第7話 Dクライ魔の誕生
「デーモニウムのおかげというか所為と言うか、事件が尽きないな」
「……まったくです、おちおち一緒にお夕飯も取れないなんて!」
「ヒーローって、消防や警察と変わらないから学校の友達も狩り出されてるよ」
住居スペースの食卓で、鶏粥とサラダの軽めの食事を取っている立磨とジンリー。
ヒーローは未成年であっても、深夜労働が可能なので食事は軽めになっていた。
「ご主人様に、私の料理の腕を振るいたいのに!」
「まあ、ジンリーは仕事もあるから料理は俺もやるよ?」
「今日は、ヘルプの依頼が来てもお断りしたいですね」
そんな時に、立磨の方のスマホが鳴り響く。
「……悪い、学校から救援要請の連絡が来た!」
「そちらから来るとは盲点でした、夫の学歴を守るのも妻の務め!」
「お粥の残りは明日だな、ささっと片付けて帰るぜドラゴンシフト!」
「私は、戸締りと片づけをしてから向かいます」
ジンリーとのやり取りを終えてドラゴンシフターが、事務所の窓から飛び立つ!
「飛ぶよりも走る方が早い!」
着地を決めて駆け出すドラゴンシフター。
そんな彼を、空から飛んで来たジンリーが口に咥えてから放り投げて自分の首根っこに乗せて空を疾走する!
「イ~ヒッヒッヒ♪ ゾンビの盆踊りだ~~♪」
「墓を荒らしてんんじゃねえっ!」
「ぐはあっ!」
骸骨人間とでも言うべき異形のチョッパー怪人を、エントリーと同時に蹴り飛ばすドラゴンシフター!
「出たなヒーローめ、僕のゾンビ達に殺されてしまえ~っ!」
「日本は火葬の国だ馬鹿野郎っ! 地熱を燃やすぜ、ドラゴンブレイズ!」
ドラゴンシフターが大地を殴る、すると立ち上がった怪人もゾンビ達も纏めて彼らの足元に火の円が現れると敵を閉じ込めて火柱が上がる!
「……たっく、ハロウィンはまだ先だぜ! 今夜はこの辺で切り上げるか」
霊園の敵を倒したドラゴンシフター、再度ジンリーに運ばれて帰路に就いた。
「ふう、ただいまっと♪ まだ二十二時、風呂に入れる♪」
「ええ、お帰りなさいませ♪ では別荘と空間を繋げますね♪」
「ありがとう♪」
帰宅して変身を解いた立磨とジンリーは、疲労を回復した。
翌朝、二人は残り物で朝食を済ませて、立磨は通学した。
教室では、昨夜もあちこちに狩り出されていた仲間達はほぼ全員がへばっていた。
「おはようさん、昨日はきつかったな?」
「おは~っす、でもその割にはたっつんは何か元気そうだな?」
立磨の前の席の虎吉が、手を振り返事をする。
「きっちり管理された生活習慣のおかげだ、委員長も元気だろうが?」
「俺もたっつんみたいに、お嫁さんに管理されたい~!」
「女子に言えよそう言う事は」
立磨は虎吉との会話を切り上げる。
「おはよう、そっちは元気だな?」
「ああ、ありがたい事にな」
「と言う事は、呼び出しがかかるな」
「その辺りは諦めた、単位稼がないといけないし」
「だな、報酬も出るし」
今度は、雪女の血を引く徹と話す立磨。
「おはよう、諸君♪」
そんな中、場違いに元気よく吐いて来たのは委員長こと飯盛鋼ノ助であった。
「おはよう委員長、座敷童パワーで元気だな?」
「おはよう日高君、確かに福子さんのおかげであるな♪」
「あの子、そう言う名前なんだ?」
「聞いてくれ、俺と福子さんは将来を誓い合った♪」
「……お、おめでとう?」
「ありがとう、今後はお互い相手がいる者同士で色々と相談し合おう」
委員長に春が来た事を驚きつつも祝う立磨、座敷童と付き合うとは良縁だろうなと感じる。
「マジ? 委員長にも彼女出来たの? 徹~? 俺達だけだよ~!」
「いや、お前はこっちへ振るな!」
「俺も絶対、可愛い彼女作ってやる~!」
「お前は、黙ってればモテるだろうに?」
