第13話 実機訓練と試験
「ふう、レバー操作型も単独型なら色々できるようになって来たぜ♪」
実機での訓練、ドラゴンシフターに変身した立磨がまず最初に乗ったのは教習用に作られた非武装で十メートルサイズの灰色の四角い胴体で二足歩行型。
倉庫や工事現場で使用される、リフターと呼ばれる人型ロボットだった。
それを操り市街地を模したコースを歩いて周回し、障害物を避けたり受け止めたりして進んで行きゴールした。
「ドラゴンシフターさん終了です♪ 機体をハンガーに戻して降りて下さい♪」
「了解しました、訓練機体十五番ハンガーに戻します♪」
コックピットの中で教官の通信に従い、ドラゴンシフターは機体を巨大な梯子車に似た移動式ハンガーに歩いて向かい後ろ向きにしてセットする。
ガシンと大きな音がして、機体のコックピットのドアとハンガーのエレベーターが接続されたのを確認するとドラゴンシフターはコンソロールを操作して訓練を終えてシートベルトを外してエレベーターに乗って降りてきた。
「お疲れ様です、スタンプを押しますね♪」
「ありがとうございました♪」
「次は合体ロボットの教習になります♪」
整備服姿の女性教官から、修了証明のスタンプを貰えた立磨であった。
合体ロボの教習が行なわれる滑走路には、立磨以外に四人の受講者がいた。
分離されている機体は全て灰色、戦闘機が二機、戦車とトレーラーとクレーン車と言う編成で用意されていた。
「はい、受講者の皆さん揃いましたね♪ 皆さんには臨時のチームを組んでもらい基本的な五体合体のロボの訓練を受けていただきます♪」
戦闘機乗りのような姿をした、黒いボブカットの美しい女性教官が語る。
「教官、質問です! もしや、ブルーウィングさんでは?」
「はい、ウィングファイブのブルーですが今は教官職も兼任しています♪」
受講者達が驚く、ウィングファイブは勇者隊と言う三人から五人が平均人数のチームヒーローの中でも航空機型ロボットの扱いで武名を轟かせていた。
「さあ、皆さん♪ 勇者隊になった気分で、乗り込みましょう♪」
「「ラジャーッ♪」」
立磨を含めた五人緒受講生は教官の号令で、変身して散開し機体に乗り込む。
「壱号戦闘機、トレーニーワンこと名古屋カイザー搭乗♪」
左腕になる戦闘機の担当するのはドラゴンシフターと色被りな、金色の鯱スーツの戦士が語る。
「弐号戦闘機、トレー二ーツ―ことプリティキック登場しました♪」
右腕になる戦闘機に乗るのは白いフリル付きのドレスを着た、黒髪ツインテールの魔法少女だ。
「参号戦車、トレーニースリーことクジラ丸搭乗じゃ♪」
胴体と頭担当の戦車に乗るのは、赤い陣羽織を着たクジラ頭の獣人。
「
左足のトレーラーに乗るのは、リンゴを模した赤いヒーロースーツの戦士。
「伍号クレーン、 トレーニーファイブことドラゴンシフター搭乗だぜ♪」
ヒーロー達が搭乗した事を報告し、最後に右足担当のクレーン車に乗ったドラゴンシフターが叫んだ。
「それでは、合体訓練開始♪」
教官が叫ぶと、全機体が動き出した。
「レーダーで僚機を確認しながらフォーメーションを取り、合体表示が出たらスイッチを押すか♪」
ドラゴンシフターが、両手でレバー操作と足でペダルを踏んで発進させる。
モニターを見ながら自分の乗ったクレーン車を、参号と肆号と位置を合わせれば機体同士に合体の為の牽引ビームが放射された。
「良し、表示が出たな合体♪」
「「合体、トレーニーロボ♪」」
五台のマシンが一つになって立ち上がり、灰色の巨人トレーニーロボが誕生した。
ドラゴンシフター達パイロットは座ったシートごと移動し、胴体である戦車部分へと集合した。
「皆さん、合体完了しましたね♪ 次は、各自のパートを操作して見て下さい」
教官からの通信が入る。
「各自パートごと? 足は俺と、アップルレッドさんで交互に操作か?」
「その辺、旧式だから融通が利かないのがまた乙なんじゃよ♪」
「MTの車にこだわる人みたいですね、家のお父さん見たい♪」
「やめて、その言葉は俺とクジラ丸さんには刺さる!」
「取り敢えず、転倒しないようにすり足で僕から行きます」
「了解、二人三脚のノリだな♪」
ドラゴンシフターとアップルレッドが交互にレバーを操作して、トレーニーロボがズンズンと音を立てて歩き出す。
そして、名古屋カイザーとプリティキックが、左右の腕を操作して見せた。
無事故で教習を終えたドラゴンシフター達が機体を降りると、教官が彼らの元にやって来た。
「お疲れ様でした、合体ロボはパイロット同士のチームワークが重要です♪ テクニックよりもその事を、皆さんに学んでいただきたいので合体ロボの教習機体は旧式なんですよ♪」
教官が説明してくれた、彼女の言葉にドラゴンシフター達受講者は神妙に頷いた。
こうして、レバー操作型のロボットの教習をクリアしたドラゴンシフターだった。
次に受けたのは、運動トレース型の機体の教習。
レバー型とは別の訓練用の敷地へと、レンタルスクーターで移動する。
やって来た場所は、陸上のグラウンドのような場所。
灰色の細身の巨人と言う姿の機体が、体育座り状態で待機していた。
