第12話 王と復讐の騎士12

 一文字達を載せた戦艦戦車キャスルベースと補充部隊の車両はカーラエル城の駐屯地の入り口へと差し掛かっていた。検問を通り駐機場へ向う。駐機するスペースには人だかりが出来ており、補充物資を待ちかねていたようだった。補充部隊の車両が止らる様人だかりはU字になって道が開けられる。


「おー待ってぞー」

「待たせたな。今日もたっぷり持ってきたぜ」

「おら運び出せ運び 出せ」


 と補充部隊と駐屯地の兵士たちが声を掛け合っていく。そして次々と補充車両の荷台から物資倉庫へ運び込んでいく姿が見えた。その脇の駐車スペースに戦艦戦車キャスルベースを止め、一文字達は降りつつ、メンバー達に指示を出していく。


「ロレッタ、僕と一緒に資材課と森林十架修道会の祭司ドルイド殿の所へ報告と挨拶をしに行きますよ。ロレッタ以外は積み下ろしの手伝いを」


 一文字はロレッタと共に駐屯地の兵舎へ向かい、マリナ達4人は補充部隊の車両へと向かって行った。兵舎に入り入口近くの資材担当官へ声をかけた。


「L.M.D、4638部隊部隊長、大樹=一文字、補充物資を届けに来ました。こちらにサインを」


 と資材担当菅へ物資リストを渡しサインを求め、資材担当官はさらとサインをし、一文字の方へ顔を向ける。そして、物資リストを一文字へ差し出してくる。


「はい、一文字隊長が部隊長で来て下さると来るのが早くて助かります。さすがはススキの王様ですね」

「うん? その名をご存じで? 」

「えぇ祭祀ドルイドエルウィン様がこちらに来られた時に偶にそうお呼びの時があるので」

「あぁなるほど・・・でもそれはちょっと恥ずかしいので内緒で」


 と頭を掻きながら物資リストを受け取った。「ああ、そうだ」とロレッタの方を見る


「今度から報告はこの新人のロレッタが来ると思うのでよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」


 一文字はロレッタを資材担当官へ紹介し、お互い挨拶を交わす。ロレッタが挨拶をし終えた後、兵舎を出て修道院へ向い、修道院の扉を開け中に入っていく。入ると直ぐに背が高く、また肩幅が広くがっちりとした白人の法衣を着た男性に出迎えられた。


「ようこそいらっしゃいました。ススキの王」

「お久しぶりです。祭祀ドルイドエルウィン殿」

「そちらのお嬢さんは?」

「うちの管制官の新人です」

「先日4638部隊に配属されたロレッタ=パーマシです」

「私は森林十架教、祭祀ドルイドエルウィン=バーグウェイです。よろしくお願いしますね」


 ロレッタに祭祀ドルイドへ緊張しながら敬礼と自己紹介をし、エルウィンは優し気な笑みを浮かべて自己紹介を行った。そして、一文字の方へ視線を戻した。


「して我が苦行の聖女は?マリナは息災ですか? 」

「今は他のメンバーと共に補充物資の積み下ろしを手伝っています。表情には出ませんが元気ですよ?元気すぎるのかもしれませんが・・・」


 とここに来た理由を頭に浮かべ、肩ががっくと下がる。そして、祭祀ドルイドエルウィンへ謝り始める。


「エルウィン殿、申し訳ない、そちらより我が騎士として預かり、本懐をとげらる様に示す所、満足な武器を渡すことが出来ず・・・」

「いえ、謝らないでください。一文字様。あなたがマリナをお預かりして頂けなければ、あの時に終わっていた存在ですから。それに数年たちマリナの力も上がっているのでしょう?」

「ええ、ここの所急激に上がってきています。星祭か?生誕祭か?何かの祭りに呼応しているのかもしれません・・・それでパール1将より連絡が来ているかと思いますが・・・」

「はい、パール様より連絡がきております」


 一文字はエルウィンの顔を見ることが出来ず、後頭部を搔きながらパール1将がしてくれたであろうアベンジャーズソードの材料について聞いた。エルウィンは全てわかっていますとばかりに深く頷き、傍にいたチェインメイルにサーコートを着た若い騎士に目配せをする。すると若い騎士は森林十架教のU字にと十架が合わさったモニュメントの下に配置されていた長方形の木の箱を両手で抱えて運んできた。運ばれてきた箱の蓋をエルウィンは開けて、一文字に見えるように箱を傾けた。箱の中には1本の剣が、剣先に両刃斧がついた黒い逆十字剣が入っていた。


「こ、これは・・・復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソード・・・? お願いしたのはこの材料のロンガンの大樹の一部だったはず? そ、そもそも、なぜ復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードがあるのです? 」


 一文字は全て壊れたはずの復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードが目の前に現れ驚愕した。その復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードをマジマジと見定める。今までマリナが使っていた同じ形の復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードでも無かったある種の気品を放っていた。


「エルウィン殿、これはもしやオリジナルですか? 」

「一文字様、こちらはオリジナルであって、オリジナルではありません」

「オ、オリジナルであって、オリジナルではないですか・・・?」


 エルウィンからの謎かけに一文字は余計に疑問符が浮かぶ。エルウィンは一種の間の後に謎かけの答えを口にした。


「オリジナルの復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードは今も変わらずあの子の傍にあります。この復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードは日本にいるあの子の傍に置くものとして複数本打たれた中の選ばれなかった剣です。いわば復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードの影打ちです」

「影打ち・・・オリジナルに近いからこそのこの気品を放っているのか・・・」

「これであれば今のマリナであっても耐えられると思います。どうぞお持ちください」


 エルウィンは手を復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードへかざす。一文字は両手を握りしめて深く腰を折り、感謝の意を示す。


「エルウィン殿・・・ありがとうございます。必ずマリナへ渡します」


 一文字は身体を起こして箱に近づき、中に入っていた復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードに触れた。そして、ロレッタはエルウィンと一文字の厳かなやり取りに気おされながら見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る