徹と虎吉が言い合う、事件が起きていても教室は平和だった。
「昨夜の出動により今眠りかけている、疲労度の高い生徒達は公休扱いにすると決定が下った♪」
クリストファー先生が告げる、つまり元気な生徒は授業だ。
「元気な生徒以外は、今日は、帰寮や帰宅をして食事と睡眠を取るように♪」
HRをしに来たクリス先生の言葉で、クラスの殆どが教室から出て行った。
「残ってるの、俺と委員長と春原さんと徹と虎の四人か?」
立磨ががらんとなった教室を見回す。
「起きている君達は普通に授業だ、ただし座学の一般教科のみ」
先生が呟く。
「……まあ、仕方ないですね」
委員長が頷く。
「体育とか一人でやる授業じゃないしね~♪」
虎吉はあっけらかんと語る。
「のんびり授業が受けられる」
徹は机の上にへばって呟く。
「夜間出動は、止めさせるように会議で提案しようと思う」
そんな感じでクリス先生が締めてHRが終わり、授業が始まった。
数学、古文、日本史、生物と乗り越えて来た昼休み。
立磨の脳みそは戦いよりも、勉強で疲労していた。
「……理系科目、公式や計算や暗記やらで脳の処理が辛いっ!」
炭酸抜きコーラで、チャーハンに焼売に餃子にチンジャオロースと中華な昼飯を教室で喰らう立磨。
「日高君、その量は格闘漫画で見る量では?」
「日高、そんなに食って大丈夫なのか?」
「お、たっつんの弁当美味しそう♪」
友人達が、立磨の弁当を見て感想を漏らす。
「ああ、変身するとガンガンエネルギー使うからHPもMPもガッツリ消費する」
友人達に答えつつ、弁当を平らげてコーラを飲み干す立磨であった。
「……いや、その変身アイテムは使っていて大丈夫なのか?」
「ああ、最終的に人間から龍になるが死ぬとかとかでないから」
「何か、人間とは一体何かと考えられる話だな」
「まあ、嫁と同じになるだけでクライ魔とか悪の怪人になるとかじゃないから♪」
怪訝な顔をする友人達に、明るく笑う立磨であった。
立磨が昼休みを過ごしている頃、どこかの洞窟に現れたのはタキシード姿の目鼻がない紫色の肌の怪人であった。
「おお、これはまさに宝の山♪ デーモニウムの鉱脈ですね♪」
クライゾーンの下級幹部である怪人、スリムマンは赤紫色の宝石で満ちた洞窟を見て喜ぶ。
「お小遣い稼ぎと新型怪人の素材集めが同時にできる、素晴らしいですよ♪」
スリムマンは両腕を肥大化させ、鋭い鉤爪を生やして雑に振るう。
彼の破壊行為によりボロボロとデーモニウムが、洞窟から削られてはスリムマン居吸収されて行く。
「ムフフ~ッ♪ ここには定期的に、お小遣い稼ぎに訪れるとしましょう♪」
スリムマンは口だけの顔で笑うと、地中に沈んで行くように消えて行った。
「……ちくしょう、あと少しで俺は銅バッヂになれたっていうのによう!」
フロートシティー警察署の留置場で、スキンヘッドに鍛えられた体のガラの悪い男が不満そうに叫ぶ。
この男は元チョッパーの怪人、罪状は怪人薬の所持と使用と密売であった。
「おやおや? ついてないですねえ~♪」
そんな元怪人であった男と、鉄格子を挟んで向かいに現れたのはスリムマン。
「て、テメエ! ……いや、あんたはスリムマンさん!」
「うんうん、流石は下級幹部候補の元怪人だけあって分別がある♪」
「……な、なあ? 俺を、クライゾーンで面倒見ちゃあもらえませんか?」
「素晴らしい♪ 私も貴方をスカウトに来たんですよ♪」
「あ、ありがてえ♪ このままじゃ上に消されれるだけだ、助けて下さい!」
「喜んで♪ では、あなたには新たな怪人Dクライ魔の実験体第一号になっていただきます♪」
スリムマンは、男の額にコインほどの大きさのデーモニウムを押し当てる!
