第8話 強盗Dクライ魔

 『オレノバールハセカイイチ~ッ!』


 宝石付きの仮面を被った。頭と手足がバール状になったDクライ魔が吠える!


 昼間の住宅街のコンビニ前で、立磨は敵と遭遇した。


 「おいおい、今度は強盗獣と混ざったか? ドラゴンシフト!」


 立磨はドラゴンシフターに変身して、怪人とコンビニの間に割り込む!


 激しい金属音、のしかかる重さ! だがドラゴンシフターは負けずに相手の腕を跳ね除ける!


 「遅いんだよ! ファンロンエルボーッ!」


 外門頂肘の要領で敵に肘打ちを叩き込むドラゴンシフターだが、敵もそう簡単には吹き飛ばない!


 『セカイイチ~ッ!』


 「ならこっちは、銀河一だ! 壺中天こちゅうてんフィールド!」


 周辺への被害を無くすべく自分の背後に黒い異空間ゲートを生み出し、怪人を自分諸共引きずり込むドラゴンシフター!


 「ここなら弁償の心配なく遠慮なくやれる、お前なんかより請求書の方が怖い!」


 水墨画のような世界で怪人よりも社会の方が手強いと言い、戦う二人。


 『バールシャワー!』


 怪人がどこで作っているのか全身から無数のバールを発射する!


 「ドラゴンシャウト!」


 ドラゴンシフターは、龍の雄叫びで向かって来るバールの雨を破壊する!


 そして、そのまま接近し相手の仮面を殴って粉砕する。


 『セカイイチ~ッ!』


 仮面を割られた怪人は、以前倒した敵と同じく怪人kら人の部分が無くなり怪獣となる。


 「爪も牙もバールの怪獣かよ!」


 人語を離す事もなくなり、雄叫びを上げて暴れ食う怪獣。


 「そうか、強盗獣は元の人間とかはないんんだった!」


 Dクライ魔の素材となった存在が、人間と言ういわゆる元に戻す先がないのを想い出したドラゴンシフターは攻撃を避けつつ呼吸で周囲からのエネルギーを集める。


 敵がドラゴンシフターを飲み込もうと口を開いた時、ドラゴンシフターは自ら飛び込んだ!


 「体内破壊を決めるぜ、ファンロンバ~~~ストッ!」


 相手の口の中で、全員から呼吸でため込んだエネルギーを金色の光に変換して放ったドラゴンシフター!


 その輝きは、怪獣の口から溢れ世界に満ちて敵を消滅させたのであった。


 「討伐完了っと、疲れた」


 ゲートを開き、現実世界に帰還したドラゴンシフターが呟き変身を解く。


 「お疲れ様でした、ご主人様♪」

 「ありがとうジンリー♪」

 「壺中天フィールド、消費エネルギーの多さが課題ですね」

 「まあ、中で作成に使ったエネルギーを自由に使えるからトントンかな?」


 自分を迎えに来てくれたジンリーと共に、システムの事などを語りながら事務所へと帰る立磨であった。


 「最近、デーモニウムを使って生み出されたDクライ魔が多いな?」

 「はい、敵は実験でもしているのかと言うのが本社の妹の見解です」

 「うん、それが当たりだろうな。 他の組織の怪人にも使っているし」

 「チョッパーやこれまでのクライ魔は、まだ人に戻せる目がありましたが」

 

 事務所にてジンリーと語り合う立磨、その中でジンリーが言いよどんだ。


 「ああ、仕方ないよ。 人に戻せるなら戻したいってのは、俺の感情だから♪」

 「私は、ご主人様の精神衛生を害そうとしてくるのは許せませんね!」

 「俺のメンタルは、ジンリーにケアを頼むよ♪』

 「はい、お任せ下さい♪」

 「うん、その笑顔が良い♪」


 ジンリーの笑顔に、立磨は少し心が癒された。


 だが、立磨達だけではDクライ魔を倒せても救う方法はまだ見つからなかった。


 「やっほ~~~っ♪ お義兄さんと姉さんいる~?」

 「何ですか開発室長?」

 「リンちゃんか? どうした?」

 「壺中天フィールドの調子はどう? 今後のアップデートのヒアリング何だけど」

 「まあ、今の所は切り札で使ってるけれど俺と敵だけじゃなくて仲間とかも取り込めるとかにして欲しいかな?」

 「オッケー、そう言う方向でプログラミング作る。 他には何か欲しい物はある?」

 

