第18話 王と復讐の騎士18

 ドリネット村の中央広場では氷山の上に立つマリナと4m超える成虫となった樹虫の蟷螂が対峙していた。

 樹虫:蟷螂の鎌手がピクッと動いたのと同時にマリナは氷山の上より蹴り跳んだ。樹虫:蟷螂の両鎌手が氷山を×の字に斬り裂き、マリナは樹虫:蟷螂へ向かって跳んだことで蟷螂の鎌手を回避した。回避した行為が樹虫:蟷螂へのカウンターとなって、マリナは復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを樹虫:蟷螂の首元に横一閃一撃を加えた。

 マリナと樹虫:蟷螂の周囲に金属と金属がぶつかり合った甲高い音が周りへ鳴り散らした。マリナは復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを持つ両手に軽い痺れと樹虫:蟷螂の硬い甲殻の感触が残る。


「・・・む」


 とマリナは家屋の屋根の上に降り立った。成虫となった虫の甲殻と樹虫特有の硬さが会い合わさってかなりの硬度を有している様だった。

 立ち止まったマリナに樹虫:蟷螂は両の鎌手を伸ばした。マリナを捕まえ斬りにきたので、マリナは近くの家屋の屋根に移る。

 再び樹虫:蟷螂の鎌手が伸びたところをマリナは樹虫:蟷螂へ向かって跳躍回避し、樹虫:蟷螂の本体に斬り付ける。樹虫の甲殻に傷後を付けられるが、甲殻を切り裂くことが出来ずにいた。

 マリナは蟷螂に攻撃するが致命傷を負わせられない為、蟷螂の動きを牽制する様に動き回っていた。

 そんなマリナの蟷螂を牽制する様子を戦艦戦車キャスルベースの映像を一文字達は見ていた。ロレッタが焦った様に一文字に報告する。


「隊長、マズいですよ。マリナさんの攻撃が全然通っていません!」

「これは・・・成虫となった甲殻と樹虫特有の樹の硬さが合い合わさってかなり硬くなっている様じゃな」


 オラジもマリナと蟷螂の戦闘の映像を見て、戦っているマリナと同じ考えに至ったらしく顔をしかめる。一文字は両手を組み思案をしつつ、状況を確認をする。


「ロレッタ、周辺に集まった蟷螂はどれくらい駆除できていますか? 」

「約7割半ぐらいです」

「坊主。坊主の魔術で蟷螂共を戦艦戦車キャスルベースへ誘因中じゃ。ここからは動かせんぞ」

「ジュリアルドとグローサリーは動かす事は出来ませんか・・・? 」

「孵化したての蟷螂じゃから戦艦戦車キャスルベースの装甲は抜けんが、取り付いちまっている奴を叩き落としてもらわんと流石にまずいわい」


 とまたもやオラジは顔を渋くする。村の中に艦砲射撃をする訳にはいかず、一文字が次の一手を悩んでいると通信が入った。


「こちらは森林十架教、修道騎士団団長ローランドだ。私らは貴君の周りに飛ぶ蟷螂を叩き落としているだけで余裕がある。他の騎士はここに残し、かの聖女の元には私が赴こう」

「ローランド騎士団長殿? お頼みしてもよろしいですか? 」

「我らの教えを組む者の救援・・・しかもこの森林十架製MDテンプルナイトまで寄贈してもらっているのだ。他意も無い」



 艦橋の画面に他の森林十架製MDテンプルナイト量産機とは違う鈍い銀色で司祭帽の様な頭をした森林十架製MDテンプルナイトのカスタム機が1機、村に向けて動き出した。その様子を見て一文字は再びマリナの上空で飛んでいるドローンを通して指示を出す。


「わかりました。よろしくお願いします。マリナへ通達、救援が向かうまで牽制せよ」


 その指示を聞いたマリナは鎌手が届きずらい樹虫:蟷螂の近くに身を置き、ヒット&アウエイで牽制し始めた。

 しかし、マリナは一文字の指示の内容に対して、胸の内に燃える復讐心が拒否を示していた。マリナは復讐心を満たしつつ、牽制する方法を考える。そして、ポケットから小石を一つ取り出した。