「ぎゃああああっ!」
額にデーモニウムを押し当てられた男は、デーモニウムの熱さに悶えながらその姿を徐々に異形へと変えていく。
『ブチコワスゾ~~~~ッ!』
男の頭部は赤紫の宝石が嵌った白い涙目の仮面で覆われ、黒い熊を模した怪人へと変化すると留置場の壁を体当たりで破壊して抜け出した!
「ムフフ~ッ♪ Dクライ魔、どうなるのか楽しみですね~♪」
スリムマンは嬉しそうに呟いて留置場から姿を消した。
元熊男が脱走した事件は直ちに情報が拡散された、スリムマンはわざと自分と男のやり取りを監視カメラに記録させていたのだ。
Dクライ魔は周囲の人間を殺害し、車や建物などの器物を損壊しながら中央市街へ向かう!
「そうはさせねえぞ熊野郎、ドラゴンシフト!」
「手早く片付けて、ラーメンを食べに行きましょう!」
外食に来ていた立磨とジンリーが、ドラゴンシフターに変身して立ち向かう!
『ブチコワスゾ~~~~ッ!』
Dクライ魔が雄叫びを上げると運の悪い一般人は気絶し、ビルのガラスが割れる!
「やかましい、ドラゴンクロ~ッ!」
両手に爪を生やしてドラゴンシフターが突進、雄叫びはアーマーが振動して相殺!
龍となったジンリーがドラゴンシフターと敵を囲み、被害の軽減に掛かる。
自分と互角のパワーで格闘してくるDクライ魔に、苦戦しつつも応戦するドラゴンシフター。
「くそっ! 結構やりやがる、だが仮面を割れば!」
爪には爪、牙には牙と尻尾で格闘しながらクライ魔なら仮面を割ればと機会を狙い敵の顔面に突きを入れる!
『グワ~~~~ッ!』
だが、ドラゴンシフターが仮面を割ると言ういつものクライ魔対策の手順をしてもゲートが開く事はなかった!
「マジかよ、仮面を割ったらクライ獣になりやがった!」
熊怪人から熊の怪物へと変化したDクライ魔、五メートルほどに巨大化する!
ドラゴンシフターは、囲いを破り、ジンリーを襲いかかるDクライ魔に容赦なく
必殺のファンロンアッパーを叩き込んだ!
『グワ~~~~ッ!』
「人に戻せなくて悪いが、ジンリーに手出しはさせねえ地獄へ落ちろ!」
Dクライ魔を倒し、光の粒子へと変えたドラゴンシフターの気分は憂鬱だった。
「大丈夫だったか、ジンリー?」
「ありがとうございました、申し訳ございません」
「良いさ、俺を大切にしてくれている人を守れないようなヒーローに俺はなりたくない♪」
元に戻りジンリーに微笑む、立磨。
駆けつけてきた警察に、一応の事情聴取を受けた上で報酬をもらい警察の食堂で夕食を取る事となった二人。
「まあ、警察署のラーメンもそこそこだな?」
「ご主人様と一緒にいただけているという点だけで、美味しいと言わせていただきます♪」
「なら、帰ったらジンリーの夜食を頼む」
「お任せ下さい♪ しかし、やっかいな敵が出て来ましたね?」
「まったくだ、今後はあれも人に戻す手を探らないとな」
新たなタイプの怪人の出現に、頭を悩ませる二人であった。
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