 PCで通じてジンリンが、WEB通話をして来たので話す立磨。


 「ご主人様、室長に相談されてみては?」

 「ああ、そうだ♪ 実は、新型の怪人が厄介でさ」

 「ふむ、Dクライ魔を人間に戻したい? 結構難しい」

 「マジか? ごめんな、急に変な事を頼んで」

 「ううん、助けられるなら助けたいのはわかるよ下手に殺して怨み買うのは会社としても人道的にも不味いし」

 「ああ、俺も善意的な部分だけでは考えてないから気にしないで」

 「うん、ひとまず課題に加えるで。 ロボの方は、取引してる工場の都合でもう少し待っていて♪」

 「ああ、ロボもDクライ魔対策も考えて置いてもらえればで良いから?」

 「OK,お義兄さんにはメンタルきついかもだけど怪人の方はもう少しデータ取って来て」


 と言って、WEB通話が終わる。


 「何にせよ、時間はかかるか」

 「そうですね、中国は最近は凶星忍軍きょうせいにんぐんが狙っているようですし」

 「ニュースで見た、その煽りがこっちにも来てるか~?」

 「妹も研究には時間がかかりますので、何にせよ今はこちらのターンではないと」


 立磨達がどうにかしたくても、一足飛びには物事は進まなかった。


 「せいっ! せいっ! 破っ!」

 

 道着姿で呼気を練り、帯電させた拳で三連突きを繰り出す立磨。


 「次、蹴り上げ十本っ!」

 「はいっ!」


 久しぶりに来た垣花流の道場で、師範代の指導の下で稽古をする立磨。


 悩んだ末に原点に戻ろうと、立磨は地元に戻り道場に顔を出して稽古に参加する。


 他の門弟達と共に、突きや蹴りに掌打や肘打ちと技の稽古。


 受けや捌き、足運びに骨鍛えと呼ばれる腕や脛や肩など攻撃部位のぶつけ合い。


 呼吸により魔力を生み、生み出した魔力を炎や雷や吹雪などへ変換する稽古。


 呼吸で魔力を出し入れしながら、道場内を八の字に走り魔力の量を増やす稽古。


 武魔同源ぶまどうげんの思想の下に生まれた魔法拳法まほうけんぽうの基礎稽古に励む立磨。


 「良し、五分休憩の後に型稽古だ」


 師範代の言葉に、動きを止めて一休みする門弟達。


 「久しぶりだな、仕事と実戦が忙しいようだが元気か?」

 「おっす、まあ苦戦してるので原点回帰に来ました」

 「そうか、頑張りなさい♪」


 師範代と会話をし再び稽古に戻る立磨、型稽古の時にそれは起きた。


 「良し、久しぶりに雷の型を見せてくれ♪」

 「オッス! は~~~~っ!」

 「待てっ、君はいつ光の型を覚えたっ?」


 師範代が驚き、立磨を止める。


 「……え? これって、雷じゃねえっ!」


 立磨自身も、自分の体から出ているエネルギーに驚く。


 脳内で電撃をイメージして呼気を練り魔力を放出して見たら、出て来たのは自分の変身後でよく見た金色の光だった。


 他の門弟達も唖然としていた。


 立磨がもう一度精神を集中すると、金色の放電現象が起きたかと思うと炎の如く噴き出る金色の光へと変化した。


 「雷から光への属性の進化? 私にもわからない、光の色も違う」


 師範代が光の型として、突きと共に全身から放ったのは青白い光であった。


 自分を見つめ直しに来て、わけのわからない事態に直面した立磨であった。


 「それは、ご主人様が人から私達と同じく黄龍へと変化して来た証です」

 「えっと、黄龍って大地を司るけど光属性なの?」

 「はい♪ ご主人様が雷と認識していたのも光です」

 「そうか、この光の力って漫画みたいに悪い物を浄化とかできるのかな?」

 

