながら会話をする立磨。


 今日の朝食は、牛乳と薄塩味の鶏肉雑炊。


 立磨は緑のブレザーに、白シャツにグレーのスラックスと学生服姿。


 ジンリーは上下黒のパンツスーツと、お互いの朝の支度をすませての朝食。


 クライゾーンの襲撃により工期が遅れていた競技場が、最近になって完成した。


 「フードコートや売店もあって、一般に貸し出しもするようで楽しみですね♪」

 「まさか、家の会社も金出してるとか?」

 「はい♪ 勿論、スポンサーとしてそこそこ出資しております♪」

 「ジンリーが、俺の保護者代理以外にも業者として学校に来れるって事か?」

 「はい、私としては学生として通いたかったのですが!」

 「……まあ、制服姿のジンリーも見てみたいけど会社の事もあるし他の奴らに見られるのは嫌だしな」

 「まあ、私の事を想って下さるのですね♪ 来世では、幼稚園から大学院まで一緒に過ごしましょう♪」

 「そりゃまあ、いまや大事な嫁さんだからな! いや、そう言うのも浪漫があるけれど死んだ先の事まではわからねえよ!」

 「愛する人が照れながら想いを聞かせてくれる♪ そんな今日は、私とあなたの愛情記念日♪」


 立磨が自分に愛情を表現した態度に、ジンリーが頬を赤く染めながら流し目で恍惚とした綺麗な声でポエムを口ずさむ。


 自分を堂々と美しいと言う、人間の姿は胸の大きな金髪クレオパトラカットの彼女は確かに美しく立磨の好みの女性ではあった。


 窓から射す朝の光がジンリーを照らせば、彼女が後光を背負った女神のように神々しいと立磨は感じ自分が完全にジンリーに惚れこんでいる事に照れる。


 相も変わらず、朝から夫婦漫才を二人で繰り広げる立磨とジンリーであった。


 そして立磨が夫婦漫才を終えて学校へと登校すると、教室での朝のホームルームでクリストファー先生が皆に明るい笑顔で語り出した。


 「おはよう♪ 皆も気が付いていると思うが、ようやく競技場が完成したぞ♪」


 お~と、生徒達が感心した声を上げる。


 クライゾーンの種撃で、業者がブラックだった事が判明し点検をしてみたら耐震構造やら各所に欠陥が見つかり改めて別の業者に工事を発注。


 予算の集め直しも行われて、実質的に作り直しとなっていたのだ。


 「これで体育祭などの行事を行う事ができる上に、学校側以外でも有料で一般にも貸し出す予定なので教務課にイベント警備の依頼なども出る事になる♪」


 そう言って先生が一旦言葉を区切る。


 「学校関係者には、競技場でのイベントの入場等が割引になる事もあるそうなので、皆で競技場を大事に利用して行こう♪」


 割引などの自分達の得になる話に、生徒達は拍手をした。


 「学校にも使用料や広告料が入る、俺達も金を稼げるし使える。 生きるって、金から離れられないな」


 立磨は教室でぼやいた、金は人類最古の約束事の一つであり人類の文明を進めてきた魔術であると実感した。


 「……仕方ねえよ、金が人を猿から人間に変えたんだ」


 立磨のぼやきに徹も呟く。


 「学園祭とかも盛り上がるっしょ♪」


 遊びやイベントが好きな虎吉は喜んだ。


 「風紀の乱れに気を付けないとな」


 委員長は真面目だった。


 「楽しみだな~♪」


 久しぶりに学校に来た春原さんは喜んでいた。


 そんなにぎやかな空気から、午前の授業に移行していった。


 一時間目は英語、教師がアメリカ英語とイギリス英語の違いなどを語りつつ教科書に沿って英文を日本語に訳すなどの授業を行う。


 真面目に受ける者、眠気を感じる者などの中で立磨は真面目に挑んでいた。


 記憶力などの脳のスペックなどは上がっているはずなのだが、まだまだ勉強の部分では龍となった己の力を使いこなせてはいなかった。


 「たっつん、鬼のような気配を出してノート取るの怖いっしょ」

 「勉強の問題って、殴って倒せないから大変なんだよ!」

 「問題は倒すものじゃないぞ?」

 「大丈夫か? 水分取った方が良いぞ?」


 友人達に心配されるほどに、英語が苦手な立磨であった。


 二限目の漢文は、立磨は英語とは打って変わって、水を得た魚のようにこなしていった。


 「え~? 誰か、史記のこの文を訳してもらえますか?」


 初老の男性教師が、漢字の文を書き終えて尋ねる。


 「あ、俺がやります♪ ……四時の大順を」


 立磨が手を挙げて、スラスラと黒板に漢文を日本語で書いて行く。


 「……正解です♪」


 先生が立磨を褒めた。


 「……え、英語の時とは打って変わってアクティブだったな」


 授業後に委員長が呟く。


 「得意科目と苦手科目の差が激しいタイプなんだな」


 徹が冷静に立磨の傾向を分析する。


 「漢文は、中国に行った時に仙術の関係でみっちり教わったからな♪」


 修行の成果が出たと笑う立磨。


 その後は、日本史や世界史など文系科目は順調にこなすが数学などの理数系科目では苦戦すると言う塩梅でその日の授業を終えたのであった。


 「あ~、建物はできたけれど使えるのはまだ先か~?」


 下校時間になり校舎を出た立磨は一人、円形の競技場へと立ち寄って見た。


 入場口には警備員が立ち、搬入口では業者の車が自販機などを運び込んでいる。


 立て看板が近くに設置されており、生徒達へ向けて利用可能になる日程が告知されていた。


