第28話 錬金術の付与の可能性
ポーションが売れたことはとても良いことだが、相変わらず量産の目処は立っていない。
ステラの加入によって、大きく前進できたのは間違いない。
次なる手は、錬金術の道具を買い揃えることだ。
そのためには、ステラにもう一度詳しく錬金術について、話を聞く必要があった。
自宅ではエアとクローシェが対戦格闘ゲームに夢中になって、マリエルは料理をしてくれている。
残った渡とステラは、今後の計画を話し合うところだった。
相変わらず予算を考えない珈琲を淹れて、ステラにマグカップを手渡す。
ステラの場合、珈琲に砂糖もミルクもたっぷりと入れるタイプのようだ。
両手でマグカップを包んで持つと、ふうっと息を吹きかけて冷ました。
ゆっくりと珈琲を口に含むと、長い耳がピン、と伸びる。
まだ珈琲の味に慣れていないようだった。
大人びた態度と比べて、子供舌の面もあることが可愛らしい。
冬がやってきて肌寒い季節になってから、家の女性たちはセーターを着用することが増えた。
どうもスタイルを見せつけて渡の目を引くのを楽しんでいるらしい。
今も深緑色のセーターに包まれた見事なおっぱいがテーブルの上にドンと乗っていて、渡の目を強烈に引き付けていた。
これで仕事の話でなければ、もっと堪能するところなのだが。
「ステラ、製造に必要な道具を揃えられれば、ポーションや変化の付与ができるようになるんだな?」
「はい。もちろん素材は別に必要になりますが、作れるのは約束できます。わたしは別に変化に限らず、付与の技術はもっと使ったほうが良いと思いますよ」
「たしかに俺も、『清涼の羽衣』にはすごく助かったな」
「暑さや寒さはもちろん、最近着ているスーツの強度をさらに上げたり、軽くすることも可能です」
「へえ、面白いな。他にはどんな使い道があるんだ?」
おっとりとした言い方のステラの声は、聞いていて落ち着く。
リラックスした態度で、渡は質問ができた。
渡は付与の技術について、あまり分かっていないことが多い。
ただ、清涼の羽衣のように、現代の技術では再現可能なものもあれば、再現できないような、魔法のような効果も得られるものもあると、漠然と把握していた。
エアの一族に伝わる宝剣『大氷虎』などは、不壊などという科学に喧嘩を売っているような、常識を覆すような効果があったり、周りを瞬時に氷漬けにすることができる。
「身体能力の強化は特に用いられる一般的な用途ですね。あなた様の場合でしたら、気配を薄めるような用途が護衛に向いていて良いかもしれません」
「そういうのって、エアとかクローシェに通用するのか?」
「感覚が鋭敏な方には、効果は薄れますよ。ですが、無意味にはなりませんし重ねがけも可能です。また、あなた様一人に的を絞って注意しているならともかく、別の人と一緒にいれば、無意識にそちらに意識を注いでしまうように誘導できますのよ?」
「へえ、スゴイな」
「エアさんやクローシェさんに、気配を強める方向の付与を行って、より意識誘導する方法もあります」
「なるほどな。場合によっては使えるか」
「はい。ただ、こちらで今以上に注目を浴びるのは避けたい、とのことですから、あくまでもこういう方法もある、という話ですけど」
「外し忘れてたら、大変なことになりそうだ。いや、助かるよ! ありがとう。君がいてくれて本当に助かった」
「あら! わたしなんて大したお役には立てませんが」
「そんなことはない! 前にも言ったが、君(の能力)はとても魅力的だし、俺の求めている人そのものだった! エトガー将軍に無理を言ったかいがある」
「……ンフフフ。まあまあ……。お役に立てて何よりです、あなた様……」
熱い視線を投げかけられながらも、渡は付与をどう商売に結び付けられるかに意識が向いていて、気づいていなかった。
これからどんな付与やポーションの製造をするにしても、設備がなければ始まらない。
マリエルの作った料理に舌鼓を打ったあと、外出の準備を進めつつ、マリエルに詳細を聞く。
「で、王都にあるんだっけ?」
「はい。私も実際には行ったことがないのですが、なんでも錬金術師や魔法使いの方々の必要なものを手に入れるお店が連なっている区画があるそうです。錬金筋、魔法使い通りなんて呼ばれているそうです」
「あー、心斎橋筋、道頓堀通りみたいなものか。一種の商店街みたいになってるわけだな?」
「ご主人様に連れて行っていただいた場所だと、どちらかと言うと道具屋筋が近い雰囲気でしょうか?」
「ああ、理解した。問屋街って感じか」
「そうですね」
大阪の難波、通称ミナミと呼ばれる街には、道具屋筋と呼ばれる商店街区画がある。
今も残っているのは、主に飲食店向けの店が中心だが、特殊な包丁や食器、業務用厨房機器に電光看板など、商店街を散策するだけで店が開けるぐらいには、問屋が勢ぞろいしている。
一昔前はAV機器や大工道具など、様々な職業の専門問屋が沢山あったというが、今はオタロードに様変わりしていた。
様々な専門店が向かい合わせに並ぶ様は壮観で、用もなく前を通るだけでも楽しい。
外国人も多く訪れる観光地の一つだ。
おそらくは錬金筋、魔法使い通りも似たような印象なのだろう、とすぐにイメージできた。
「よし、それじゃあ行くか」
はたしてどんな店があるのか。
渡はワクワクしながら家を出た。
――――――――――――――――――――
仮タイトルまでたどり着きませんでした……。
そろそろステラの掘り下げもしたいし、付与についても説明したいしで難しいです。
ムチムチおっとり爆乳ヘテロクロミアエルフ、早く仲良くなりたい。
付与の技術は、今後地球世界の革新を起こしかねない、大きな可能性を秘めている技術です。
多分データセンターとかで冷却の付与するだけで一財産作れると思うんだ……。
次回(こそ!)『錬金術・魔法使い道具屋筋』の予定です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます