第14話 準備と事件ー1
学校は全体がバタバタしていた。
十月の頭に文化祭があり、その準備に入っているからだ。
うちの高校の文化祭は大学の学園祭のような感じで、クラスや部が校内で様々な催し物を出す。
私たちのクラスは〝たこ焼きの屋台〟を出すことに決まった。
ありきたりだとも思ったが、伝統的に誰かはやるため、学校に備品も整っているし、業者の方が補助に入ってくれる。
幸いに他のクラスとは被らなかった。
今のクラスではないけれど、二年前にも実施して成功した。
私を含めて何人かがそれを覚えていたため、いくつかの候補の中から〝たこ焼き〟に決まった。
クラスの中をいくつかの班に分けて役割分担した。
私と陽菜とさくらは宣伝のためのポップ作りを担当することになった。
こういったものは、さくらに任せれば問題ない。
私と陽菜は、さくらがパソコンの〝イラストレーター〟というアプリでデザインしていくのを横で見て意見を言うだけだ。
さくらは〝ほんと、馬鹿〟と思うことも多いが、こうしたことは天才。
「さくら、〝たこ焼き〟の文字、もっとタコが踊るような感じに出来ない?」
「うん、ちょっと待って」しゃべりながらさくらの手はすでに動いている。
「こんな感じ?」
その速さに陽菜は驚いたように
「うんうん、いいね」と頷いた。
「何それ、変なの」と横から突然。聡美だ。当然のように美奈子もみゆきもいる。
この悪玉三人娘は、とにかくケチを付けるのが仕事と思っている。
陽菜はいつも冷静、
「有名な絵画の良さが分からないあんたたちには、さくらのデザインの凄さは分からないわよ」
今年の春、三年生の課外授業で国立西洋美術館に行き、特別開催されていたフェルメールを見学した。
有名な〝真珠の首飾りの少女〟のフェルメールブルーのあざやかさに私は感激した。
ところが、悪玉三人娘は
「この子、あんまりきれいじゃないわよね」
「うん、美奈子のほうがきれいだと思う」と周りのひんしゅくを買う話を大きな声で堂々としていた。
さくらは、いつもならやりあうのに、デザインに没頭してパソコンに向かい手を動かしていた。芸術肌なのかも知れない。
「あんたたちは文化祭に何を出すの」と私が聞くと、
「お化け屋敷」、聡美とみゆきが声を揃えていった。
何だか、人気は取れないと予想できる催し物だ。
「あ、そう。がんばってね」と陽菜が突き放したように言った。
「陽菜、あんたね」と聡美が怒ったが、美奈子が制し
「行こう」と去っていった。
私は作業しているさくらに
「さくら、大丈夫?」と聞いた。
「うん? 全然。耳に入ってない」
陽菜と二人で笑った。
さくらの頑張りで、その次の日にはポップが完成した。
これをみて、多くの人に屋台に来てもらって、たこ焼きを食べてもらいたい。
文化祭が待ち遠しい。
陽菜もさくらもそう思っているはずだ。
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