第18話 大強盗獣を倒せ!
「久しぶりの学校だぜ、普通は毎日通うもんだけど」
「おはよう、日高君♪ 我々は学生とは言え皆実質ヒーローと兼業だからな」
「おはよう委員長、虎や徹は仕事かな?」
「ああ、学校で受けた仕事で校外学習と言う名の出張だ」
「言葉って便利だな、まあ金を稼ぐ手段があるのはありがたいけど」
「まったくだ、社会で生きて行く以上は金はいるしな」
久しぶりに来た学校の、出席者が少ない教室で委員長と話す立磨。
大学が学生にアルバイトを紹介するように、このフロートシティヒーロー高等専門学校でも校外学習の名目で単位と生活費を稼ぐべく生徒が事件解決に赴いていた。
立磨の学友達も、所属がある者は所属先の仕事。
未所属で授業に来ていない者は、校外学習で労働と言う具合だ。
学生のヒーロー達には学校が、ファンタジーの冒険者ギルドの役割を担ていた。
サボりや病欠は教師達があらゆる手段で治療やオンライン授業などで出席をさせて防ぐので、生徒の中でサボりを達成した者はまだいない。
「何せ、先生達が生徒の夢や精神世界に迄アクセスしてくるので意識不明の重体でも夢の中で授業を受けられると言う本当の意味での睡眠学習とかできるからな」
委員長が語る。
「それ、虎がやられてたって聞いたな? 寮で寝てたけど、夢の中に各教科の先生に入られてみっちり六時間の授業を受けたとか」
「ああ、あいつには良い薬だ♪ さて、一般教科が始まるぞ♪」
「ああ、一時間目は古文からか」
立磨と委員長は、会話を終えて授業に臨んだ。
古文に始まり、英語に数学や化学と高校一年生で習う科目を学ぶ立磨。
午前の授業が終わり、昼休みに中庭に出て弁当を出す。
これから楽しい昼食と言う所で、彼の平和な時間は中断される。
「さて、ジンリーの弁当をありがたくいただくか♪ って、その当人から着信?」
制服の胸ポケットからスマホを取り出してる。
「昼食前に申し訳ございません、私達二人でと言う依頼が舞い込みました!」
「わかった、手続きしてから行くんで五分持たせて! 夕飯はジンリーの弁当におかず追加で♪」
「こちらも移動中ですが万事お任せを♪ 敵には、あなたに私のお弁当を食べていただく時間を潰した罪を償わせます!」
ジンリーと通話を済ませて弁当と荷物を持ち、立磨は走り出した。
教務課へと向かい、大急ぎで職員に所属から出動が来たので帰宅する旨を告げる。
「了解しました、事件都合で帰宅ですね? お気を付けて♪」
職員も慣れたもので、手続きはするから現場へ急行しろと立磨を促す。
そして校舎を出た立磨はドラゴンシフターに変身して、空へと飛び立った!
全身を金色の龍形態に変え、ジンリーことドラゴンシフター二号の居場所を探り空を駆けるドラゴンシフター!
「見つけた、市街の中央交差点かよ! てりゃっ!」
人型に戻り、空中からの急降下キックで敵の戦闘員達を蹴散らして着地する。
「待たせてごめん、状況は?」
「私は無事です♪ 敵は今の所、バンクラーの戦闘員ですね」
「おっけ、じゃあ怪人が出る前にまずは蹴散らして行こうか♪」
先に戦闘員と戦っていた二号と背中合わせになり、二人での戦闘を開始する二人。
顔面に¥マークや$マークの付いた、黒い全身タイツ人間と言うべき人型の異形。
バンクラーの戦闘員達を、Wドラゴンシフターが格闘で倒して行く。
「おかしいな、まだ怪人が出てこないなんて?」
「いつ出てきてもおかしくはないですね、シティの中央銀行がありますし!」
あらゆる世界の銀行や金品を狙い強盗と殺人を行う社会の敵、バンクラー。
バンクラーにとってこの街で一番大きな獲物は、ドラゴンシフター達が戦闘員と交戦していた場所の傍に立つ中央銀行だった。
「このまま怪人が出なければ、帰宅してランチタイムと行きたいところですね」
「そうしたいが空の時空が揺れた、これは緊急コールだ!」
「了解です、最初から巨大戦ですね!」
ドラゴンシフター達がマスクの内側で中国の工場へと連絡する。
連絡を受けた中国にあるロンスターの工場も、スタッフ総出で大騒ぎとなる。
「緊急出動だ、天井開けろ! 機体に燃料だけ入れて射出だ!」
整備班長の張さんが叫び部下達を急がせる、充電や燃料の為のケーブルが機体から外され仰向けに寝かされていた金龍力士一号と二号がベルトコンベアで同時に立ち上がらされる。
そして二体の巨人は、ハンガーからミサイルの如く打ち出された!
「やばい、空に奴らの時空通路が開いた!」
「巨大戦アラート発令、落下予測地点の市民の避難が始まりました!」
「よし、ロボが来るまで避難の時間を稼ぐぞ!」
「はいっ!」
ドラゴンシフター達は龍の姿になり空へと向かう、目標は空に空いた黒い穴!
穴の中には、巨大なサイズの人形の異形が見える。
「まだ落ちて来るんじゃねえ!」
「街への被害は少しでも減らして見せます!」
落ちてこようとするバンクラーの巨大な怪人、大強盗獣をドラゴンシフター達が押し返そうと挑む!
