第11話 二号誕生、Wドラゴンシフターへの道
「ジンリーも同じバックルで変身か、ありがたいが気を付けてくれよ?」
「まあ、私の身を案じてくれているのですね♪」
「当たり前だ、俺にとってはもうジンリーは失いたくない存在なんだよ」
「私もです、だからこそ今までよりも傍にいて共に戦いたいのです♪」
変身を解き、普段着の黄色パーカーにグレーのストレッチパンツと言う姿に戻った立磨はジンリーに告げる。
知り当て日は浅いが、心身は深くつながった伴侶と言うべき女性を案じる立磨。
自分を案じる立磨に頬を赤く染めながら微笑むジンリー、そんな彼女の手には立磨と同じバックルと青い宝珠があった。
「ご主人様の赤い宝珠は火と熱で、私の青い宝珠は海や水の力を操れます」
ロンスター本社のラボ、普段の黒いパンツスーツ姿で宝珠について語るジンリー。
立磨のドラゴンシフターの変身テストに、彼女も付き合いに来たのだ。
「と言う事は、二人で宝珠を交換し合いながら戦えるのか?」
「はい♪ 属性チェンジでコンビネーションアタックも可能です♪」
「もしかして、ジンリーもヒーロー免許持ってたの?」
「はい、日本ではなくこちらで受けて国際免許にしてます♪」
ジンリーの周到さにずっこけかける立磨、それを見たジンリンが笑う。
「お姉ちゃんは用意が良いから♪」
「いつか来るべき時の為に、自分と周囲に備えをさせていただけです♪」
「いや、君ら一家って何を考えているのかわからねえよ本当に」
「まあ、詳細は語れば本が三冊分ほどになるので♪ 私達が、ご主人様の味方である事は確かです♪」
「そうそう、もうグルグルに守るから♪」
「うん、もう巻かれてるんだった俺♪」
笑う立磨、もう自分はこの愛らしいドラゴン達からは逃げられない。
「では、私も変身いたしましょう♪ ドラゴンシフト!」
ジンリーもバックルを腰に付けてベルト化し、変身する。
バックルの空きスロットに宝珠をセットして回し、龍のオブジェの手を自転車等に付いている弾いて鳴らすゴングベルのように動かしてスイッチを入れるジンリー。
そして、変身が始まると中国式の時計のように足を回転させる旋風脚をして足から装甲を纏って行き女性的なフォルムのドラゴンシフターへと変身を遂げた。
「ドラゴンシフター二号、青龍フォームで推参ですっ!」
銅鑼が鳴り響くBGM がベルトのバックルから鳴り響き、青い色のフォームのドラゴンシフター二号が誕生した。
「おお、凄いな♪ そういう風に、基本フォームからフォームチェンジするのか」
「はい、基本フォームに変身してお揃いですねと言いたかったのですが」
「いや、それは後でな」
立磨が感心しつつツッコむ。
「で、今後はお姉ちゃんも戦闘で出張ってる時は私が日本の事務所に詰めるから♪ 近い内に、日本の方の地下に第二ラボを設置するんで宜しく♪」
「私達の愛の巣に入られたくはないのですが、業務上止むをえません」
「いや、その言い方は間違っていないがやめような? 何と言うか、まだ恥ずかしいから!」
「あはっは♪ 新婚家庭にお邪魔する気はないから安心して♪」
「安心って、言葉の辞書を引こうな二人共?」
二号とジンリンに呆れた立磨であった。
「ふう、向こうでは色々あったが無事に日本に帰って来れたぜ♪」
「やはり、二人の愛の巣は落ち着きます♪」
中国から帰国した二人、事務所の住居スペースでくつろぐ。
「まあ、あっちでも言ったけど自分の身も大事にしてくれよ?」
「はい、私達は互いに一人だけの心身ではありませんから♪」
ジンリーが立磨に近づき抱き着く。
「勿論、産休と育休はしっかり取りますのでご安心ください♪」
「……あ、ああ! そうなったら、もうしっかりと向こうで休んでくれ」
「はい♪ でも、その時はご主人様も一緒ですよ♪」
「父親が働かないのは駄目だから、向こうの会社で書類仕事も覚えて働くよ」
入籍はまだだが、その前にそう言う事態になるという関係をジンリーと定期的に構築している立磨。
立磨は、ジンリーと言う姉さん女房に手玉に取られまくっていた。
「たっつん、お帰り~♪ お土産は何かな~♪」
「こら虎吉、そうやって土産をせびるな!」
「お帰り、まあこっちはいつも通りだ」
「俺の方は、変わり過ぎたけどそっちに何もないのが安心だよ」
「いやいや♪ 俺、変わったよん♪ ほら、免許書き換え~♪」
「おお、虎吉の免許に特機が追加されてる!」
翌日、久しぶりの学校で友人達と再会した立磨。
虎吉のヒーロー免許に巨大ロボットなどの
「虎は、自分の好きな事には強いからな」
「徹っちも、委員長も人の事は言えないっしょ♪」
「間違ってないけど、お前に言われると寒い」
「まあ、いつも通りだな総合的に」
クラスの付き合いのある友人達を見て、立磨は微笑んだ。
龍の力を得ても頭が良くなるわけではないので、心の中でひいひい言いながら問題に取り組んで一般教科の授業を乗り越えて行く立磨。
「……く、会話はわかるが読み書きは別ってファンタジーめ!」
「龍の力って、必ずしも便利と言うわけではないんだな」
「中国の龍は、頭も良いというイメージだがな?」
「悪くはないけれど、勉強しないと駄目だって言ってた」
