第32話 王と双樹の皇07

 シードブレイク後の日本は静岡、山梨、長野、三県をまたぎある山々がシードブレイクにより落ちてきた種子の発芽と共に大森林を形成した。それにより日本は東西に分かたれた。行き来きするには日本海沿い、太平洋沿いの陸の端を行くか。海路で移動するほか無くなっている。

 無理に中山道を初めとして、中央山間沿いを行こうとすると発芽した大樹によって産まれ落ちた様々な樹種、樹獣や樹虫に襲われ、死に至る事になる。

 しかし、生き延びた人々はシードブレイク以前の技術を求めて、富士樹海の奥へと進む者達は止まない・・・

 シードブレイク後、樹海に埋もれた文明の発掘者を宝物探索者トレジャーハンターと呼ぶ様になった・・・

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 三月上旬、一文字達の4638部隊の面々は拡大した富士樹海の手前小田原にある民間軍事会社Private Military Company竜眼魔術師団Longan Magic Division通称L.M.Dの日本支部の一つで、日本魔科術研究所へ来ていた。

 新規、新型のMDをまずは見る為、日本魔科術研究所のMD研究施設へ向かう。

 施設の入り口には二人の人影が見えた。

 一人はまだ春先で寒いはずなのに上着を肩にかけ、大太刀を腰に差した大きな体格をした褐色肌の男性。

 もう一人は如何にもオタクっぽいビン底眼鏡をかけ、ピンク色で髪をツインテールにした女の子が描かれたTシャツがちらっと見え、老若男女の顔が描かれたスーツを着た外人紳士がいた。

 大太刀をこさえた男性が、一文字達を見つけると大きく陽気な声でサムズアップしながら声をかけてきた。


「よおー大樹。待ってたぜ! 」

「ようやくキタのである。おそかったのであーる」

「ルバス! ダン! ひさし・ぶ・・り・・・? 」


 一文字は陽気に声をかけてきたルバスと呼んだ男性に元気に返答し、ダンにも返答した所で、ダンの姿を見て声が尻つぼみとなっていった。他のメンバーもルバスに明るい表情を見せるがダンの方を見ると一機に呆け顔になっていった。

 一文字は頭を振り気を取り戻してから、ルバスへ握手を求めて、手を差し出し声をかけた。ルバスもその手を取り、一文字の声に答える。


「ルバス。本当に久しぶり、なんだかんだ言って1年ぶりくらいですか? マンチェスター駐屯地では、居ても会えてなかったし、元気そうで良かった」

「おぅ! 大樹も元気そうだな! 今回は東京方面の宝物探索トレジャーハントだったんでな。暴れられないかとおもったんだが・・・ガッツリバトッて、スッキリしたし、良い物も見つけられたしな! 」

「ああ! 本当に良い物を見つけてくれたよ。あれは全てにおいて一歩リード出来るものだよ! ありがとう」

「あれは吾輩のファン〇ルがネット上にあった昔の記事を見つけたのである。それでMDで魔術に使用できる素材探していたラスト=スース殿に聞いた所、昔の藻汁研究所の位置を現在の位置に当てはめて、割り出してくれたのである! 」


 と何処からか持ち出してきたタブレットを見せ、クイクイと眼鏡を持ち上げる外人紳士がドヤ顔で一文字へ話しかけてきた。


「ダン・・・さ、さよう・・・であるか・・・」

「さようである」


 うなずくダンの顔圧力に負ける一文字は一歩後ずさった。その様子を見ていたルバスが一汗流しつつダンへ突っ込んだ。


「だがよう、ダン、部下をファOネルと呼ぶのはちょっとあれじゃねぇか・・・?」

「フム、おかしいであるな?こちらの某マーケットでは自分を中心として、目的のものを探し手に入れる手段の事を言うらしいのであるが?」

「いやいや!?なにか日本文化を間違えてないかい?!」


 ルバスの問に顎に手を当てつつ、間違ってはいないが、ズレた答えを口にするダンに一文字は思わず突っ込んだ。更に一文字は額に手を当てながら他のメンバーの代表としてダンのスーツ下のピンクの髪でツインテールの女の子の絵柄が描かれたTシャツに突っ込みを入れる。


「あーそれに・・・ダン・・・そのディフォルメされた絵柄のTシャツはなんだい・・・?」

「これは吾輩の宝物探索トレジャーハント成果である! 宝物探索トレジャーハント聖地メッカ、AKIBAから発掘したAKIOOたんである!」

「間違っちゃないだろうけど、何か違う!? ルバスとダンは一緒に行ったのでは!? 」


 と一文字は頭を抱えて叫んだ。ルバスは耳脇を指で掻きながら答えた。


「まっなんだ・・・そのな・・・? 途中までは一緒だったんだが、思った以上に樹種とのバトルに興が乗っちまってな? 気が付いたら二手にわかれてたわ!」

「おいてかれた吾輩も運が巡り、宝物探索トレジャーハント聖地メッカにたどり着けたのである。このAKIOOたん以外にも、UFOロボ等のお宝も発掘デキタのである!吾輩、ラッキーだったのである! ハッハッハーーー」

「俺も気が付いたら目的地についてて、ラッキーだったぜ。 はっはっはーーー」


 ルバスとダンは軽い調子で笑い声をあげる二人に一文字は頭痛がする頭に手を当てて呆けてしまった。

 ルバスは呆けた一文字を見かねて、一文字の肩に手をかけた。そして、立てた親指と共に首をクイッとMD研究施設の入り口の方へ指をさす。


「まぁなんだ結果オーライってことでな? 大樹たちの本命はあっちだろ?」

「あ・・・いやそうだな・・・しかし、それでいいのか、特にダン・・・ま・・う・・・?」


 一文字は最期に小さく呟き、肩を落とした。その様子を見て、ダンが発する気配に空気と化していたジュリアルドやロレッタ達が復活して、一文字達の傍へ行った。


「そ、そうだぜ!キング、新機体だ!新機体みにいこうや!」

「そうですね!ジュリアルドさん!ルバスさん。案内をよろしくお願いします!」

「ぬむ・・・何か・・・おかしいであるか・・・?」

「・・・おかしいと言えばおかしく・・・んむ・・・」

「ンン・・・」


 ジュリアルドが一文字の背を押し、ロレッタがルバスに一礼し、ルバスへ新機体への案内をお願いした。ダンが不思議そうに首を捻っている所に、グローサリー、オラジは頷くようで頷けない反応を返していた。

 そうして、ワイワイガヤガヤとしながら一文字達はMD研究施設の入り口の方へ押して入って行った。

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