午前三時の着信音

「#適当なタイトルをもらうとそれっぽい小説の書出しが返ってくる」で頂いた題名④


 ──


 何かすごい大音量で目が覚めた。

 何だ何だ、と飛び起きる。その音は、私が生きている中で一度も聞いたことのない音だった。アラームの様な音だった。いや、それだとアラームに申し訳ない。これは「アラーム」と言うより「サイレン」と言った方が正確だ。

 すぐに見たのは、時計だ。底に表示されていた時刻、二時四十七分。言っておくと、午後ではない。午前だ。こんな時間に起こすな。

 しかしこの音の正体を突き止めないことには、眠れるわけもなかった。だから私は目を開き、体を起こして。


 目の前に人影があった。


 思わず、ぎゃーーーーっ、と、乙女らしからぬ声を出してから。

「元カレ」

「その呼び方やめろ」

 何とそこにいたのは、元カレだった。私にとってこの人間は元カレ以上でも以下でもない。だから元カレ、という呼び方でいいのだ。

「あ、俺のスマホのせいで起こしちゃったか、ごめん」

「いや、その前に何で私の家に当たり前のようにいるの」

「合鍵」

 そう言って元カレは、私に鍵を手渡す。確かに、返してもらうのを忘れていた。バカみたいに私は、元カレと鍵を見比べる。

「何でいるの」

「だから合鍵」

「そうじゃなくて、何しに来たの」

「ああ、そりゃ」

 そう言って元カレは、私の首に手を回す。そして、私の首に付いた縄を解いて。

「馬鹿な元カノを助けるため、かな」

 黙ってそれを眺めていた私は、また鳴り響いたサイレンのような音でハッとなった。

「おっと時間だ。……じゃあな、もう俺を追って死のうとするなよ、元カノ」

 そして元カレは、私の前から姿を消した。……あの音、聞き方によっては下手くそなトランペットに聴こえなくもなかった、かもしれない。元カレが来て、帰る、合図だったのか。

 一人に戻った部屋の真ん中で、私は座り込む。

「……私が幽霊とか苦手なの知ってるでしょ、バカ」

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