第14話 ロボット工場見学

 「何とかヒーロー免許をロボが乗れる仕様に書き換えられたぜ♪」

 「お疲れ様でした、これで二人とも巨大ロボが使用できますね♪」

 「だな、前にも話は聞いたけれど俺達のロボットってどういう形になるんだ?」

 「二十五メートルサイズ二体が合体して、五十メートルになる予定です♪」

 

 立磨とジンリーが事務所で話し合う、パソコンでは二体のロボが背中合わせになり合体と手足が変形して一つのロボットになるグラフィックが流れる。


 「なるほど、この金龍力士一号ごんりゅうりきしいちごう二号にごうが合体して金龍合神ごんりゅうごうじんになるのか」

 「はい、元々仙界には黄巾力士と言う巨大ロボットの宝貝がありましたので♪」

 「基礎技術は昔からあったのか、しかしその割には流行らなかったんだな?」

 「……自身の武勇こそが一番、と言う風潮が人界でも天界でもありましたので孫大聖とか関帝聖君等を代表に」

 「ああ、なら仕方ないな! まあ、そう言う英雄が多いよなあっちって」

 

 それはさておき、金と黒のカラーリングで日本のアニメに出て来そうなスーパーロボットなデザインは素晴らしかった。


 「……えっと、ジンリーさん? 何と言うか、素敵な笑顔が眩し過ぎませんか?」

 「まあ、お前は俺の太陽だよジンリー♪ 天地開闢の頃から愛してるだなんて♪」

 「そう言う気持ちはあるけれど、混沌とかから言葉を汲み取ってません?」

 「リンクはしております、きちんとおはようからお休みまでリモートで見守らせていただきましたし定期連絡もいただいておりましたがあなたが傍にいる幸せ♪」

 

 滅茶苦茶ヒロインモードになっているジンリー、主演女優賞物だ。


 「離れ離れになっていた二人がまた一つに♪ 何と、素晴らしい事でしょう♪」

 「伝わって来る、ジンリーが超喜んでくれてるのが伝わって来る!」

 「私にも愛に戸惑うあなたのお気持ちが伝わって参ります、ですが良いのです私の愛に染まて下さいませ♪」

 「いや、何て言うか愛され過ぎてたまらないです」


 オーバーなほどに自分に愛情表現をしてくるジンリー、恋愛経験がないままに生きて来た立磨は彼女の愛の奔流に飲まれつつも心地良さを感じていた。


 そして、これが失いたくないほどの愛なのかと感じていた。


 「私のあなたへの愛は不滅です、天にも冥にも邪魔はさせません♪」

 「俺も、ジンリーとずっと一緒で痛いし他の奴に渡したくない」

 「……はああ♪ 何と言う素敵なお言葉、このジンリー、ますますあなたが愛おしくなりました♪」

 「うん、その感情は伝わって来てるから愛し合いながらお仕事もしようか♪」

 「はい、今度はロボットの件で二人で中国の工場へ出張です♪」

 「了解です、支社長♪」

 「ええ、所属ヒーロー様♪」

 

 砂糖ダダ洩れな空気になった事務所内で、二人はロボットを建造している工場への出張の打ち合わせを行った。


 「お前さん、学校に来てるより仕事してる方が多くないか?」

 「彼は兼業学生だから仕方あるまい、学費も生活費も会社持ちだそうだし」

 「めちゃめちゃ会社に縛られてて社会の縮図じゃん、たっつん♪」

 「ああ、来週からまた出張で島を離れるよ」


 久々に登校して、教室で友人達に色々言われる立磨。


 仕事は出席扱いなので、出席日数的には問題はないが帰国後の補習が立磨には精神的に辛かった。


 「まあ自分で選んだ道だから、これでも仕事と学業のバランス取ってもらってる」


 公務員扱いとか、芸能活動してるヒーローはもっとハードだろうなと思いつつ立磨は数学や現代文に英語に古文とその日の一般科目の授業や魔法基礎や超能力実習などの専門科目の授業をこなして行った。