「何か、これは巨大ヒーローに似てるな?」
そんな感想を呟きつつ、立磨は巨人の腰にあるハッチを開けて中のタラップを上りコックピットへと入る。
機体の球体コックピットの中、動作トレース用のグローブとシューズにヘッドギアを身に付けた立磨が呟く。
「日高立磨さん、トレースセットは身に付けましたか?」
「はい、この機体は変身しないでやるんですね?」
「ええ、この教習機は元が生身のパイロット用なので変身せずに受講していただきます」
コクピット内に浮かぶデジタルスクリーンに映る教官は、軍服のようなオリーブ色の制服の上からでも目立つ筋肉質な体付きをした短い茶髪の美青年だった。
立磨が教官を、体操番組のお兄さんみたいだなとか思っていると教習が始まった。
「はい、それでは運動トレース型の教習を始めます♪ まずは人体と同じく基本動作の立つ事から始めましょう♪」
スクリーンの向こうで教官が体操選手姿に変身し、教育番組の体操講座のような時間が始まった。
教習が始まるとコックピット内に教官との通信用のデジタルスクリーンとは別に実際に機体が動いている様子を流すスクリーンが現れる。
教官の指示に従い、立磨はコックピットの外で機体が自分と同じ動きをするの様子を見ながら中でラジオ体操を行う。
その他にも正拳突きでのパンチや、蹴り技などの格闘アクションを行た。
「運動トレース型は第二の人体です、ただしパイロットの動きが機体に伝達するまでに時間の差が出てしまうのが難点です」
「そう言えば、正拳突きでも突く時と引く時にもズレが出てました」
「ええ、それは伝達のタイムラグによる物です訓練をすればタイムラグを減らす事は可能なので頑張って下さい」
「ありがとうございました」
教官に礼を言い教習を終えた立磨、機体を降りると肉体の疲れを感じ脳波操作型の実機は手を出す事を止めて戻る事にした。
「変身しないでロボに乗るのはマジで疲れた、戻って飯にしよう」
龍になって強化されたはずだが、人間の姿では龍の力を使うと意識しないと龍の力が使えず感覚も人間と変わらないので長時間の車の運転ばりに体に疲労が来ていた。
座学を受ける教室棟に戻り、食堂でカレーを五杯ほど食って腹を満たした立磨。
他に食堂を利用している受講者のヒーロー達も皆、それぞれの食事をモリモリ食べて体力の回復に勤しんでいた。
「やっぱり、ロボットの操縦は体力勝負だな乗る前は節制しないと駄目だけど」
食事を終えて、そんな感想を呟く立磨であった。
「取り敢えず、順調にクリアしているけれどそっちは大丈夫か?」
「はい、心身共に無事ですが直接ご主人様と触れ合えないのが不満です♪」
「そうか、ジンリーはいつも通りだな♪」
「私はご主人様成分が不足して来たので、お早いお帰りをお待ちしております♪」
「ああ、俺もジンリーがいないと調子が出ないしな♪」
「実技は心配しておりませんが、学科の方が心配です」
「学科の方も勉強はしているから!」
そう言って、泊まっている個室でスマホを切りジンリーとの通話を終える立磨。
実機も各種類の一通りの操作の教習を終えて、残すは明日の試験のみであった。
迎えた翌日、試験は学科から始まった。
「それではこれより、学科試験を開始します」
立磨達受講者は教室の机に座り、配られた問題を解答用紙に記入して行く。
法律、性能、動作、巨大ロボットを扱う事に付いて必要な知識が試される。
長いようで短い三十分が終わった。
教室を出て、合格発表を待つ受講者。
自動車などと同じく、待合所でも見れる電光掲示板に番号が表示され悲喜こもごもの叫びが木霊する。
「よし、学科がクリアできた♪ 後は実技だけだ♪」
掲示板で自分の番号を発見した立磨は受付で書類を貰い、最後の難関である実技試験に進んだ。
「実技は機体が選べるのか、なら運動トレース型で行くぜ!」
レバー型と迷ったが、やはり運動トレース型が一体感が合って好みだったので運動トレース型での試験会場へと向かう。
到着すると、教習の時の体操のお兄さんな教官が待ていた。
「よろしくお願いします、運動トレース型の試験は私が務めさせていただきます」
「試験内容は格闘ですね♪」
「はい、三ラウンド二本選手で合格です♪ それでは機体に登場して下さい♪」
教官の機体と向かいあう形で待機している機体に乗り込み、トレースセットを身に付けて起動する立磨。
灰色の金属の巨人同士が、拳を突き合わせて試験が始まる。
「トレース型は人体と一緒、自分の体と同じ!」
ジンリーから習った八極拳を想い出し、組み付き狙いで出された教官の機体の腕をを避けての肘打ち。
バランスを崩さぬように蹴りを使わず、相手の動きに合わせての肩での体当たり。
「猛攻硬爬山っ!」
最後は、左の肘打ちからの右の肘打ちと肘打ちの連続による猛攻硬爬山を決める。
「合格です、おめでとうございます♪」
「ありがとうございました♪」
教官との実技試験を乗り越えて、立磨は巨大ロボを操縦する資格を手に入れた。
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