第21話 過去へー4

「アン、一つ約束して欲しいことがある。過去の行動で未来が変わるようなことをしちゃいけない。いいね」


「2022年に自分が死ぬとしてもそれは運命だ」

若いじいちゃんが真剣な顔をして言った。


 未来が変わる……

そうか、未来を変えることが出来てしまうのか。

しばらく考えていた。


 じいちゃんがなぜ過去に来れるようになったのか、それは分からないが、あのメモはそれが可能になる方法で、おそらく〝私のために〟書き残してくれたんだろう。


「アン、心配はいらない。元の世界には戻れるから」

私の顔を見て若いじいちゃんが言った。

「方法が分かっているんですか」

「うん」


 少し安心した。

お母さん、お父さん、陽菜、さくら、そして、拓海、もう会えないのではという不安があった。

このことは頭にあったけれど、考えないようにしていた。


「アン、〝未来の俺〟が言っていたけど、こちらの世界の時間と、アンがいた世界の時間の長さは違うらしい。こちらで一日経っても、未来に戻ったら一時間しか経っていなかったようだ。それがなぜかは分からない」


 それも不思議だ。

ただ、もし逆なら。未来の時間経過が早かったら、今頃、元の世界で私が何日もいなくなったことで、大騒ぎになっているだろう。

お母さん、お父さんが慌てている姿を想像した。


「少しは落ち着いた?」

「はい」


 そのとき、

「ただいま!」と玄関から声がした。


 若きばあちゃんが顔を出した。

ばあちゃんだ、若いけど間違いなくばあちゃんだ。

「あら、若いお客さんね。いらっしゃい!」

ばあちゃんが手を繋いでいる女の子、よちよちと歩いている。危なっかしい。


〝お母さん〟だ。(可愛い)

〝お母さん〟は、私の顔を見て、私のそばにおぼつかない歩きで近づき、私の服を握った。そしてニコッと笑った。

「この子が初めての人にこんなになつくのは珍しいわ」と若いばあちゃんが言った。


(だって、私は〝お母さんの子供〟だから)


 じいちゃんが私を指さして

「会社の上司の娘さん、これからちょっと出かけてくるよ。夕食は食べて来るから」

「上司の方と会うの?若い子を連れているからと言って、デレデレしないでよ」「あまり遅くならずに帰ってね、いってらっしゃい」

若いばあちゃんが茶化すように言った。

ひいばあちゃんには会えなかった。お友達と小旅行に行っているらしい。


 玄関を出て二人で歩いていると、若いじいちゃんが言った。

「〝未来の俺〟から聞いたよ。DISCO音楽を一緒に聴いているって」

「はい、大好きです」

「今からDISCOに連れて行ってあげるから。未来の俺にも、もしアンが来たら連れて行ってあげて欲しいと言われてたんだ」

「えっ、でも私高校生だから……」

「まあ、幸い私服だし、お酒を飲まなきゃ大丈夫」


 〝DISCO〟


 元の世界のじいちゃん〟に何度となく話を聞いた。


 〝DISCO〟


 じいちゃんが話していたDISCOを見てみたい。

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