第17話 落ちる凶星、迎え撃つ金龍
クライゾーンのシティ襲撃から数日後、立磨とジンリーはとある無人島に向かっていた。
「……この島、何だか怪獣が多くないか?」
「はい、それに空気も夏場のような暖かさですね」
空を飛んでいる立磨とジンリーの目には、海の底に逃げて行くエビやカジキマグロに似た水棲の怪獣や緑色の鱗に覆われた猿のような小怪獣。
大きい怪獣もいるようだが、身を隠して立磨達を探っているようだった。
浜辺に着地した立磨達が語り合う、二人がこの島を訪れたのは仕事だ。
天気は晴天、昼時なので島は南国リゾートのような雰囲気であった。
立磨はいつもの黄色いパーカーとストレッチパンツ。
ジンリーも、上下黒のパンツスーツにスニーカーとジャングルのある無人島に来る格好ではなかった。
「水着を持ってくれば良かったですね、残念です」
「ジンリーの水着姿は、怪獣もいない所で見せてくれ」
二人共人間の姿になっているが龍なので、周囲の怪獣達が人間に化けた番の怪獣が来たと囃し立てつつ二人から距離を取る。
「……食べている怪獣と一緒にされるのは心外ですね、霊獣ですよ私達は?」
「うん、一般の人には区別がつかないだろうからな? 龍に似た怪獣もいるし」
「風評被害と名誉棄損で訴訟したいですね、お昼ですしご主人様と一緒にこの島の怪獣達を食いつくしてしまおうかしら?」
「どうどう、殺気を出さない! 環境破壊は駄目、この島に
「ええ、奴らが何を狙っているのかを調べてその陰謀を砕きましょう!」
「おう、俺達と金龍合神の力を見せてやる♪」
そう言って二人は、目の前に広がるジャングルを目指した。
彼らによると忍法とは、元来は宇宙の技術であり遥か太古の地球に伝来した物が地球の忍者の忍法であるとの事。
地球人が良く知る忍者の姿とは、彼ら宇宙忍者の宇宙服姿が由来だそうだ。
「中国で戦った下忍達は変身すると怪人だけど、中忍からは巨大な怪獣化もするんだよな?」
「はい、過去に奴らを倒して食した祖父が絶対に食うなと厳命したそうです」
「寄食にもほどがあるぜ、まだそこらに実ってるバナナの方が美味そうだよってバナナ?」
「マンゴーや桃も生えてますね、植生がカオスです」
「いや、クールな美人顔で自然な仕草で野生の果物もいで食うなよ!」
「愛する人に美人と褒められるのは、嬉しいですね♪」
「ツッコミが追いつかない!」
敵の気配を探りながらジャングルを進む二人、地域も身がなる時期も違う果実たちが同じ場所に生息している森の生態系はカオスであった。
どんな毒やヤバい効能があるかわからない果物を、自然な所作で平気でもいで食うジンリーにツッコみつつ歩く。
龍は毒は効かないとは聞いてはいても、心配は心配だ。
「この辺りではまだ、敵も腕に時計の跡がある原住民は出て来ませんね?」
「大丈夫かジンリー? 漫才も楽しいが、いつでも変身して戦えるようにしておこうぜ?」
「ご安心ください、平常運転です♪」
二人がバックルを取り出し、いつでも変身できるようにと身構える。
立磨達は自分達に向けられた気配を感じていた、相手は敵か味方かと出方を伺う。
「……失礼、警戒を解いてくれないかな?」
「あ、あなたはもしやユニバーマンさん?」
「失礼いたしました、先日はどうも」
立磨が驚き、ジンリーが一礼する。
木々を搔き分けて現れた相手は、黒のスーツを着た七三分けの生真面目そうな老人男性だった。
「変身前では初めましてかな、ユニバーマンこと
老人が笑顔で名乗る、先日の巨大デーモロイド戦で共闘した宇宙からの巨人の人間モードであった。
「黒田氏も、もしや凶星忍軍を追ってこられたのですか?」
「いや、怪獣相手にトレーニングと技の研究に来たのだが事件のようだね?」
「ええ、調査と退治です」
「そうか、私に協力出来る事はあるかな?」
「ありがとうございます、事件の方は俺達でがんばりますから大丈夫です♪」
「そうか、私はトレーニングついでに島の怪獣達の動きを抑えよう健闘を祈る♪」
ジャングルの中、黒田氏と話をする立磨達。
地元の怪獣達は黒田氏に任せて、立磨達はジャングルを進む。
そして辿り着いたのは、台形状の古代神殿と言うべき遺跡であった。
「何かの遺跡か?」
「ご主人様、敵です!」
「うおっ、と! 出やがったな!」
立磨の足元に手裏剣が刺さる、彼らの前に現れれたのは灰色の巨大な頭に忍者装束というグレイ忍者とあだ名で呼ばれる怪物達。
凶星忍軍の戦闘員である、下忍達であった。
「良し、ドラゴンシフト!」
「ドラゴンシフト!」
立磨とジンリーがバックルを装着して、ドラゴンシフターに変身する。
灰色の忍者達の手裏剣は、変身時に発生したエネルギーで弾き返し幾人かの敵兵達は倒された。
ヒーローの変身中を狙えば勝てるわけではないのだ。
「ドラゴンシフター参上!」
「同じく、ドラゴンシフター二号参上です!」
戦いの構えを取り軽い名乗りを上げる、Wドラゴンシフター。
それに対して、生き残った下忍達が二人に襲い掛かる!
