第27話 王と双樹の皇02

 イギリス、マンチェスター駐屯地のL.M.D総部隊長室ではジュリアルドがエル=バーハン総将に呼ばれ、緊張の面持ちで総部隊長室へ入り、敬礼をして立っていた。


「緊張しなくていい。4683部隊所属ジュリアルド=ハフマン二曹」

「はっ! エル=バーハン総将がわたしにいかなご用でしょうか?! 」


 ジュリアルドは敬礼をしっぱなしでいくらエル総将に緊張しなくてもいいと言われても、緊張が抜け無い様だった。エル総将も「まぁしょうがない」という感じで話を続ける。


「一文字三佐にも伝えたが君がいる4683部隊に依頼が入り、日本へ行くことになった。そこで新規試作MDのテスト等行う事になったのだが君にもテストパイロットについてもらいたい」

「新規試作MDのテストですか? あれは同部隊員のマリナが付くことになっていたと思いますが・・・? それに自分は魔術が・・・」


 とジュリアルドが話しをしていた所をエル総将が片手を上げて話を止める。


「ジュリアルド二曹。待ちたまえ。君にテストパイロットとして乗り込んで貰いたいのは、マリナ特曹が乗る新型MDではなく。L.M.DのMD量産機アルクレスタの後継機となる新規試作MDの事だ」

「はっ? 」


 ジュリアルドはエル総将の意外な話に虚を突かれ呆けてしまった。そんな様子のジュリアルド二曹を見て、エル総将は片手を額に当てて、椅子を回して横を向く。


「L.M.Dの特派員が日本である物見つけて、研究室にぶち込んだらしい。それは既存の技術に組み込めるものであった為、そこにいた研究員共がノリノリで作り上げたらしい。それはMD量産機アルクレスタの後継機の試作機としては高レベルの物が出来たそうなので、マリナ特曹が乗る新型MDにとは別として、新規試作MDに乗って試して欲しいとの事だ」

「魔術対応のMDとは別に新規枠のMDが出来たので、そのパイロットとしてという事でしょうか・・・? 」

「そうだ、頼めるか? 」

「おぉおお、もちろん喜んでお引き受けいたします」


 突然の新規試作MDのテストパイロットを打診してきたエル総将に対して、ジュリアルドは敬礼をして新規試作MDのテストパイロットの打診に対して喜んで引き受けた。

 エル総将は自分の机に戻り引き出しから封筒を取り出しジュリアルドに受け渡した。


「その封筒の中には新規試作量産MD『ウーヌレスタ』の資料が入っている。良く熟読してテスト運用に当たってくれ。一文字三佐の依頼の性質上、ジュリアルド二曹、グローサリー二曹、オラジ一曹の三名が中心となって事に当たってくれ」

「エル総将、お待ちください。一文字三佐達は一緒ではないのですか?」


 エル総将からは一文字達も一緒に日本へ行くという話だったのでジュリアルドは疑問に思い、訊ねた。エル総将は首を横に振りジュリアルドの疑問に答える。


「うむ、一文字三佐達は日本の関東は東都南防衛校へ《《学生》として》行ってもらう。そこで学生をしながら魔術特化の新型MDのテストもしてもらう」

「っは・・・?」


 ジュリアルドはエル総将の口からでた一文字達にをしてもらうという所で呆気にとられた。エル総将はジュリアルドの呆気にとられた様子を見てさもありなという気持ちになりつつ、額を抑えつつ話を続けた。


「依頼元の意向により一文字三佐達は東都南防衛校へ潜り込み、不穏分子の見張りとしても行くことになっているのだ」

「な、なるほど、い、一文字三佐やロレッタ士長は良いとして、マリナ特曹はいささか問題が・・・」

「それは分かっている・・・が人選的に年齢的に行けるのがいないのだ・・・不安ではあるが一文字三佐とロレッタ士長になんとかやってもらうしかない」


 そこまでエル総将の話しを聞くと人選の難航があっり、葛藤の末突っ込んだ事がうかがえジュリアルドの口の端が引く付いていた。


「まぁ確かにそうなると任せるしかありませんね・・・」

「うむ・・・それよりもジュリアルド二曹、新規試作量産MD『ウーヌレスタ』はこれから先の主力機の先駆けとなるしっかり頼むぞ」

「はっ! 」

「では退出して宜し」

「それでは失礼します!」


 ジュリアルドが敬礼をしたのを見るとエル総将も返礼をして、退出の許可を出した。

 ジュリアルドは退出許可を得た後、新規試作量産MD『ウーヌレスタ』の資料を持って、総部隊長室を退出していった。

 エル総将は総部隊長室に一人になるとジュリアルドに渡した新規試作量産MD『ウーヌレスタ』の設計構想を考える。


「これから日本で大きく事態が動きだしそうな今、ルバスとダンは良い物を見つけたのかもしれない・・・しかし、あんな物から船や車、MDまで動かせる燃料が作れるとはここの人間の英知は我々の世界では考えられる人間はいないだろう。何か特化して超えた所がある。それを何年も前に発見し研究していた日本人は特におかしい・・・うん・・・おかしいよなぁ」


 エル=バーハンは両腕を組み、首を傾げながら、自分の世界と考え比べ、やっぱりおかしいともう一度首を捻るのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 総部隊長室を退出したジュリアルドは自室に戻り、机に座って、新規試作量産MD『ウーヌレスタ』の性能等について読み始めていた。


「エンジンは従来のディーゼルエンジン? 燃料は・・・軽油? 石油に制限がかかってるのに、なぜ? これは・・・石油に変わる物を見つけたのか!? なるほどこれなら」


 ジュリアルドは資料に目を通し、『ウーヌレスタ』の構造や機構について反読して、理解を深めるために読み込んでいく。

 今試作改造ディーゼルエンジンの燃料として水素を使用していたがまだ新しい技術の為、まだ水素燃料の真価を発揮できていなかった。また、石油から採取する軽油はシードブレイク以降、火力発電にも使用している為、石油使用に大きく制限がかかり、質も落ちていた為、現在、旧来のディーゼルエンジンも出力が落ちていた。

 それ故、石油に代わりの代替えが発見され、質の良い燃料が手に入るのならば前提条件が変わってくる。


「そうか、それでディーゼルエンジンの燃料を元に戻した形で・・・そりゃそうか水素使用よりも積み重ねられた時間や技術更新も上だもんな・・・それで今まで得てきた技術再構成して新規製造、更にMDの構造や機構もまた再構成・・・これは今ある試作機やカスタム機並みかそれ以上になりそうだな? これが正式量産機に組み込まれたら戦いが変わるな! 」


 ジュリアルドは充実感にあふれた顔して、両手で資料をバンっと挟んで閉じた。


「いや、これは日本に行くのが楽しみだ! 」


 ジュリアルドは資料を読み疲れたのか机からベッドへ移動して寝転がった。

 こうして、子供が大好きな本を何度も読み返すように『ウーヌレスタ』の資料を見つつ、日本行きを待ったのであった

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