第25話 王と復讐の騎士25
「エル、僕も知りたいな? 教えてくれないか? 」
一文字はエル=バーハンへと微笑みながら日本での事を問いかけのだった。
エル=バーハンは頷き話し始める。
「まずは新型の循環型再生水素エンジンについて目途が付き、新型MDを組み始めた。もう少しで魔術使用試作機が仕上がる」
「ついにか! いつこちらへ搬送される予定だ? 」
「受け取りはここではなく、日本での事になる」
「ここ英国へ搬送受け取りじゃないのか? 」
「それは次の依頼にも関係してくる」
「おっ! 流石だね! 機体だけでなく仕事まで取ってくるとは! 」
パールが拍手をしながら、エルの仕事の手際の良さに感心した。そして一文字はその依頼に疑問があり、どういった依頼か尋ねた。
「今、僕達、L.M.Dに日本からわざわざ依頼をかける所が思いつかないけど? それにそれほど樹種が暴れているという話も聞いてないけど・・・」
「これは日本政府、
「なっ! 岩魚殿から?! これは姿勢を正して聞かないと駄目だね」
エル総将がもたらした依頼元に一文字は驚いた。
まず樹皇とはシードブレイク以降の現代における天皇家当代の異名であり、また岩魚とは現樹皇である天野
「それで岩魚殿の依頼とは? 」
「星祭りの開催・・・するとの事だ・・・」
星祭り・・・古来より、旧暦の元旦や、立春、冬至などに行われる儀式で、天下国家に起こる各種の災害や個人の災いを除く事を目的にした催事の事だった。
今はシードブレイクやその後の樹種の氾濫で亡くなった者たちの魂や残留思念を浄化する役目を担っていた祭りを岩魚という女性は行う為の依頼をエル総将が受けてきた様だった。
エル総将は両手を組み、顎を載せて一文字の方を見た。一文字は眉を顰め、顔もしかめた。星祭りはある事があり、暫く行われていなかった為、一文字は顎に手を当てつつ考える。
「星祭りか? まだあれから6年と経ってないぞ? 行うにはまだ大樹が安定していないだろうし、咲殿の年もあれだろう・・・? 」
「咲殿も16だ。出来ぬ年でも無いし、行う場所は東京だ」
「東京? 元都庁に発芽した竜眼の双樹で星祭りか? 」
「そうだ。双樹とはいえ根は一つの大樹だ。基本1本の大樹に祈り手は1人だがこの場合、一本の大樹対して2人で行える為、1人の負担は軽くなる。ましてや咲殿と岩魚殿は双子だ。特に上手くいく可能性は高い」
「なるほど、樹皇家の延々繋いできた樹形図の魔術との相性、特に二人は双子だから良いのか・・・」
「ああ、そういった算段もあるし、東の地が安定すれば、西の安定も早まる」
「んーーーそうか。そうなると依頼は星祭りの補助それに護衛か・・・」
一文字はなにか納得をしたように顔を上にあげ、天井を見上げながら呟く。エル総将はそのつぶやきに対して依頼内容を付け加える。
「補助と護衛だけじゃない、妨害する者の排除もだ」
「なーんとも! あの幼子がそんな大胆な事を依頼してくるとは!? 」
今まで静かに話を聞いていたパール一将が驚嘆の声を上げた。一文字もまた驚きを隠せず、天井を見上げていた顔を戻し、思わずエル総将を見た。一文字が見たエル総将はかなり険しい顔をして、二人を見ると決意を含めた話をし始めた。
「樹皇家、政府、今回は何があっても万全を期したいという事と再び出てくるであろう者達も狩りたいという事だ」
「エル! それは出てくのであるか?! 」
「あの時は前樹皇やうちのTOP等の事もあり狩り尽くせなかった残党は相当数いる。またあの時より月日は経っている。6年ぶりに行われる星祭りとくれば、あの術式を知っている者ならば出てくる。今度こそ狩り尽くす・・・これは私たちL.M.Dにとってもリベンジマッチだ・・・」
「わかった、その依頼に対して出撃するのは僕達で良いんだよね」
「もちろんだ。頼んだぞ大樹」
一文字とエル総将はお互いの顔を見て頷き合う。そんなところへパール一将が淹れ直したコーヒーカップを持ってきて二人の前に置いた。
「はっはっは!!! 話しも落ち着いたようだ! コーヒーを淹れてきたぞ! さぁさぁ飲みたまえ! 」
二人の前に置かれたコーヒーカップを見て、一文字とエル総将は顔を引きつらせた。
「ん!? どうしたんだね!? さぁどうぞ! 」
「あっぁ・・・」
「ありがとう」
二人はそれぞれのコーヒーカップを手に取り、ソロソロとコーヒーを口運び、黒い液体を口に含んだ瞬間。
「にが!? 」
「渋?! 」
「んんーーー! エルも大樹も何を言っているんだ! コーヒーはこの苦みと渋みが良いんじゃないか! 」
エルと一文字は口を抑え、えづきながらコーヒーカップをテーブルの上に置いた。パールは構わずに自分のコーヒーを飲み干していく。パールの様子を見ながらエルはため息を付く。
「やはりパールの入れたコーヒーは飲むべきではないな・・・」
「そうだね・・・味覚が合わなさすぎるよ」
「酷いな! 二人とも! 」
「ふぅまぁ良い。岩魚殿の依頼の続きだが、大樹、マリナ、ロレッタの三人はこの初春に東都南防衛校へ行ってもらう」
「・・・っは? 」
「大樹・・・今21だったか? マリナ、ロレッタも同じぐらいだったな」
「今俺とロレッタは21だな。ロレッタは20だったか・・・それが?」
「依頼内容にあった妨害の排除について、ターゲットになりそうな相手がそこにいるその監視と新型MDをテストを頼む」
「了承した。しかし、ここにきてまた学生か・・・しかもマリナ、ロレッタどうにかなるのか・・・?」
一文字は何年と実践の中に身を置いたのに再び学生をしなければいけない事に頭を抱えた。しかもあのマリナと不慣れなロレッタも一緒という事に頭痛が増していた。
「それから、ジュリアルド、グローサリー、オラジの三名は近くのL.M.DのMD製作所にて新規MDのテストをしてもらう」
一文字はエル総将の話しに引っかかる所があり、引っかかった所を聞き直した。
「新型MDと新規MD? 新型MDは件の魔術対応だろう。新規MDとはなんだ。初耳だぞ? 」
「私と一緒に行ったルバスとダンが日本で青汁だったか? 元会社の廃墟でミドリムシの研究を見つけてな。その派生で今まで使用していたMDそのままで性能向上の糸口を見つけたって・・・おかしいんだよ日本人!? 」
ドンとエルは感情をあらわにして机を叩いた。驚いた一文字はエルを宥めた。
「いやまぁ落ち着けエル・・・日本人おかしい時はあるけどなぁ・・・何を見つけたんだ? 」
「それは日本に行って聞け。私から見れば理解が及ばんが、L.O.W.T日本支部の連中は小躍りしてな・・・」
「そ、そうか。まぁ日本に行ったときの楽しみにしておくよ」
日本に行ってからの楽しみを追加して、一文字はこれからの事を考える。
星祭り、補助に護衛、報復戦等の依頼だけでなく、学生生活、新型と新規MD・・・
王と復讐の
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