「巨人の力を我が身に。停滞の力をかのモノに与える力を示せThソーン


 マリナは呪言を呟き握り潰し、光の粒が身に纏う。更に復讐心を燃やして先程より強い殺気を放った身体は再び赤いもやに包まれた。

 復讐騎士アベンジャーは樹虫:蟷螂の正面に傲岸不遜に立ち、復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを青眼に構えた。

 そうマリナは己の内にある復讐心と注意を引く為の牽制というを満たす方法として、樹虫:蟷螂と打ち合う道を選んだ。

 そんな攻撃が通らないマリナの不可解な行動に蟷螂は首を傾げる様な素振りを見せたが、でしかない存在が己の前に立ちふさがった事実に怒りの叫びをあげて、両の鎌手を繰り出した。

 右の鎌手を両手持ちの復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを叩きつけて撃ち落とし、少しズレてきた左の鎌手は復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを釣っていた分銅付きの鎖を右手で引っ張って、分銅を鎌手の刃と思われる部分にブチ当てて弾いた。両の鎌手を捌かれた樹虫:蟷螂は頭上からマリナを齧ろうと口を大きく開けて襲ってきた。復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを即座に両手持ち、マリナは雄たけびを上げて、樹虫:蟷螂の下あごを復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードで下から上の逆風さかかぜに振り抜き、襲ってきた樹虫:蟷螂の頭をかち上げた。


「グガァァッァァ!」

 GyaSyaaaaaaaaaaaaa!!!



 かち上げられた樹虫:蟷螂は頭を下に戻し、マリナをじっと見つめた。でしかない存在のマリナを殺せない事に対して、頭に血が上ってきた樹虫:蟷螂はマリナに執拗に攻撃を加える始めた。

 マリナは樹虫:蟷螂の両の鎌手を撃ち落とし、弾き飛ばした。噛みつきに関しては、回避した後飛び上がり打ち下ろしの攻撃なども加えていた。

 マリナは人とは信じられないような打ち合いを樹虫:蟷螂と行いる所を一文字達はドローンの映像で見ていた。


「はぁ・・・マリナ、指示は守ってるが打ち合いに転じるとは・・・予想外だよ・・・」

「えぁー何で?! どうやって打ち合えてるのですか?! 大きさの差は?! 」

「OHooo。嬢ちゃん、足止めは間違っちゃいないがそれは違うじゃろ」


 戦艦戦車キャスルベースの艦橋で広場の戦闘をみている三人は呆れたり、驚いたり、頭を抱えたりと三者三葉の反応を見せていた。

 ロレッタはマリナと樹虫:蟷螂が戦っている真後ろにローランド騎士団長が乗る鈍い銀色の森林十架製MDテンプルナイトカスタム機の姿を見付けた。どうやら樹虫:蟷螂は頭に血が上りすぎて、後ろのMDに気が付いて無い様子だった。


「あ、救援に行ってくれたローランド騎士団長の森林十架製MDテンプルナイトカスタム機が見えました。それも樹虫:蟷螂は気が付いていないようです!」


 真後ろに位置取った森林十架製MDテンプルナイトカスタム機は長剣ロングソード騎士盾ナイトシールドを構え、打ち込むタイミングを計っている様だった。

 森林十架製MDテンプルナイトカスタム機に気が付いたマリナは嚙みついてきた樹虫:蟷螂の頭を横跳びに回避し、跳び上がった。復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを気合一閃で樹虫:蟷螂の頭に叩きつけた。


「ダァァァァァッァァ!」

 GyaSyaaaaaaaaaaaaa!!!