二匹の金の龍が、巨大なブルドーザー人間とも言うべき姿の大強盗獣の両腕に尻尾を巻き付けて落下を阻止しにかかる。
これには地上に落ちて暴れるだけだったはずの大事強盗獣、ドーザークラーも慌ててもがき暴れ出す!
その間にドラゴンシフター達の下に、二人の機体である金龍力士達が現れた。
「よし来た! 緊急合体だ!」
「了解です!」
ドラゴンシフター達は、ドーザークラーから離れそれぞれの機体に体当たりするかのようにぶつかって乗り込んだ上に空中で金龍合神への合体を行う。
「完成、金龍合神っ!」
「敵、時空通路から出ます!」
「よし、空中キャッチだ!」
そして空中に出て来た、ドーザークラーと金龍合神。
バーニアの噴射で飛ぶ金龍合神が、ドーザークラーを空中でキャッチ。
「市街に落とさせてたまるかっ!」
「空中巴投げですっ!」
「張さん、無茶な動きさせてごめんなさい!」
ドラゴンシフターが、整備班長に謝りつつ金龍合神でドーザークラーを海へと投げ飛ばす!
その間に金龍合神は静かに港湾地区に着地した。
「機体の調子は問題ないですね、頑丈さは大事です」
「部品代はスポンサーロゴ入れてアフィリエイトで稼ごう、来るぜ!」
金龍合神が構えると同時に、ドーザークラーが海から飛び出して来た。
頭と両手足が黄色いブルドーザーで、他は全身青タイツの人型の異形が吠える。
「申し訳ありません、空中巴投げの影響で
「マジか? じゃあ、近くのゴミ捨て場で勝負だ!」
自分達に襲い掛かるドーザークラーを、体当たりで突き飛ばす。
相手の体が浮いた所をキャッチして、再び空を飛ぶ金龍合神。
過去の戦いの舞台となったゴミ処理場へと、空からドーザークラーを叩きつける!
「クラ~~~ッ!」
落下の衝撃で爆発が起き、痛みに叫ぶドーザークラー。
「ここなら暴れても他よりは大丈夫なはず!」
「運営の方に売却する為に、なるべく残して倒しましょう」
「怪人の死体って結構、結構な値段で売れるからな!」
起き上がり、殴りかかって来たドーザークラーに殴り返して拳をぶつけ合う!
「場所にご迷惑が掛からないように、新武器を使いましょう」
「よっし♪ 来い、
ドラゴンシフターが叫びレバーを押し込むと、機体の外では空を雷雲が覆う!
ドーザークラーが、ビビって距離を取れば、金龍合神の目の前に落雷と共に落ちて来る物があった。
それは、全長二十メートル程の巨大な黄金の
斧頭が口を開けた龍の頭を模した形の刃は、ビリビリと紫電を帯びている。
金龍合神が柄を掴み引き抜き上段に構える、古代中国では鉞は処刑道具であり王の正義のシンボル。
金龍合神の頭上で雷が鳴り出す。
「バンクラーの巨大強盗獣、強盗未遂と私達のランチタイムの邪魔をした罪で成敗します!」
「
ドラゴンシフターは相方にツッコむのは止めて、ヒーローらしく決めようと叫ぶ。
ドーザークラーの方はと言うと、本能で敵のヤバさを感じてはいた。
だが同時に、闘争本能もまたあったので自棄になって死に物狂いで両手のバケットを振り回して金龍合神へと襲い掛かって来た!
降り回される怪人の巨大バケットを、
「敵ながらひたむきに攻める姿は、敬意を示すぜ!」
「ええ、ならばこちらも全力で打ち倒しましょう!」
ドーザークラーとの打ち合いから、金龍合神が振り上げた龍牙雷鉞に雷が落ちる。
「決めるぜ必殺、
ドラゴンシフターが叫び、落雷を纏った龍牙雷鉞を振り下ろしドーザークラーを真っ二つに断ち切った。
断ち切られたドーザークラーの骸は、金龍合神達が放った必殺技の余波で爆発四散したのであった。
ゴミ処理場に上がる火柱をバックに、残心を決める金龍合神。
「……決まったな」
「はい、お見事でした♪」
敵を倒した金龍合神、次は後始末だと龍の頭から放水をして現場を消火する。
「さて、仕事も終わりましたしロボを帰して私達も帰りましょう♪」
「いや、ゴミ処理場の人とお話合いしようぜ?」
この一件で、ヒーローにゴミの焼却や廃棄物の解体処理などの依頼が持ち込まれる事となる。
「……ふう、何とか終わりましたね」
「明日は、俺も学校休んで書類仕事とか外回りとか付き合うよ」
「はい、宜しくお願いいたします」
「まあ、夫婦は二人三脚だから喜んで♪ はい、鶏肉粥食べて♪」
仕事を終えて、夕食を取る二人。
市販の餃子入りの鶏肉粥を立磨がレンゲですくい、ジンリーに食べさせる。
「あ~ん♪ ああ、疲れが取れる気がします♪」
「ジンリーの食べる姿って、何か魅力的だな♪」
「ありがとうございます、どんどん照れて魅了されて下さい♪」
「そのドヤ顔も何かセクシーだと感じるのが、悔しい」
「愛を感じられるこのひと時、守り抜きたいです♪」
「俺もだよ、今度はジンリーが食べさせてくれるかな♪」
「はい、喜んで♪」
夕食を仲睦まじく食べさせ合い、勝ち取った平和を味わう二人であった。
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