第4話 ダンジョンへ
ルーファスたちの準備に二日。ガラオの街を出てから一日と半。一行は三日目の昼過ぎに、オーランの発見したダンジョンに来ていた。
白い門が五人と一羽の目の前に建っている。扉には
「門をあけるよ」
オーランが杖を突き出した。二叉に別れた杖の先、向き合うように弧を描くその中心には黒水晶が浮かんでいる。蜘蛛の巣状に張られた
入り口の大きさはオーランより一回り大きいくらい。偉丈夫のルーファスでも充分入れる高さと幅があった。
「ここからは必要最低限の荷物だけだ」
ルーファスの言葉に、一同は装備の選別をする。
ルーファスは肩から腹部までを覆っている
ゼフィアは
ダガートは祭服の上に鉄製の胸鎧を着ており、頭部もオープンフェイスの兜を装備していた。腰に下げているのはメイスだ。
メラニーはローブと身の丈より僅かに杖を持っている。
皆、飲料水代わりのワインと僅かな食料。火口箱やロープなどが入った小さな背嚢を背負っていた。
オーランは前回と同じ旅装だった。その肩にはファルサが乗っている。
「じゃあ行くよ」
オーランを先頭に門を潜る。その先はやはり暗かった。剥き出しの岩を踏んだ感触だけが、ダンジョンに入ったことを教えてくれる。
「メラニー、明かりを頼めるか?」
一番後ろを歩くメラニーに向けて、ルーファスが話しかける。
「
メラニーの口から独特の旋律を伴った言葉が紡がれる。呪文により
「っ!?」
昼間の太陽を直視したような眩い光が、メラニーの持つ杖の先に浮かび上がった。あまりの眩しさに彼女は驚いて杖を落とす。
「うおっ、眩し!」
その音に驚いてルーファスたちが振り向いた。暗闇の中に突如生まれた強い光が皆の視覚を刺激する。
「い、いつもと同じように唱えたのに、なんでこんなに」
「メラニー。一度、魔術を
慌てたようなメラニーの声とは対象的に、オーランが落ち着いた様子で言う。メラニーが慌てて消去の呪文を唱える。
光が消え暗闇が戻って来た。
「いつも使う
オーランの言葉に従って、呪文に通す
「……あ、いつもの光だ」安心したようにメラニーが言った。
「がはははっ。早速ダンジョンの洗礼を受けたの」
ダガートが愉快そうに言う。ルーファスとゼフィアも笑っている。
「え? でも前にダンジョンに入った時はこんなことなかったのに」
「もしかして君が潜ったダンジョンって迷宮型?」
「ええ、そうだけど……なんで?」
問いかけて来たオーランを見ながらメラニーが言う。光の中に浮かび上がるオーランは随分と血色がいいように見えた。表情も明るくて元気そうだ。
「迷宮型のダンジョンは、迷脈の
魔術とは呪文により
「けど迷穴型は迷脈の
しかし迷脈の通っている場所のように魔力濃度が高い場所では、周りの
それが魔術の暴発だ。
「だから迷穴型のダンジョンで魔術を使う時は、まずいつもの半分以下の
饒舌になったオーランを見て、メラニーは呆気にとられている。
「なんだか機嫌良さそう――っていうか随分元気そうだなって……」
「ダンジョンの中は
「
「さて、進むぞ。みんな時計は準備できたか?」
オーランが答えるより先に、ルーファスが皆に問いかけた。メラニーたちは慌てて背嚢の横に吊してある小さな砂時計を回す。小さいが、一日かけてゆっくりと落ちていく特別製だ。ダンジョンなど外の様子が分からない場所での時間の確認に使う。
「今回の調査の期限は一日。進める範囲までは進む。装備的にもそれ以上の深入りはしない。いいな?」
ルーファスの言葉に四人は頷いた。
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