第17話 文化祭ー2

 お化け屋敷の入り口をくぐると中は真っ暗だった。

遠くにかすかに灯りが見える。

壁を手でたぐりながら進んだら、ドラキュラだろうか、仮面がブラックライトで光っていた。わたしたちの服の白い部分も光っている。


 さくらは陽菜の腕を掴んで離さない。

「さくら、大丈夫?」私が聞いた。

「入らなきゃ良かった」


 少しずつ暗い中を前に進んだ。

「ひゃー! いやー! 何か触った!!」さくらが大声を出した。

「何? どうしたの?」と私が聞くと

「何か触った、私の顔に触った!」

ははーん、すぐ私の顔にもそれが触った。こんにゃくだ。

「さくら、こんにゃくだよ」

「違うよ、なんだか生きているみたいだったもん」

陽菜もこんにゃくだと思ったんだろう。

「早く先に行こう」と、さくらを引っ張った。


 少し行くと井戸があった。

あそこから絶対に何かが出てくる。〝貞子〟(注1)かも知れない。

少し身構えていたが、何も出てこない。

井戸を通りすぎようとしたときに……出た。貞子だ。

ちょっとタイミングが悪いけど、さくらは腰を抜かしそうになって、また大声を出した。

さくらの声が凄くて、〝お化け〟を演じている生徒も楽しいだろうと思いながら、先に進んだ。

 

 少し歩くと、冷たい風が顔をなでたと思ったら、前から全身に包帯をしたミイラ?がこちらにゆっくりと近づいてきた。

「いやーーー!」さくらが元の道を戻ろうとした。

「大丈夫よ」と陽菜がさくらの手を引き留めた。


 馬鹿らしいけど、なかなか面白い。

さくらを見ているのが面白いのかも知れない。

三人で出口までの道を急いだ。途中に飛び出して来たお化けは無視してさっさと出口まで進んだ。ゆっくり歩いていると、さくらの心臓が止まってしまう。


 外に出ると、悪玉三人娘がいた。

中の様子をどこからか見ていたんだろう。美奈子が

「さくら、漏らしてない?」、聡美も

「漏らしてるでしょ」とからかった。

さくらはまだ青い顔をしてる。


「37も頑張ったよね」と陽菜が言った。

「うん、うん、頑張った」と私も陽菜に同調して言った。


 三人は小馬鹿にされたと思ったのか、

「あんたたちはどうなのよ、ポップもなくてお客さん来ないんじゃないの?」と、美奈子がポップの話を持ち出した。


「美奈子、ポップのこと知ってるの?」と陽菜が問いただした。

「誰かに破られたんでしょ、知ってるわ」。私は

「ふーん、知ってるんだ」と三人の顔を見た。みゆきが

「何よ、あたしたちじゃないわよ」

「誰もあんたたちがやったとは言ってない」と陽菜が言った。美奈子が

「誰がやったにしても、あんたたちが恨まれてるのよ!」

「わたしたちが? クラスがじゃなくて?」陽菜が問いただした。

「えっ、それは分からないけどね」と、美奈子はまずいと思ったのか

「じゃーねー」と三人で他の催し物の方へ歩いて行った。


「どう思う?」と私が陽菜とさくらに聞いた。

「分からない」と陽菜が言った。それを聞いたさくらは

「あの三人がやったかもってこと?」とようやく話を理解した。

「もしそうなら許さない」

さくらが険しい顔になって言った。

(さくらの大作だものね)


 文化祭は全体として活気があり、来場した人たちはみんな堪能していた。

自分たちの〝たこ焼き屋台〟が盛況だったこともあって、余計に文化祭自体が成功したって思うのかも知れないが、仲間と一つのことを準備して準備して成功させた。

ポップの事件がなければもっと喜べただろう。


 文化祭というイベントが終わり、三年生は本格的に受験に向かって時間を使うことになる。


 (注1)鈴木光司の小説「リング」に出てくる

     架空の人物

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