第43話 陽菜の死ー3
次の日の放課後、三人で三田に出かけた。
国道15号から芝公園の方に抜ける曲がり角があり、この辺りで事故は起きたと聞いた。
曲がり角のところで三人で手を合わせた。
(陽菜、必ず助けるからね)私は誓った。
曲がり角のすぐそばに都営浅草線の出入り口があり、おそらく陽菜はそこに向かっていたんだろう。
陽菜の家は15号をもっと浜松町方面にいったところなので、ここの横断歩道を渡り地下鉄の入り口に向かおうとしたとき、男の子が飛び出し、その子をかばおうとして、角を曲がってきたダンプにはねられたんだと思う。
陽菜は正義感の強い子だったから。
「あそこにコンビニがあるね」と拓海が言った。
横断歩道を渡った先のコンビニに行ってみると、二箇所に防犯カメラがあった。
「防犯カメラで映っている場面をプリント出来れば、まさに事故現場のすぐそばだ」
「頼んでみよう」
「うん」私とさくらが答えた。
店に入った。
東南アジア系の女性が二人、レジにいた。
「あのー、防犯カメラの映像を見せていただくことは出来ますか?」と拓海が聞いた。
「防犯カメラですか?」聞かれた店員は、もう一人の店員に視線を投げた。
「店長に聞いてみないと分かりません、ちょっと待ってください」と、もう一人の店員が答えた。
〝えんたく〟がいれば、大人がいれば対応は違うかも知れないが、まずはお願いするしかない。
奥から店長らしき人が出てきて聞いた。
「防犯カメラ映像をどうするんですか?」
「あの……」私は少し口ごもった。
「先週の木曜日、僕たちの友達の女子生徒が、目の前の横断歩道で事故にあい、死亡しました。その友達が写っているかも知れないんです」拓海が店長に言った。
「あの事故…… そう、君たちの友達なのか」
「可哀そうな事故だった」
「分かりました、こちらに来て」店長がそういって中に通してくれた。
店の中の部屋にパソコンがあり、そこに防犯カメラの映像を店長が映してくれた。
「あの事故は木曜日の朝、七時半ころだったはず、七時ころからの映像を流すよ」
「はい、お願いします」と拓海が答えた。
映像が流れた。左上に時間が表示されていた。
少し早送りにしてもらった。七時二十三分……
「あっ、陽菜だ」さくらが言った。
確かに陽菜だった。
コンビニの前を過ぎ、横断歩道を渡っていった。
ただ、事故現場の方までは映っていなかった。
「この木曜日の七時二十三分の映像と、その前の日の同じ時間の映像をプリントしていただけないでしょうか?」拓海がお願いした。
「この子が事故にあった子か。前の日はなんで? まあ手間はかからないからいいか」と店長さんは七時二十三分の映像に手を合わせた。
「ちょっと待って」店長はそう言ってパソコンを操作し、プリントした二枚の写真を拓海に手渡した。
「はい、どうぞ。ほんとに残念だったね」と店長が言った。
「ありがとうございます」三人でお礼を言ってコンビニを後にした。
店を出たあと、拓海に聞いた。
「前の日はなぜ?」
「同じ日付の過去に行けるとしても、事故の時間を過ぎてたら何にもならないだろ?」その通りだ。拓海は冷静だ。
「拓海くんって頭いいね」さくらがほんとに感心したように言った。
「どうする? 今日すぐにやってみる?」拓海が私とさくらに聞いた。
「今は何時? 五時ね。タイムスリップは四時頃でないとおそらく失敗するの」私が答えた。
「ふーん、そうなんだ。なぜだろう」拓海が不思議そうに言った。
「じゃ、明日、学校が終わってすぐにアンの家に集合しよう」
「分かった」私とさくらが答えた。
(早く過去に行って、陽菜を助けるんだ)
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