 樹虫:蟷螂の頭は地面に叩きつかれ、大きな音と地響きを起こし、樹虫:蟷螂の動きが止まり、マリナが後ろへ大きく飛び下がった。

 その隙を後ろで構えていたローランドは見逃さず、森林十架製MDテンプルナイトカスタム機の長剣ロングソードが樹虫:蟷螂の長い腹を両断するべく、裂ぱくの気合と共に叩きつけられた。


「ここだ!!! 」

 GUGyaaaaaaaaaaaaaaaa!!!


 村の中央広場に硬い物を強引に押しつぶした音と樹虫:蟷螂が頭を振りかぶって叫ぶ声が木霊した。

 ローランドが乗った森林十架製MDテンプルナイトカスタム機の長剣ロングソードの一撃は腹を二つに割り切る事は出来なかったが、腹からは大量の体液が噴出していた。

 樹虫:蟷螂は命の危険を感じ、羽を動かして飛び上がった。飛んで逃げるのかと思ったが、生命の危機を与えた森林十架製MDテンプルナイトカスタム機が許せなかったようで空から攻撃を仕掛けてきた。

 ローランドは樹虫:蟷螂の攻撃を騎士盾ナイトシールドで受け、蟷螂が横を抜けざまに長剣ロングソードで斬り付けようとするが、飛んでいる蟷螂の方が素早く当たっていなかった。

 その様子を見ていたマリナが家屋の上に壁を伝って飛び上がり、小石を取り出した。

 眼前で樹虫:蟷螂と森林十架製MDテンプルナイトカスタム機が斬り結ぶ中、今度はマリナが秘印ルーン魔術を使うタイミングを計る。

 樹虫:蟷螂が森林十架製MDテンプルナイトカスタム機の横を抜き、Uターンをするタイミングでマリナは跳び出していき、樹虫:蟷螂の羽に向けて呪言と共に小石を投げた。


「汝は停滞!されば示せIイサ! 」


 小石は砕け、樹虫:蟷螂の羽の周辺に光の粒が纏わりつくと羽が一鳴きした後、動かなくなった。羽が動かなくなった蟷螂はバランスが取れなくなり、ローランドの目の前を通って地面に落ちた。

 その大きな隙は騎士団長ローランド秘印ルーン魔術を使った復讐騎士マリナは見逃さない。


「そこだぁーーーーーー! 」


 ローランドは森林十架製MDテンプルナイトカスタム機を樹虫:蟷螂に突撃さた。長剣ロングソードの一撃を樹虫:蟷螂の横腹に振り下ろし、今度こそ長い腹を真っ二つに断った。


 GAAAaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!


 樹虫:蟷螂は今まで一番の絶叫を上げた。それでも樹虫:蟷螂は元虫が持つ高い生命力をみせ生きていた。胴体に残る腹の部分は地面につけているが、胴体を持ち上げ、両の鎌手もまた弱弱しくも振り上げていた。

 復讐騎士アベンジャーの右目は赤く燃え上がり、樹虫:蟷螂の正面を見据える。ポケットから取り出した小石を復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードに当て、右目を閉じ、意識を集中させて呪言を紡ぎだした。


「汝は光、英雄クー・フーリンが持ちし剣と成せ。さらば示せ。シゲル


 小石は砕けて膨大な光を生み出し、復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードの刃を伝う。復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードの柄より先に4m程の光の刃を形成した。

 マリナは光の大剣となった復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを最上段に構え、樹虫:蟷螂の頭から下まで一気呵成に振り落とした。


「真っ向唐竹割!!! 」


 光りの刃は何の音もさせずに樹虫:蟷螂の頭から身体を真っ二つに切り裂いた。

 樹虫:蟷螂は声を一切上げずに左右の身体を地面に倒し、今度こそ絶命した。

 ようやく騎士団長ローランド復讐騎士マリナはこのカーライル城駐屯地防衛戦における最大の人敵を討ち果たした。

 マリナの胸の内にあった復讐の炎は、目の前にあった一つの復讐を遂げられたことによって、燃え上がっていた炎を沈下していったのだった。

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