 帰宅してジンリーに自分の変化を伝えると言われた言葉、そこから立磨は何かできるのではないかと思いついた。


 「わかりませんが、試して見る価値はあるかと思います♪」

 「ありがとう、もしかしたらこれがDクライ魔にされた人をどうにかできる手かも知れない♪」


 希望のような物が見えた立磨に笑顔が浮かぶ、その笑顔にジンリーも微笑んだ。


 数日後、今度は街の郵便局前にDクライ魔が現れた。


 『タタキワル~~~ッ!』

 「今度はハンマーのDクライ魔か!」


 立磨はドラゴンシフターに変身し、郵便局の壁を破壊しよとする敵に対向かう!


 「龍だけど使うぜ、猛虎硬爬山っ!」


 ジンリーから教わった八極拳で、まずは相手を自分に向けさせる。


 『ワル~~~ッ!』

 「やられるかよ!」


 振り下ろされた敵の頭突きを双掌を打ち上げて止める。


 「被害は出させない、壺中天こちゅうてんフィールド!」


 そして、敵を異空間へと引きずり込むドラゴンシフター。


 水墨画のような世界で、頭と両手がハンマーになっている怪人と格闘する。


 「こいつの仮面は何処だ? ドラゴンアイ!」


 龍の目が輝き、ハンマーDクライ魔の仮面の位置を、ドラゴンシフターの視界に映し出す!


 「見つけた、背中かっ!」


 跳躍して敵の背後に回り込むドラゴンシフター、呼気を整えて全身から金色ではなく白い光を出す。


 「狙いは奴のデーモニウム、せいっ!」


 白い光を纏った貫手で、敵の仮面の宝石の部分だけを突くドラゴンシフター。


 その瞬間、仮面がムンクの雄叫びの如く歪んだ表情で叫び消滅し敵はただの強盗獣へと変化した。


 「……こ、ここは一体? お、俺様は確かスリムマンの野郎に!」

 「悪いな、ここはお前の死に場所だっ!」

 「げげっ! ドラゴンシフターッ!」


 仮面が消え、人格を取り戻した強盗獣。


 だが、ドラゴンシフターは容赦する気はなかった。


 「元に戻った所で俺が相手だ、せりゃっ!」

 「あばっ! て、てめえっ! ざけんなっ!」

 「ふざけてるのはお前らの存在だよっ!」


 ハンマー強盗獣に連続で旋風脚を繰り出す、ドラゴンシフター。


 「畜生っ! バーニングスマ~~~ッシュ!」


 ハンマー強盗獣が頭のハンマーに炎を燃やして飛び上がり、フライングボディプレスで襲い掛かる!


 「上等だ、こっちも必殺技で行くぜ! ファンロンアッパーッ!」


 燃え盛る鉄槌を、天へと昇る黄金の龍の咢が飲み込み消滅させた。


 敵を倒し、現実空間へと戻ったドラゴンシフターは急ぎ事務所に戻る。


 「お疲れ様でした、お見事です♪」

 「ありがとう、これは情報を他のヒーロー達に共有したい」

 「わかりました、文章化はお任せ下さい♪」


 事務所に戻った立磨は、ジンリーに話をして情報の整理に取り掛かった。


 「ご主人様、今の状態でもその白い光は出せますか?」

 「ああ、やってみる」


 ジンリーに言われて、立磨は心を鎮めながら呼吸を行い出して見る。


 「なるほど、この温かな光はいわゆる回復魔法と呼ばれる力と同様の物ではないかと感じました♪」

 「つまり、回復魔法を使えばDクライ魔の仮面を倒して元に戻せるのか♪」

 「おそらくは、魔法に詳しい方に協力を依頼して検証する必要がありますね?」

 「だよな、俺も回復魔法を使える当てとか探して見るよ」


 この出来事により、ヒーロー達の業界全体でのDクライ魔対策が一歩進む事となるのであった。




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