第28話 王と双樹の皇03
一方、エル総将から依頼を受けた一文字は他へメンバーへ日本での依頼内容と試作MDのテスト運用を伝えるべく4638部隊の休憩室へ向かった。
4638部隊の休憩室に入るとエル総将に呼ばれたジュリアルドと魔法陣を調整中のマリナ以外のメンバーが揃い、各々が寛いでいた。そんなメンバー達に一文字は片手を上げ、サムズアップしながら、休憩室へ入って行った。
「ん、皆いるね」
「あ、隊長。おかえりなさい。」
「おかえりじゃ」
ロレッタやオラジ達メンバーも軽く挨拶をして一文字を休憩室へ迎え入れた。
一文字は自分の隊長席持っていた資料を置き、椅子に腰深くに座った。
「皆、聞いてください。マリナの魔術対応新型MDについてもほぼ完成をみて、これからテスト運用に入る事に決まりました。また、エル総将から運用とは別に依頼がきました」
「ほう、ジュリアルドがいないがいいんかの? 」
「ジュリアルドはエル総将から聞く事になるので大丈夫でしょう」
「・・・エル総将から? 」
「ええ・・・テスト運用について、ジュリアルドに対して新規事案が出てきました。それに伴い、テスト運用がマリナの一機だけでなく、三機となりそうでね。内一機は突如持ち上がった話で、現行量産機の後継機になり、魔術師以外の操縦者が必要になります。そのテスト操縦者にジュリアルドが上がりました。エル総将がジュリアルドに受ける気があるか等、今確認しているところでしょう」
「フン、あの金髪坊やがテスト操縦者とは出世したもんじゃ。かっかっか」
「おぉジュリアルドさんがテスト操縦者ですか! んーーー凄いですがジュリアルドさんで大丈夫ですか? 」
「・・・ウム・・・めでたい事だ。ジュリアルドならなんとかやるだろう」
オラジはエル総将からジュリアルドへの話の内容を聞くと軽快に笑い声を上げた。
ロレッタは喜びつつも普段を見ているだけに心配もし、グローサリーは心配するロレッタを落ち着かせつつ、少し気落ちしていた。その様子に気が付いた一文字は一部の資料を持って、グローサリーに声をかける。
「グローサリー、気落ちしているようだけど、君が一番大変かもしれないぞ? 」
「・・・隊長、俺が一番大変とは・・・? 」
テスト運用の無い自分が一番大変とはどういうことなのか分からず、一文字へ疑問をぶつけると一文字はグローサリーを手招きをして、手に持った資料を渡した。
「これは・・・? 『マギレスタ』?」
「『マギレスタ』。三機目の試作運用MDだよ」
「隊長・・・これは俺への同情ですか・・・?」
グローサリーはマリナとジュリアルドがテスト操縦者になった事に対する同情的処置かと思い、口から出てきた言葉に険が宿る。それを聞いた一文字は言葉を返した。
「グローサリー。何か勘違いしていないか? これはマリナへ合わせた特化MD、魔術対応新型MDの構想が出てきた時点で既にあった汎用魔術対応量産機への布石にあわせた一機だ」
と一文字は決して同情ではなく既定路線の話であるとグローサリーに告げる。
そして、別路線となる理由を話す。
「マリナへ合わせた特化MD、魔術対応新型MDは秘匿技術が満載の為、表に出せる代物ではありません。しかし、他の魔術師、例えば森林十架教の修道騎士達が使う儀礼剣魔術や祈祷魔術等が使える魔術対応MDが必要になります。その為の素体MDが必要になります」
「・・・その素体MDがこの『マギレスタ』という事か・・・? 」
「そうです。マリナが行ってきた魔術対応新型MDに対する今までのテスト結果を現行のMDに組み込み、魔術対応に対する素体MDが『マギレスタ』です」
「・・・・・・」
一文字にそういわれたグローサリーは資料に目を落とし、一枚一枚、ページをめくってみた。目を通し始めたグローサリーに一文字は椅子に深く座り直して問いかける。
「その『マギレスタ』にマリアの機体に載せる新規エンジンを載せることが出来ない。先にも言いましたがL.M.Dの秘匿魔術になるからです。その為、その前身である今まで君が試作MDに載せていた水素燃料使用の改造ディーゼルエンジンを新造で載せる事になります」
「隊長・・・水素燃料使用の改造ディーゼルエンジンで呪力や魔力が得ることができるのか・・・? 俺はそういった物を感じられなかったからMDに乗って”
「そうですね・・・ただマリナからのテスト結果からは僅かながら発してはいたそうだよ。その事を含めて、魔術対応機の素体MDとなる『マギレスタ』へ返し、テスト運用をしていくんだ。現行のMDに魔術の感覚を伴って運用していく為、かなり難解な運用となるんだけど、先程のグローサリーで大丈夫かい? 」
一文字はグローサリーに喝を入れる為、説明の最後にグローサリーを挑発した。
挑発されたグローサリーは現行試作MDではなく、魔術特化新型MDでもない、その中間のMDの試作運用していく事の難しさに思い悩ませたが、一文字からの同情によるではない事決してないことが分かり、最初の言動への謝罪と挑発に対してのやる気を返す。
「隊長・・・同情等と言ってすまなかった。『マギレスタ』はかなり難しい試用運用だろう・・・しかし、これは俺にやらせて貰いたい」
「わかった。『マギレスタ』はグローサリーに任せる。これで魔術対応試作量産MD『マギレスタ』、ジュリアルドが乗る新規試作量産MD『ウーヌレスタ』、L.M.Dが表に出す両機が揃った。これにマリナへの特化した魔術対応新型MDが加わっての、エル総将から依頼を受けた上での部隊運用だ。かなり忙しくなるよ」
一文字はグローサリーのやる気を受け入れ、これからの忙しさに辟易した声を上げた。そこにオラジが気になったことを聞いた。
「坊主、そのジュリアルドが乗る新規試作量産MD『ウーヌレスタ』とはなんじゃ?初めて聞く名じゃが・・・? 」
「それは僕もパール一将へ報告に行った際、そこにいたエル総将から初めて聞いた話だよ。なんでもエル総将と一緒にいった人たちが石油以外から軽油を取る資料を発見して、ディーゼルエンジンの今までのデータ等を帰化した上で新規のMDを製造したらしい・・・」
オラジの質問に一文字も肩をすくめて答える。しかし、石油以外から軽油を取れる事。つまり、現在の人類が抱えるエネルギー事情に一石を投じる内容にロレッタは一文字に呆けた感じで反応をする。
「・・・はっ? 隊長、それってかなりの大発見では? 」
「そうだねぇ。大発見だけど色々と調べたりしないとだから、まだ表に出せないね。その辺はエル総将から日本に行ってから詳しく聞けと言われている。それも含めて今回の運用何だろうね」
「了解しました・・・」
一文字もあまり詳しい事は聞いていないらしく、ロレッタへ曖昧な返事をした。グローサリー、オラジは二人の様子を見て、自分たちも日本へ行ってから聞こうと思い直した。
一文字は場の雰囲気を変える為、話題をエル総将から受けた日本での因縁のある依頼内容をメンバーへ伝えることにした。
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