 「来週に体育祭か、どうせ悪の組織のどっかが攻めて来るんだろうな」


 何も起きないはずはない、そんな事を想いつつ立磨は事務所へと帰宅した。


 「体育祭ですか? 撮影とお弁当はお任せ下さい♪」

 「公式SNSで動画を使うなら、学校に許可取ってな?」


 事務所での仕事を終えて、リビングでジンリーの作った自家製の辛味噌ラーメンで夕食を摂りながら話をする。


 その後、立磨は学校での授業に悪の組織が起こす大小の事件に生身での戦闘。


 最近やるようになった、ロボによるゴミ処理と仕事と学業をこなす日常をこなしつつ体育祭の日を迎えた。


 綺麗に晴れた青空の下、陸上と球技の両方ができるハイブリッドターフな円形競技場の中に集ったジャージ姿の立磨達は整列して理事長のスピーチを聞く事になった。


 「皆さん、長いスピーチは私も嫌いです♪ 本日は健康に気を付けて、ルールを守り楽しんで下さいね♪」


 立磨達の前で笑顔で語るのは、白のフリル付きのドレスを纏った王女様と言う雰囲気のピンク髪の美女だった。


 二十代の外見で健康そうな美人な理事長だが、立磨は理事長が纏う金色の魔力を見て只者ではないなと感じていた。


 非常にあっさりとした開会式が終わり、第一競技の男女対抗サッカーの準備に皆が準備に入る。


 だが、突如として競技場内に空間に切れ目が入り戦闘員達を引き連れた銀色の馬の怪人が現れる。


 「我が名はチョッパー幹部、ホースシルバー! ヒーロー共の若い芽を潰しに来た!」


 ホースシルバーが名乗る! だがその時、空の上にも黒い穴が開きそこからも戦闘員と両手にガスバーナーを装備した黒いロボット状の怪人が乱入して来た。


 「バーナークラ―参上♪ ヒーロー共を焼き殺しに来たぜ♪」


 バンクラーの怪人、バーナークラ―であった。


 「貴様、バンクラー! 我らの邪魔をしに来たか!」

 「邪魔なのはそっちだろうが馬野郎!」


 偶然かち合った、悪の組織同士が睨み合う!


 「ふざけんな! 両方とも消え失せろ!」

 「不法侵入は許さん!」

 「俺達の学校は俺達が守る!」

 

 だがここはヒーロー達の活動拠点、悪の組織が来ても恐れるに足らず!


 バンクラーVSチョッパーVS学園ヒーローの三つ巴の戦いが始まった!


 変身した学生ヒーロー達が、それぞれの魔法や武器で戦闘員達を蹴散らす。


 「ほう、やはり戦闘員では相手にならんか」

 「ヤベえ、手下がやられた!」


 戦闘員を失うも、冷静なホースシルバーと慌てるバーナークラ―。


 二体の怪人に立ち向かうのは、ドラゴンシフターと友人達が変身した学生ヒーロー達であった。


 「馬なら競馬場でも走ってろ!」

 「……くっ、出たな賞金首っ!」


 ドラゴンシフターが、ホースシルバーを相手に一人で立ち向かう。


 「貴様がバンクラーか、我が火の神ブレード受けて見よ!」

 「委員長、合わせるぜ!」


 委員長が座敷童の力で変ヒノカミレッド。


 徹が変身した白い雪の結晶モチーフの鎧の騎士、スノウブリンガー。


 二人のヒーローが、バーナークラ―の左右から炎の刀と冷気の剣で襲い掛かる。


 「畜生、こいつらどっちも俺のバーナーに耐性がありやがる!」


 バーナークラ―は、紅白のダブルヒーローに自慢の火炎攻撃を封殺されて翻弄されていた。


 「貴様の首を取れば賞金も出世も叶う! 私は運が良い♪」

 「悪の組織も金と出世か! 景気が悪い奴らだな!」


 ホースシルバーは徒手格闘型の怪人、ドラゴンシフターは冷静に敵の拳を掌で払いつつ敵の腕を取り間接を極める!


 「ぐはっ! 私のラッシュを捕えただとっ?」

 「悪いがこっちも鍛えて強化してるんだよ!」


 ドラゴンシフターが敵の腕を捕えつつ、斧刃脚でホースシルバーの足を蹴り砕く!


 「わ、私の足がっ!」

 「終わりだよ、ファンロンストレート!」


 ドラゴンシフターが、ホースシルバーの体をを離すと素早くその胸を金色に輝く拳で撃ち抜いた。


 ドラゴンシフターに胸を拳で貫かれたホースシルバーは、蒸発するように消滅した。


 「こっちも終わらせるぞ、スノウブリンガー!」

 「……任せろ、ヒノカミレッド!」

 「げげっ! くそったれっ! こうなりゃ自爆してやるっ!」


 バーナークラ―の方も、決着がつく頃合いとなっていた。


 「そんな事させるわけないだろ? 腹の中まで凍り付け、フリーズエンド!」


 スノウブリンガーが、宣言どおりにバーナークラ―を氷漬けにした。


 「終わりだ、ヒノカミ一文字っ!」


 ヒノカミレッドの燃え盛る刀による一閃が、懲り漬けにされたバーナークラ―を物別れにした。


 二人のヒーローの連携技により、胴と下半身が両断されて物別れになって死んだバーナークラ―は謎の力でガラスが砕けるように粉々になって消えて行った。


 「これにて状況終了だな」

 「お疲れ様、委員長」


 バーナークラ―を倒した二人が変身を解いたのを見て、ドラゴンシフターも変身を解除した。


 「まさか、開会しょっぱなから敵が攻めて来るとは思わなかったぜ」


 立磨の新しい学校での初めての体育祭は、波乱の幕開けとなった。

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