一部の授業で補習になっており、委員長と徹と三人で受けた立磨。
授業が終わり、そんな事を語ってから寮生な彼らと別れて一人で下校する立磨。
ちょっと小腹が空いたので、住宅街方面の商店通りへと向かう事にした。
「確か、こっちに行くと虎吉が言っていた店があるはずっ!」
角を曲がった立磨が見たのは、目的の店から爆炎と共にカメムシ型の怪人が飛び出して空へと去っていく光景だった。
「マジかよっ、ドラゴンシフト! 赤龍フォームッ!」
立磨は早速赤い宝珠の力で、真紅の装甲となったドラゴンシフターに変身し燃え盛る炎を超高速で口から吸い込んで消火し一気に火災を鎮めた。
其処からベルトを回して、基本フォームに戻り店に突入するドラゴンシフター。
「大丈夫ですか? 助けに来ました!」
爆発で荒れた店内の廃棄物を、大地の力で原子分解して片付け怪我人には金色の光を当てて傷を癒して応急処置をしていく。
「あ、ありがとうございます! み、店がっ!」
「取り敢えず救急車と警察に連絡しました、こちらは怪人を追います」
応急処置のお陰か、意識を取り戻した店の人に取り敢えず黙ってもらい警察と救急へと連絡するドラゴンシフター。
そしてやってきた警察と救急隊員に軽く事情を話し、ドラゴンシフターは跳躍してから自力で金の龍となり空を飛んだ。
臭いを辿り敵を探すドラゴンシフター、視覚を拡大させて臭いの方角を見ると怪しい白の調理服姿の男を路地裏で発見した。
「……へへっ、あの店長を店ごとやてやったぜ♪」
「見つけたぞカメムシ男、大人しくお縄に付け!」
「げげっ! ヒーローか、ふざけんな!」
路地裏に降り立ったドラゴンシフターに、変身して襲い掛かるカメムシ男。
「怪人薬での変身、チョッパーか!」
「うるせえ! 俺はこの力で世界を征服するんだ!」
「お前なんかに征服されるほど、世界は甘くねえ!」
カメムシ男のパンチを手刀で捌くと同時に、腕を掴んで捻るドラゴンシフター!
「容赦なく折るっ!」
「ぎゃあっ!」
「ぐはっ、臭っ!」
人間に戻れる段階に見えたカメムシ男に、司法の地獄を思い知らせてやろうと関節技での無力化を狙うドラゴンシフター。
だが、技を決めたと同時にカメムシ男が爆発物レベルのガスを腋から噴出する。
それをもろに浴びて、技を解いてしまうドラゴンシフター。
「腕が痛え、けど今なら逃げられる!」
強い敵とは戦わない、そんな判断力だけは良いカメムシ男は背中から羽を生やして空を飛んで逃げようとした。
「逃がしません! 頭を冷やし、汚れを払いなさい!」
だが、突如ビルの上に現れた青き龍の戦士。
ドラゴンシフター二号が、掌から超高圧の水流を発射してカメムシ男を地面に突き落とした!
「……くそっ、不覚だ! え、二号っ?」
「お迎えに参りましたが、まずは止めを!」
「すまない、チェストっ!」
二号に礼を言い、ドラゴンシフターがカメムシ男の背中に拳で当身をして寄生虫を吐き出させる。
そこから先に帰った二号が、去り際に放り投げて寄越したダクトテープで元に戻ったカメムシ男の手足と口を拘束する。
そして、懸賞金を貰う為に自分が倒した事を証明する退治完了ステッカーを相手の額に張り付けると言う作業を行いドラゴンシフターは立ち去った。
事務所前に戻ったドラゴンシフター、彼の前には青龍フォームの二号が変身した姿のままで待っていた。
「お帰りなさいませ♪ 入る前に洗浄しますね♪」
そう言うなり二号は、光り輝くシャワー状の水流をドラゴンシフターへと放ち彼の全身を洗い流した。
「ありがとう、変身を解いても良いかな?」
「はい、青龍の水の力で変身前のお姿も洗浄できておりますので♪」
「龍の宝珠、応用効き過ぎじゃねえ?」
「暮らしの中に修行ありで、こう言う使い方も操作訓練の一環です♪」
「なら俺も、赤龍の宝珠で料理とかして見るか?」
「その時は、私もご一緒します♪」
そう言い合いながら互いに変身を解いた二人は、事務所へと帰宅する。
「しかし、今回は災難でしたね帰国早々に遭遇とは」
「ここがそういう街だって、今更ながら実感したよ」
「対処できる人間が多い分、小規模な事件が頻発する街ですよね」
「大事件になる前に、地道に火消しができるのがまだ助かるけどね」
カメムシ男の事件について、レポートを書きながらジンリーと語り合う立磨。
企業の所属である以上、会社への報告書は仕上げないといけない。
「そう言えば、ジンリーの方はどうする? 助けてもらった以上は、実績は分け合わないと」
「その件ですが、私はノーカンでお願いします正式発表前ですし♪」
「ああ、お披露目イベントやるって話はマジか?」
「マジです♪ これはもう、ヒーローとしての披露宴とでも言うべき夫婦の共同作業なので絶対にやりましょう♪」
「俺とお前でダブルドラゴンシフターだ♪ って、あれか?」
「はい、あれです♪」
「一緒に八極拳の稽古したのも、発表での演武の為か!」
「はい、ケーキ入刀よろしく息を合わせて決めましょう♪」
立磨はジンリーとそんなやり取りをしつつ、数日後に二人で会社が行なったダブルドラゴンシフターの発表イベントに出場したのであった。
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