 放課後は、学校帰りに目撃した事件の解決に当たる。


 街のあちこちで悪の組織の本筋や下部団体やらが事件を起こしているので、立磨のような学生のヒーローもプロのヒーローも小銭稼ぎには事欠かなかった。


 「ヒッヒッヒ、可愛い子猫ちゃん♪ ネットで買った、このお薬で怪物になりましょうね~♪」

 「はい、そこの人! 違法薬物所持と動物虐待未遂で倒して、拘束します!」

 「げげ~っ! ド、ドラゴンシフターッ!」


 路地裏の見回りでダンボールに入った子猫に、チョッパーの怪人化薬を注射しようとした一般人の青年を見つけたドラゴンシフター。


 素早く死鶏捻頭しけいねんとうで青年の首を捻って倒し、犯人と証拠の怪人化薬を確保。


 ダクトテープで倒した青年の全身を拘束して、警察へと引き渡した。


 「ついでに、猫の里親探しもお願いします♪」

 「わかりました、猫の方は婦警達に頼んでおきます」


 犯人だけでなく、ついでに捨て猫もやって来た警察に引き渡したドラゴンシフターであった。


 「お帰りなさいませ♪ 警察から賞金の電子明細が届きました、捨て猫の里親も見つかると良いですね♪」

 「ただいま、小さな事件だけど防げて良かったよ」

 「報酬は少額とはいえ小さな見逃しが大事件に繋がりますから、ご立派です♪」

 「ありがとう♪ 今日の俺の他の仕事は?」


 帰宅した立磨は、ジンリーに仕事の確認をする。


 「本日は、後は日報を上げていただければ上がりにしましょう♪」

 「了解、じゃあさっさと書くよ♪」


 出張前の日々は、ダークカルテットの四大悪の組織の本筋による大きな事件などはなく比較的に平和に過ごせたのであった。


 「マジではるばる来たけど砂漠の工場か、何と言うか世紀末的だな」

 「諸事情により、タクラマカン砂漠の工場で製造とテストを行っております」


 立磨達が訪れたのは、砂漠に立つ工場であった。


 「ソシャゲの課金でロボが建つって、ユーザー的にはどうなんだろ?」

 「ゲームユニットとして、運営中の全ゲームに無料配布されてユーザーに還元されますので問題なしです♪」

 「無料配布、良い言葉だな」

 「我が社が運営するゲームのガチャは、健全ですよ♪」

 「そう言う事にしておこう」

 「あの大手メーカーともコラボして、限定販売のキット化などの商品展開も予定されてます♪ グッズの監修も今後の仕事になりますよ♪」

 「目立つ所に、スポンサーのロゴ刻印される奴だな」

 「商売ですから♪」


 ヒーローも経済や社会活動からは逃げれない、正義も悪も世知辛いが金がかかるのを身につまされる立磨であった。


 立磨達は、事務仕事などをする施設へと入った。


 「ようこそ、支社長に立磨さん♪ お待ちしておりました♪」


 太めだが、清潔感のある容姿で眼鏡をかけた作業着姿の中年男性が二人を受付で出迎えた。


 「よろしくお願いします、りゅう工場長♪」

 「お願いします♪」


 立磨達も挨拶を返す、工場長に案内されてまずは工場長室での話となった。


 「正直、お二人に来ていただけて助かりました♪」

 「開発面で何かトラブルでも?」

 「いえ、開発の方は従業員一同スーパーロボットを作れると高いモチベーションで建造作業を行いましたよ♪」


 工場長が何か良い笑顔でサムズアップしたので、立磨達もノリに乗って微笑み返す。


 自分でやっておいてだが、恥ずかしさから咳払いした工場長が話を再開する。


 「後はパイロットであるお二人に、テストしていただくまでこぎ着けました」

 「と言う事は、問題は敵襲ですか?」

 「はい、時々野生の怪獣が出るのはこちらじゃ普通なのですがどこから情報が漏れたのか? 悪の組織の忍者や怪人が、開発作業の妨害をして来まして」

 「なるほど、では敵を倒しつつロボットのテストをしてくれと?」

 「はい、お二人とも宜しくお願いします」


 工場長の話を受けて、立磨達は泊まり込みで出張中のロボットのテストと工場の防衛を頼まれた。


 「おお、これが俺達が使わせてもらう金龍力士一号と二号か♪」

 「二号がどことなく女性的なフォルムですね、まさに理想の夫婦ロボ♪」


 自分達の機体が格納されている工場を見て、感動する立磨とジンリー。


 内部のハンガーには雛人形のように左右に並んだ、二体の巨大ロボット。


 一号と二号のどちらも胸に金の龍の頭が付いた、特撮やロボットアニメの主人公機体のようにヒロイックなデザインのロボットであった。


 「どうだい、坊主にお嬢さん♪ 日本の有名なデザイナーに依頼したから坊主みたいな日本人好みのヒロイックなデザインに仕上がってるぜ♪」

 「いや、マジで感動してます♪」

 「ロボとは少年の憧れとは聞きますが、私も好みのデザインです」

 「ま、見た目だけじゃなくて戦闘での性能も保証するぜ♪ 俺はこれでも、日本のアニメとかが好きで日本の大学で学んで来たんだ♪」


 立磨達を案内してくれている、ツナギ姿にサングラスと言う風体の老人男性こと班長のちゃんさんが微笑む。


 「ありがとうございます、きちんと運用できるよう精進します!」

 「おう、お前さん達は無茶し過ぎるなよ♪ これから、こいつらは合体に武装に戦闘訓練にと色々とテストしなきゃならねえんだからな♪」

 「はい、お任せ下さい♪」

 「まあ、宜しく頼むわ♪」


 次にハンガー以外の施設も見て回る、電源室やコンピュータールームなどの設備に武器庫もあった。


 「何故、この工場に武器庫があるんだ?」

 「自衛の為ですね♪」

 「そこまでヤバいの?」

 「軍や警察は信用できませんので、社員達は全員戦闘要員も兼ねています」

 「マジかよ、そういや工場長も正体が龍だったな?」

 「ええ、工場長は白龍です♪ ちなみに我が社の傭兵部門、ロンスターガードもこの工場に一個分隊を常駐させているので彼らの分の武装もこちらにあります」

 「うん、自警や自衛は大事だよね」

 「後、こちらの工場では私達の変身後のフィギュアなど自社のグッズも生産しておりますので防衛は必須です」

 「商売的にも重要な拠点だったんだな、この工場」

 

 社員食堂でチャーハンを食いつつ話し合う二人、立磨がそっと目を凝らすと他の工場の従業員達も龍のオーラが見えて身内である事がわかった。


 その後は工場内の各部署への挨拶回りの顔合わせと、テストメニューの確認などを行った後に二人は用意された宿舎にやって来た。


 「ふう、怪人と戦ってる方が楽に感じられたぜ」

 「まあ、今後は巨大な敵とも戦う上で必要な事ですから♪」

 「しかしミニキッチンにユニットバスに二段ベッドって、詰め込んだ部屋だな?」

 「不合格ですね、仙界の別荘と繋げましょう♪」

 

 ジンリーが壁に呪符を貼り付けて異界へと繋がるドアを設置して、立磨達は異界で休んだ。

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