あくまで悪魔ですので......

@morejust

どうか神様、神様の変更を願います。



「琉生!何回言わせるの!もうご飯できてるわよ。冷めちゃう前に早く食べなさい」


「あぁ、もう外で食べてきたからいらない」


「外で食べてくると・・・」



 一階からまだ母親が何かを言おうとしていたが、ヘッドホンでシャットアウト。母親に声をかけられたので、僕のノリに乗っていた気分が落ちてしまった。そして案の定ゲームに負けた。そして悔しさのあまりベッドに横になって眠ってしまった。



 朝、目を覚ますと窓から差し込むキレイな太陽の光、囁きかける小鳥のさえずり。そして学校の登校時間をとっくに過ぎた目覚まし時計が笑いかけている。


 猛ダッシュで着替え、トイレ、学校の準備を済ませ家を出た。学校までの道のりは記憶がない。とにかく走って走って走りまくった。


 そして学校に着いて更に驚きだったのが、今日は期末テストの日だったこと。テストが嫌なんじゃない。学校に遅刻して行くせいで、前日たくさん予習してきた奴と思われるのが嫌なんだ。


 そしてテスト返却の日この予想は見事に的中した。



「おい、楽間テストどうだったー」


「まぁ、平均点ぐらいかな」


「ウソつけよ、答案見せろ!」


「あっ、ちょと待て」


「おい、100点じゃねえーかよ。やっぱ天才は違うわ。俺らなんか、平均点も取れなかったぜ。どうせあれだろ、テストの日遅刻してきたから前日にたくさん勉強してきたんだろ」



 なんで僕が嫌味を言われなくちゃいけないんだ。僕はただテスト勉強を頑張っただけ、テスト期間中にも関わらず遊んでたのはお前らだろ。



「楽間、テストも終わったし、せっかくだから俺らでメシ食いに行かね?」


「ごめん!、今日塾の模試があるんだ。だからいけないわ、せっかく誘ってくれたのにごめん」


「塾もう行ってるのか。俺らまだ高1だぜ、パァーと遊ぼーよ」


「ホントにごめん、また今度誘って」



 僕だって、塾に行きたくて行ってるんじゃない、勉強したくてしてるんじゃない。僕だって、友達と思っいっきり遊びたい。


 僕の両親はどちらも教師だ。だからかわからないが、昔から親は『勉強しなさい、これはあなたの将来のためなのよ』が口癖だ。なんで僕の親はこうなんだ。僕は勉強よりゲームがしたい。そう、とにかくゲームがしたいんだ!!そんな気持ちで僕は学校の校門をくぐり塾へ向かった。


塾へ向かう途中、いつものコンビニへ入り、いつものミネラルウォーターを買い、いつものようにコンビニを出ようとした。ただ一つ違うことがあった。それはコンビニを出た僕の目に映ったのが、猛スピードで走って来る車だったことだ。しかし気付いたときには遅かった。






「ここはどこだ?僕は確か車にはねられたんじゃ・・・」



 周りを見回した。周りは白い霧で覆われていて、視界が悪かった。すると遠くにうっすらと人影が見えた。


あまりにも気味が悪かったので、思わず声を出してしまった。



「すっすっすいません。ここはどこですか」



 それでも人影は止まらず、こちらに歩き続けた。そして顔が見えるようになった時、僕は少し安心した。だって可愛いらしいおじいちゃんだったのだから。



「おじいちゃん、少し質問してもいいかな?ここはどこか分かる?」


「おい、少年!ワシを老人扱いするな!!」


「あっ、すいません。そんなことよりここどこか分かります?」


「そんなことよりとはなんじゃ、ワシはこう見えても神様だぞ」



 このおじいさんボケてるな病院につれてってあげよう。



「ワシが神様だという証拠を見せてあげよう。まずワシは人の心が読めるぞ。今お前はワシのことボケてると思っておったじゃろ。安心せぇ、ワシはボケてなどいない」



 やべっ、バレてた。でもたまたまかもしれないし・・・



「まだ信じてないようじゃな、ワシの足元見てみろ」


「浮いてる!!」


「これで信じてくれたか?」



 浮いてる=神様なのか分からないが、まぁ浮いてるのは事実だ。



「おじさんが神様ってことは分かったから、ここはどこか教えてくれない?」


「あぁ、ここ?天国じゃよ」


「はぁ?」


「だからここは天国、お主は死んだんじゃよ。お主の最後の記憶は何じゃ?」


「コンビニから出て車が猛スピードで走ってきて・・・」


「それ、それが死因じゃよ」


「てっ、ことは俺もう生きられないの?嫌だよ、まだやりたいこといっぱいある!彼女とデートしたいし、ファーストキスもしたいし・・・とにかくいっぱいしたいことある!」


「まぁ、話は最後まで聞け少年、生きられる方法があ一つあるぞ」


「なに?」


「ちょうど今、異世界のヒーロの枠があいていてな、ヒーロを探しておったんじゃ」


「なに、異世界のヒーロって」


「まんまじゃよ。その異世界ではとある問題があってな、それを解決してほしいだけじゃ。転生してまた生きられるんだしいいじゃろ。どっちみち今までいた世界には戻れぬし、どうじゃ?」


「うーん、また生きられるならやろうかな」


「おぉ、本当か。じゃあ準備するから少し待っておってくれ」



 異世界って言われてあまりピンとこない。でも、また生きていけるんだったらいっか。そんな軽い気持ちだった。



「そうそう、一つ忘れておった。二年以内にその世界救わないと死ぬから」


「はぁ?ジジイなんでそういう大事なこと先言わないんだよ」


「ジジイとはなんじゃ。これでも神様じゃ!」


「分かった分かった。少し考える時間をくれない?」


「それは無理じゃ。もう異世界へ転生する手続きしちゃったから、取消せんのじゃよ」



 僕はこの時、このジジイにめちゃくちゃイラついた。でもこのジジイに頼る以外生きる方法がないので、イライラは心の奥にしまった。



「まぁまぁ、そんなにイライラしないで」



 僕のイライラはジジイの一言で再燃焼した。そんなイライラを再度心の奥に無理やりしまい、俺は一つ質問した。



「ひとつ、質問してもいい?」


「うむ」


「さっき、神様が言ってた異世界のとある問題ってなに?」


「それは、転生して自分で探すんじゃ。前のやつは、転生した先の暮らしに満足して、その問題を探そうともせず、二年で死んだがな」



 だんだん不安になってきた。しかし、まだ生き続けるには、この方法しか無い。『2年以内に絶対世界を救う』この言葉を心の中で何回も何回も唱えた。



「さぁ、そろそろ転生する時間じゃ。最後に質問は?」


「じゃあ一つだけ。僕は、誰に転生するの?」


「誰に転生するって、自分自身じゃよ」


「え?」


「わかりやすく言えば、姿も記憶もそのままで、変わるのは周りの環境だけ」


「それって転生って言わないんじゃ・・・」


「まぁまぁ、細かいことは気にせずに。だいたい理解した?」


「まぁ、うん」


「ならいい、それじゃあ異世界での2度目の人生楽しんでらっしゃい!!」


「ちょとまって、まだ心の準備が・・・」



 そう言ったのと同時に睡魔が襲ってきて、僕は目をつぶってしまった。

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