だが下忍達は攻撃を回避され、逆にドラゴンシフターと二号のパンチやキックで粉砕されて行った。
「戦闘員が出て来たと言う事は、あの神殿が敵の狙いだな!」
「ええ、おそらく敵は中にいるはずです!」
「……
「うおっとっ!」
「……くっ!」
Wドラゴンシフターは神殿に向かって走ろうとする、だが神殿の中から飛び出して来た漆黒の忍者による手裏剣の雨によって阻まれた!
「ほう、わが
漆黒の忍者が面頬の下で微笑む。
「出やがったな、
「敵の幹部の一人ですか!」
二号がドラゴンシフターの背中を守りに立つ。
「我らの転移基地を嗅ぎつけた小蛇共か、無惨に散るが良い」
「侮るなよ、行くぜ二号っ!」
「はい、ダブルファンロンクエイクです!」
黒星がドラゴンシフター達を分身の術で包囲するが、ドラゴンシフター達は二人同時の震脚で地震を起こして黒星を転倒させて分身を打ち消す!
「倒れた奴は偽者、本体はそこだっ! 緑龍フォーム、樹木縛りっ!」
「赤龍フォーム、
「ぐわ~~っ!」
ドラゴンシフターが、宝珠を変えて緑色のフォームになる。
そして、分身が消えて倒れた偽者は無視して木陰に隠れていた本物の黒星を樹木の蔦で木に縛り付ける!
そこに赤龍フォームにチェンジした二号が廻し蹴りで、燃え盛る火炎の輪を飛ばして叩き込んだ!
「おのれ、何故我が術を見破った!」
ドラゴンシフター達の攻撃を受けて、体から焦げた煙を上げつつもまだ生きていた黒星が呟く。
「他のヒーローなら知らんが、俺達は生き物の生命力を知覚できるんだよ!」
「相手の生命力の推移が見える以上、こちらに欺瞞は通じません!」
「小蛇と侮り遊びに走った我の不覚か、ならば巨大戦で仕留める!」
黒星が懐から巻物を取り出して紐解く!
「
すると黒星の背後に、巻物に描かれていた頭部と胴体は黒い蝙蝠で手足は鋭いヒレを持つ銀の鮫と言う巨大怪獣が巻き物から出現して黒星はその体内に入り込んだ。
「ならば俺達もロボで勝負だ、来い金龍合神っ!」
「金龍力士一号と二号の射出と自動合体を確認、間もなく上空に到着です!」
敵が怪獣になればこちらもと、ドラゴンシフター達も金龍合神を呼び出して機体が自分達の上空に現れた所で二人は全力でジャンプして機体に乗り込んだ。
「金龍合神、見参っ!」
「怪獣を倒して、敵の基地を破壊しましょう!」
孤島を舞台に怪獣とロボが相対する!
「馬鹿め、機械の塊なぞバッシャークの超音波で粉微塵よ♪」
暗い怪獣の体内で、黒髪に白い肌の美青年と言う素顔を晒した黒星がほくそ笑む。
黒星はヒューマノイドタイプの宇宙忍者、彼の本領は怪獣を召喚して一体化してロボットのように操る術だ。
黒星に操られたバッシャークが口を開き超音波を放つ。
「龍の雄叫びは蝙蝠より上だ!」
「我らが怒りの叫びを聞けっ!」
バッシャークの超音波を耐えながら、ドラゴンシフター達がコックピットを操作するとマイク状の装置がコンソロールから出てくる。
「「ファンロンシャウトッ!」」
ドラゴンシフターと二号が同時にマイクに向かい叫べば、金龍合神の胸部装甲が両開きに展開して現れた金の龍の頭が口を開けて相手よりも強力な超音波を放つ!
「ぐわ~~っ! くそいまいましいっ! だがまだまだだっ!」
バッシャークが悶え、中の黒星も耳目から出血するが耐える。
互いに超音波のジャブの応酬から、バッシャークが左腕の鮫頭を開いて突進っ!
「相手が鮫の頭なら、こっちは龍の頭だ♪」
「
金龍合神も肩の龍頭を両腕にスライドさせて拳に装着、相手の一撃を弾いてから相撲の喉輪のようにガブリと噛み付き怪獣の喉の肉を引きちぎるっ!
「ぎゃあああっ!」
金龍合神のこの一撃は、怪獣と痛覚も繋がっている黒星には大打撃であった。
「よし、こいつで止めだ! 赤龍宝珠セット!」
「一撃で灰も残らず火葬しましょう♪」
ドラゴンシフターがコンソロールのスロットに赤い宝珠をはめ込む。
「「
ドラゴンシフターと二号が同時に叫び、機体のレバーを押し込む。
再び金龍合神の胸が開き、中の龍の頭が口を開いて超高熱火炎を吐き出した!
その炎はバッシャークだけを火だるまにして、中にいる黒星ごと包み焼きにした。
断末魔の叫びを上げる事も出来ず、バッシャークと黒星は消滅したのであった。
「よし、最後はあの神殿を破壊だな」
「遺跡に似た形で紛らわしいですが、敵の基地ならば破壊しないわけには参りませんね♪ 龍頭鉄拳弾ですっ!」
ドラゴンシフター二号が操作して、敵の神殿型の基地は金龍合神によって完膚なきまでに破壊された。
機体から降りて金龍合神を自動操作で整備工場へと帰還させると、二人は変身を解除した。
「ふう、お疲れ様♪ ロボとジンリーのおかげで何とか勝てたぜ」
「お疲れ様でした、二人の愛の力の勝利です♪」
「否定はしないが、チョッパーやバンクラーともいつか巨大戦になるのかなあ?」
「はい、チョッパーはともかくバンクラーは確実に巨大戦力を保有してますので」
「よっし、勝って兜の緒を締めよで行こうか? これからも宜しくな♪」
「ええ、宜しくお願いします♪」
戦いを終え、互いに拳を突き合わせる立磨とジンリーであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます