第35話 三人で過去へー7
浩ちゃんは戻ると、
「飲み物は何にする? ジュース? 紅茶?」と聞いてきた。私は
「紅茶、ミルクティで」。陽菜も
「私も同じでお願いします」。さくらは
「私、ジュースでもいいですか?」と聞いた。
「もちろんいいよ。オレンジジュースだけどいいかな?」
「はい」
浩ちゃんが飲み物を用意しているとき、さくらが言った。
「ねえ、薫さんってアンのお母さんによく似てるよね」
陽菜もそう思ったはずだ。
「うん」とだけ私は答えた。
飲み物を用意して浩ちゃんが戻ってきた。
「どうぞ」
飲み始めると浩ちゃんが
「三人で来たんだね。タイムスリップを一緒にやろうとしたんだから親友だね」「複数で来れるかどうかは、未来の俺も分かっていなかったはずだ」
「三人でソファに座って、手を繋いでたの」と私が言った。
「タイムスリップっていう、映画みたいな出来事が起こっていることに私は興奮してます」と陽菜が言った。
「私、未来のおじいさんしか知らなくて……こんなに若くてイケメンだったのにびっくりしてます」、といかにもの発言をさくらがしたら、浩ちゃんは少し照れていた。
少しして陽菜が真剣な顔をして言った。
「過去に入れる時間は六時間くらいだと思ってます」
「俺もそう思うよ」「さて、時間をどう使おうか」
「浩ちゃん、またDISCOに連れて行って!」「陽菜とさくらにも、あの世界を知って欲しいの」と私は浩ちゃんの目を見て言った。
「DISCO? 分かった、また行こう」
「そのために三人とも少し大人の服を着てきたのかな?」
「うん、そう」と私が答えた。
その通りで、三人ともいつもより〝大人〟
陽菜もさくらも少し恥ずかしそうにしてる。
「ちょっと出かけてくるよ」、浩ちゃんがそう言って、〝若きばあちゃん〟が
「はい、いってらっしゃい。気を付けてね」と見送ってくれた。
前と同じで、第二京浜国道に出てタクシーに乗った。
三人は後ろで浩ちゃんが前。
六本木の交差点を過ぎたところでやはり降りた。まだ空は明るい。
「ちょっと早いかな。お茶でも少し飲もうか」と浩ちゃんが言って、横断歩道を渡った少し先の喫茶店に入った。
その喫茶店は、いくつかの席のテーブルがゲーム機になっていた。さくらが
「なんか、未来と違うね」と言った。
店の店員さんが席に案内してくれて、私と浩ちゃん、陽菜とさくらで並んで座った。
「まずは注文しよう」と浩ちゃんが言って、さくらがすぐ
「パフェありますか?」と浩ちゃんに聞いた。
さくららしいと思いながら、陽菜と目を合わせて、二人で
「私たちもパフェがいい」と言った。
「パフェ?たしかあったと思うよ」
店員さんがお水とメニューを持って来てくれた。
パフェはチョコレート、バナナ、フルーツ、の三種類。さくらが
「私はバナナ」、陽菜は
「私はフルーツ」、私は
「じゃ、私もフルーツ」と言った。
「了解」と浩ちゃんが言って、店員さんを呼んだ。
「フルーツパフェ二つとバナナパフェ一つ、自分はホットコーヒーで」
「はい、了解しました」と店員さんがメニューを下げながら言った。
「さあ、ゲームをやろう。このゲームは知ってるのかな? インベーダーゲームだよ。正式にはスペースインベーダー(注7)」と浩ちゃんが言った。
「やったことないです。でも、テレビでビデオゲームの歴史紹介があって見たことがあります」と陽菜が言った。私も
「うん、見たことがある」と言った。
「じゃ、ちょっとやってみるね。このゲームはまだ新しいんだけど、人気になってきたよ」と浩ちゃんが言って、百円を投入しゲームを始めた。
緑、青、ピンクのタコのようなインベーダーが、隊列を組んで左右に動きながら段々と下に落ちてくる。
それをヒュンヒュンとミサイルのようなものを打ってやっつけていく。
でも、インベーダーは爆弾のようなものを落としてくるので、ブロックを盾にして、よけながら打たないといけない。
たまに一番上をUFOが横切る。
それをやっつけると点数を多くもらえるみたいだけど、最初から二十三発目にやっつけると点数が高いようで、浩ちゃんはわざと何発かは空打ちしていた。
「面白そう、私もやってみたい」さくらが言った。
浩ちゃんは上手いんだと思うけど、やられてしまった。
「じゃ、さくらちゃん、やっていいよ」
さくらが始めた。ヒュンヒュンと打ち続けるけど、ほとんどあたらない。
「さくら、降りてきてるよ」「ほら、爆弾避けて!」
いつも冷静な陽菜が熱くなってる。
「あーー、やられた」「くやしい!」
さくらが店の中すべてに聞こえるような声を出した。
浩ちゃんは、それを見て笑った。
一時間くらいだろうか、パフェを食べ、みんなでゲームを楽しんだ。
(注7):「スペースインベーダー」は
タイトーの登録商標。
インベーダーゲームとして
タイトーでない亜流もあった。
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