第18話 過去へー1

 今日、月曜日はお休み。文化祭が日曜日に開催されたためだ。私は、このところ私が占有しているじいちゃんの和室にいた。


 いつものようにCDの棚を右から漁っていたら、真ん中あたりに〝アース・ウィンド・アンド・ファイアー〟を見つけた。じいちゃんが大好きなグループ。

聴こうとCDを取り出した途端、CDに引っ張られるように、一枚の〝写真〟と一枚の〝メモ〟がカーペットの上にヒラヒラと落ちた。


 写真はモノクロで、どこかのビルが写っていた。

かなり昔のようだ。

そのビルは透明な二基のエレベーターがあり、エレベータの中から外を眺められるようだった。

写真の裏には、撮った年だろうか、〝1978〟と書いてあった。

メモの方には、


〝セプテンバーを聴くとき、写真を胸に抱きながら目をつむり聴くこと〟


と書かれていた。


(何のためのメモだろう?)


 考えたが、分からなかった。

とにかく曲を聴いてみようとCDをセットし、〝セプテンバー〟をかけた。

メモの指示通りに写真を胸に抱き目をつむった。


 軽やかなイントロから、ブラスが入り、


♪ Do you remember The 21st night of September?

 Love was changing the minds of Pretenders

 While chasing the clouds away

(君は覚えてるかい 九月二十一日のあの夜を

 よそよそしかった僕らのこころを愛が変えていったよね

 雲を追い払うように)


 なぜか歌詞の最初のフレーズが繰り返して聴こえた。

オーディオが壊れたかと思ったけれど、何か変だ。


 すると突然、目の前が真っ白になった。


 つむっていた目を開けたはずだが何も見えない。真っ白だ。


 そして体が空を飛んでいるような感覚。


 どこまでもどこまでも飛んでいく。一体どこまで……


 目がぐるぐるぐるぐると回る。


 どのくらいの時間が経ったんだろうか。


「君、大丈夫?」

若い男性の問いかける声で我に返った。

顔立ちのはっきりした二十代後半かと思われる男性だった。

すぐには反応出来なかった。

「大丈夫かしら、この子」男性と一緒にいた、やはり二十代後半らしい若い女性が心配そうに言った。

「はい、大丈夫です」今度は反射的にそう答えた。



 家の和室にいたはずなのに……ここは外だ。

そして、横になっていたようだった。


「すみません、ここはどこですか?」

「えっ、六本木だけど」男性が答えた。


 周りを見渡した。


 目の前にあったのは、のビルだった。

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