第21話 王と復讐の騎士21
カーライル城駐屯地からマンチェスター駐屯地へ帰還した一文字達は、
特に
一文字が護符魔術を行使する為に必要な魔術円が表記される甲板についた細かい傷は不安を残す程となってしまっている為、甲板装甲の総とっかえが行われることになった。その
オラジの元に体格ががっしりしたスキンヘッドの整備師長がやってきて、
「オラジ、今回は派手にやったようだな」
「フン、この程度で済んだなら、まだマシじゃ。それより英国が沈んだ方がマシじゃったか? 」
「いや・・・ここが海に沈むよりかはな・・・」
「だったらここで愚痴垂れてないで作業に入ってくれ、今回はMDも
「あぁわかってる。あのド間抜けの
「ド間抜け? 」
「ん、お前たちのMDの奥に置いてあるヤツだ」
スキンヘッドはクイッと親指を立てて奥を指す。指さされた奥をオラジは言われた通りに見ると背中か倒れたらしく背部が損傷した
「なんじゃありゃ・・・ど素人が操縦した以上に下手くそが動かしたんか? 」
「いやそれ以下のクソだ・・・」
「ほおう、どんな風に操縦したんじゃ? 」
「壊れた理由を知れば、オラジ・・・お前も確実に暴れるぞ。俺もふざけんなと暴れたからな。お前んところの王様にも報告書が回るだろうからそっちから聞け。」
「オイオイ、そんなもったいぶらんでもよかろう・・・? 」
「もったいぶるよりも、今お前に暴れられると困る」
とスキンヘッドの整備師長がつるっとした頭を撫でながら答える。オラジは首を振りながら、仕方がないと意識を切り替え、また
ジュリアルド、グローサリーの二人は自分達が乗ったMDに関しても
修復依頼書以外にも普段の調査等では銃器の類は中々使用できない為、今回の防衛戦で銃器の使用による戦闘データは貴重なデータだった為、戦闘データの取りまとめの資料作成に追われていた。
「ここの数値は右手のアサルトライフルで撃った数値、こっちは左手でコンバットナイフで切りつけた数値・・・この時のディーゼルエンジンの水素値は・・・」
「・・・・・・」
ジュリアルドは大型コンピューターの画面と手元のノートパソコンの画面を見ながらデータを選択し入力を行っていた。グローサリーは自分のMDのハッチを開けて、コクピットの中で作業を行っていた。
「ぐーーーキングも今回は無茶し過ぎだぜ!自分中心にして蟷螂集めて一網打尽だなんてよー」
「・・・あの場合はあれが最良だった。蟷螂が散開してカーライル城駐屯地まで行っていたら、全てが終わっていた」
「わかっちゃいるがなぁ・・・」
「・・・だったらサッサと手を動かせ。俺もサッサと終わらせて寝たい」
ジュリアルドの愚痴にグローサリーもこの終わらない作業に辟易しながら、コクピット内の画面を見ながらキーボードを叩いていく。そんな中、ジュリアルドがぽつりと呟いた。
「俺もキングやグローサリーみたいに魔術が使えたらな。ちたぁ違うんだろうがな・・・」
「・・・・・・魔術が使えてもMDに乗っている限り役立たずだ・・・それに隊長やマリナの様に使える魔術が使えん様では意味がない・・・」
「そりゃわかってるがな・・・キングやマリナを見ていると俺にもうちっと力があれば、色々と守れちまうじゃないかと思っちまうだよな」
ジュリアルドは作業の手を止め、天井を見る。そんなやるせない姿をグローサリーが見ていて、ジュリアルドに向けて行った。
「ジュリアルド。お前はこの部隊内のMD乗りとしてはトップエースだ。魔術もMD操縦も中途半端な俺とは違う・・・」
「は・・・?グローサリー・・・何言ってんの? 」
「トップエースのお前がシャンとしないと守れるものも守れんぞ」
「はっ何、お前そんな風に思ってたのかよ・・・」
「フン、脳足りんのお前じゃ間違っても魔術は使えん。使えるMDをしっかり使えということだ」
「な・・・ひでぇ良い様だ・・・まぁそうだなしっかり使えるMDで負けるわけにはいかねぇよな」
と少しにやけながらジュリアルドは再びコンピューターの画面に視線を落として、作業に戻る。グローサリーも自分の作業に没頭していった。
部隊長である一文字もまた、
ロレッタも本来ならオラジと共に
「うーえん、隊長、普通パソコンで書類なんか作るんじゃないですかー?」
「シードストライク時、原発に種の直撃、核爆発はしなかったが施設は崩壊、崩壊と同時に大樹が育って、電気の供給が無くなり、石油も採掘技術の問題で火力発電も限られてる。他、風力、太陽光で賄っているが、電力は基地の維持やMD等の整備に持っていかれてるんだ。僕とて筆記書類は勘弁してほしいよ」
「うへへーーい」
「まだこの英国はましな方だぞ。油田とか残ってるからね。ほらロレッタ、手を動かす」
一文字とロレッタうな垂れながら、ペンを持って書類に向かっていく。そしてロレッタは1つの事に気が付いた。
「そういえばマリナさんには手伝ってもらわないのですか? 」
「マリナはこの間の葬送の影響で眠らせてる」
「ふぅーあんな体に良くなさそうなものを食べるからですよ」
「ん-ーーロレッタ、やっぱり、あれが見えていたんだ? 」
「えぇ村のあちらこちらからきて集まった真っ黒な球体。残留思念ですか? あんなの口にしたらおなかも壊しますよ」
「それでロレッタ良いのかな? 残って? 」
「良いんです。ドリネット村でも言いましたが、お金ないし、何より観ていないといけないような気がして」
うんうんとロレッタは頷き、一文字はペンを持ちながら顎に手を当てて、そうかと考えながら答えた。
「おなかを壊しわした訳じゃないんだけどね。ん-そうか、ならこの書類で終わりだから終わった後にマリナの所へ行こうか。多分観るべき事もあるだろうし」
「はい」
一文字はし越し考えた後にマリナの会いに行くかと尋ね、ロレッタから行く返事を貰った。一文字は袖をまくり、ロレッタと最後の書類の山に取り掛かった。
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